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第13話「裏切り者のメンバー…」


――◇――◇――◇――◇――◇――◇―― 


「あの兄弟が失敗したらしいな」


「ふむ、どうでもよいことだ。所詮は、使い捨ての駒に過ぎん」


「我ら『元老院』の名前を言わなければ問題はない」


「奴らとて、我らを敵にしたらどうなるか、わからんでもあるまい」


 薄暗い豪華な部屋。

 お互いの顔が見えないほど明かりを落とした会談場所で、『元老院』と呼ばれていた老人たちが、暗闇の中で密談を交わしている。


「さて、次はどのような手を打つべきか」


「やはり、王女の命を狙ったほうが得策ではないか?」


「くっ、忌まわしき小娘め。奴が戻ってきてから、ロクなことがなかったぞ」


「決まりであるな。次の標的は王女アリーシアである」


 老人達はお互いの顔も見えないまま、納得したように頷きあう。

 その時、異論を唱えるものがいた。


「…だけど、『十人委員会』の報復があったらどうするんだ?」


 その問いに、老人たちは嘲笑する。


「何を今さら」


「我らに立てつく者など、いるわけがなかろう」


「以前も話した通り、我らには勝利の女神がついている」


「…女神?」


 その人物は暗がりの中、首を傾げる。


「…その女神ってのは、誰だ?」


「何を言っているのだ。あの方に決まっておるだろう」


「ふはは、キュロス候も耄碌もうろくしたか」


「むむっ。ワシはここにいるぞ? モラン殿であろう?」


「はあ? 私はこっちだ。てっきり、グラハム氏であると」


「え? 某はこちらだ。オルダム伯であろう、こんな白痴めいたことを言うのは」


「オルダム伯って、…去年、死んだよな」


 老人達が言葉を失う。

 お互いがよく見えない暗がりで、誰かが呟いた。


「っていうか、…1人多くね?」


 瞬間。

 部屋のカーテンが一気に開いた。

 外からの光が差し込んで、老人たちを白日の下に晒す。


「ぐおっ! 眩しい!」


「目が! 目がーーーーっ!」


 老人達がうろたえている中、その人物はゆっくりと部屋の真ん中へと歩いていく。

 人狼族の男が、銀色のたてがみを揺らして。



「さぁ、全て話してもらおうか。『元老院』のジジイども」


「ひぃ!」


「お、お前は『十人委員会』の!?」


 悠然とテーブルに腰掛ける狼男に、老人達は焦り困惑する。

 そんな元老院の歴々を見て、ジンは凶暴な笑みを浮かべる。


「俺は面倒が嫌いなんだ。単刀直入に聞くぜ。…お前らの言っている、女神って誰だ?」


 威嚇するように、ギラッと鋭い牙が反射する。


「お前ら『元老院』は、王族にも匹敵する力を持っているはずだ。そんな奴らが後ろ盾にしているなんて、只者じゃねぇ。そうだろ?」


「…ぐっ」


「…この青二才が」


 老人たちが苦虫を噛んだような表情になる。

 中には、辺りをキョロキョロと見渡して、逃げ出そうとしている者もいた。


「悪いが、妙なことは考えないほうがいい。俺は現実主義者で、無駄が嫌いなタチだ。それに、ユキや姫さんと違って、優しくもない」


 そう言って、近くにあった花瓶をそっと撫でる。

 すると、まるで刃物で切られたかのように、花瓶が真っ二つになった。カランッ、と小さな音を立てて倒れる。


「言っている意味、わかるよな?」


 ぞくっ!

