表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/358

第37話「…来いよ。女の喧嘩ってやつを教えてやるぜ」


 あたしの拳が唸りを上げる!

 いい加減にしろ、と轟き叫ぶ!


 あたしは最高速度で駆け抜けて、最強の一撃を放った。【瞬動】からの『爆裂正拳突き』。モンスターの頭もぐちゃぐちゃにするほどの威力。文字通りの一撃必殺だ。


「オラァァァァ!」


 拳に伝わる、確かな出応え。

 宙を舞っていく、撫子ピンクの髪の少女。

 その儚い美貌は拳の形に歪んでいる。

 一撃KO、間違いなし。


「…よし、勝ったな」


 グッ、と拳を天へと突き上げる。

 やがて、長い滞空時間を経て、ユキの体は床へと叩きつけられた。


「がはっ! …ぐふっ」


 短い断末魔を上げて、ユキの体は力なく倒れた。

 完全なる再起不能ノックアウト

 その一瞬の。

 あまりの光景に、アーニャと神無月は何も言えず、ぽかんと口を開いていた。


「「な、なななな―」」


 言葉にならない声を震わせる。

 やがて2人は、仲良くそろって叫ぶのだった。


「「何してるのよーーーーーーーっ!」」


 その間抜けな悲鳴は、どこまでもこだましていく。



「ちょっと、ミク! あなたはバカなの!?」


「な、なんだよ?」


「よりにもよってユキを殴り飛ばすなんて! 見なさいよ、完全に白目を向いているじゃない!」


「あー。あたし、まどろっこしいのは嫌いなんだよねー」


 ボリボリと頭をかきながら、ユキを介抱しているアーニャを見る。


「どうせアレでしょ? 大切な仲間が相手だと本気を出せない、とかそんな感じでしょ。そういう面倒なのとか、マジで勘弁。見てるだけでイライラしてくるし」


「だとしても、他にやりようがあるでしょ!」


「んー、思いつかなかった」


 正直に話す。

 あたしはどこまでも正直な人間だった。


「それにさ、こっちのほうが手っ取り早いだろ?」


「は? 手っ取り早いって、何が?」


「…悪い魔女をぶっ飛ばすには、だよ」


 そう言って、あたしは視線をそちらに向ける。

 艶やかな撫子色の髪を持つ、悪い魔女に。


「なぁ、神無月先輩よぉ?」


 肩を回しながら、軽く準備運動を始める。

 拳が疼く。

 堪えようにも、笑みが止まらない。

 …これは、やばいな。

 …血がたぎる!


「ふ、ふふふっ。どうやら、あなたは正気ではないようね」


 神無月が薄いケープを揺らしがら優雅に微笑む。


「ははっ、テメェと同じくらいには正気じゃないかもな」


「そうですわね。仲間をいとも簡単に殴りつけるなんて。理解に苦しみますわ」


「ふん。それは違うな」


 あたしは胸を張って言い放つ。


「ダチが人の道を外れようとしてるんだ。だったら、殴ってでも止めてやる。それが『仲間』ってもんだろうが」


 …そう。

 …心の一番大切なところは、全部ユキに教えてもらった。


「あたしはテメェと違って不器用でな。思いを言葉にするか、想いを拳にのせるか。そんな方法しか知らねぇんだよ」


 そんなあたしの言葉を受けて、神無月は不機嫌そうに顔をしかめる。


「…今まであなたのことを頭が悪いと思っていましたが、どうやら訂正しなくてはいけないようですね」


「あ? 褒めてくれんのか?」


「まさか。あなたはわたくしが思っていた以上に、頭が悪すぎただけです。…このケダモノが」


「はっ、今まで猪とか言われたことはあったけど、ケダモノはなかったな」


 コキッ、コキッ。

 拳を鳴らして、肩の力を抜く。

 あぁ、この緊張感がたまらない。

 自分でいうのもなんだけど。


 …これは病気だな。

 …喧嘩中毒ってやつだ。


「なぁ、神無月先輩よぉ。悪いんだけど、テメェをぶっ飛ばさないといけねぇ。…じゃないと、あたしの気が済まねぇんだ」


「ふふっ、同感ですわ。わたくしもあなたにだけは灸を据える必要があると思っていますの」


 ゆらり、と神無月が歩み出る。

 それを見て、あたしは肩に羽織っている浴衣を脱いで、ユキに投げつけた。Tシャツとジーンズ姿で、


「はっ、来いよ。女の喧嘩ってやつを教えてやるぜ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 姐御マジ脳筋(かっこいい)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