 老人達の背筋が凍りつく。

 長生きした人間特有の臆病風が、その場を支配する。


 …その時だった。


「…ふふ。相変わらず、仲間以外には手厳しいのですね」


 豪華な部屋の奥。

 大きなソファが置かれている場所から、その声が聞こえてきた。

 若い女性の声だった。


「…そんな生き方では苦労も多いでしょうに。難儀な人ですね」


「…苦労かどうか決めるのは、あんたじゃない。この俺だ」


 ジンは立ち上がると、ゆっくりと女性の方へ近づく。


「…久しぶりだな。神無月かんなづき先輩」


「…ふふ」


 ソファで横になっていた女性が、そっとジンを見つめる。


 撫子色の長い髪。

 エルフ族特有の尖った耳。

 透き通るほどの薄いケープの下に、艶かしいほどの女性的な体。

 弾けんばかりの胸の膨らみに、ほっそりとくびれた腰つき。

 人を超えた美しさがそこにはあった。


「…久しぶりですね、陣ノ内君。3ヶ月ぶりかしら?」


 妖艶な笑みを浮かべつつ、その女性は答えた。

『十人委員会』の『No.5』。

 ギルド内の唯一の回復職『神官』にして、仲間達を後ろからサポートしてきた存在。


 その名前は、神無月かんなづき有栖ありす

《カナル・グランデ》では、『アリス』と名乗っていた。


「…ふふ、感動の再会だと言うのに、貴方はどうして敵意をむき出しにしているのです?」


「はっ! それはテメェの胸に聞いてな」


 ジンが腰を落とし、戦闘態勢に入る。


「この世界で、好き勝手やるのは構わねぇ。だがな、仲間達に手を出そうってのは、どういうつもりだ?」


「…ふふ、そうですね」


 ジンの問いに、アリスが答える。


「…欲しいものができた、とでも言いましょうか」


「は?」


「元の世界では、決して手に入らなかったものが、ここでは目の前にあるのです。もうわたくしは、我慢できないんですよ」


「お前、何を言って―」


「わからないのですか? わたくしが欲しいのは、ただひとつ。…あの美しい、宝石のように輝く『彼女』だけ」


 光悦な笑みを浮かべながら、アリスは自分の身体を抱きしめる。


「あぁ、早く傍に置いて、たっぷりと可愛がりたい。元の世界では逃がしましたが、この世界では必ず、わたくしのものにしてみせますわ」


「…お前、まさかユキを」


 舌打ちを鳴らして目を細める。


「じゃあ、なおさら逃がすわけにいかねぇな。仲間に危害を加える奴を放っておけねぇ」


「あら? わたくしは仲間でなくて?」


「仲間だよ。でもよ、…だからと言って、このまま見過ごせるか!」


 ガッ!


 ジンが動いた。

 怒涛な地鳴りを響かせて、瞬時にアリスに迫った。


 その姿は、まさに雷鳴の如し。

 残光が尾を引いて、銀郎族の剛爪がアリスの柔肌を貫く。

 …かのように見えた。


「なっ?」


 戸惑いの声はジンのものだった。

 突き出された右手が、硬く透明なものに弾かれたのだ。


 ガンッ!


 弾かれたときに飛び散ったのは、削られた氷の破片。

 これは、氷の壁だ。


「…防御魔法、『氷陣アイシクルの結界ゲート』か。…ってことは」


 ジンが忌々しそうに、後ろを振り向く。

 そこにいたのは、魔法使い風の男だった。地面に着くほどの長いローブを身に纏い、氷のような表情を浮かべている。


「…お前も一緒だったのか。碓氷(うすい)


 ジンの問いかけに男は答えない。

 手に持った大型の魔導杖からは、絶えず氷の結晶が湧き出ている。


『十人委員会』の『No.9』。

 職業は『高位魔導師』で、主に氷魔法を得意としている。アリスと同じ後方からのサポートを担っている。


 名前は、碓氷(うすい)涼太(りょうた)

《カナル・グランデ》では、『ウスイ』と呼んでいた。


「…」


 碓氷涼太は言葉を話さない。

 喋れないのではなく、喋ろうとしない。

 無口で無愛想なコミュニティー障害。なぜか、アリスの傍にいることが多いのだが、ジンにはその心当たりがあった。


「ははっ、この世界でもパシリかよ。報われない片思いは切ないねぇ」


「…」


 やはり何も言わない。

 アリスを守るように展開された氷の壁が、彼の唯一の意思表示である。


「ふふ、そういうことですの」


 氷の結界に守られたアリスが口を開く。


「悪いですが、ここは退かせて頂きます。いくら陣ノ内君とはいえ、『氷の魔導砲台』と呼ばれた碓氷涼太と戦う気はないでしょう?」


「…ちっ」


 ジンが悔しそうに舌打ちをする。

 碓氷には、《カナル・グランデ》での異名を持っていた。


 それが、『氷の魔導砲台』。

 氷属性の魔法に特化したステータスと、力尽きるまで魔法を唱え続ける戦闘スタイル。『継承システム』を繰り返してきた『十人委員会』だけあって、その瞬間火力は計り知れない。『固有職種』の高ステータスを持つジンでさえ、短期決戦での勝利は望めないほどに。


「…ふふ、それでは。いずれ近いうちに」


「…」


 そう言って、アリスと碓氷は部屋から姿を消した。


 後に残ったのは、苦虫を噛んだような表情を浮かべるジンと、部屋の片隅で震えている老人たちだけだったー



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[一言] キター世界は百合で出来ているエロいお姉様登場
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