最終話「会長からの手紙③、④」
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会長からの手紙③。
『前略。愛すべき後輩の優紀へ。
焼き肉が恋しい。私のスキルである私設空母には、軍用レーションしか食料がないので、食の娯楽が本当に乏しいんだ。食料を求めて、大陸にむけて絨毯爆撃を仕掛けたんだが、肉はおろか、骨すら残っていなかった。どうしてだろうな?
私は優雅に世界一周の真っ最中だ。
この世界は広いぞぉ。一面に広がる大海原を、お前にも見せてやりたいものだ。お前たちのいるヴィクトリアは、我々の世界のイタリアにあることは知っているか? そこを出発してから、もう3か月が経ったけど、未だに我々以外の人間には遭遇していない。
まぁ、船旅に飽きたら、そちらに戻ろうと思う。
その時は盛大に歓迎してくれ給え。
期待しているぞ!
私が溺愛している御影優紀へ』
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会長からの手紙④。
『前略とかかかないぞ。結論から言おう。
日本が沈んだ。
正確に言うならば、黒い闇の空間に飲み込まれていた。海洋国家ヴィクトリア。お前たちがいる場所の、ちょうど地球の反対の場所から、正体不明の空間が侵食しているんだ。試しに、私のスキル『私設軍隊』を使って、一個師団で空間の中を捜索させたが、全て闇に喰われてしまった。
現在、この暗闇の空間はアジア大陸を喰らい始めている。正確な計測をしている最中だが、これは恐らくタイムリミットなんだ。海洋国家ヴィクトリアに到達するまで、およそ4カ月。それは、この世界とそっくりな、オンラインゲーム《カナル・グランデ》のサポートが終了する時期と一致する。
この世界は、壊れ始めている。
我々は選ばなくてはいけないのかもしれない。この世界を救うべきなのか。それとも、元凶を突き止めて脱出するべきなのか。
手がかりはある。
我々がこの世界に連れてこられたときに使用したアイテム、『リラの通行手形』だ。ゲーム上には存在しなかったこのアイテムが、何かしらの鍵になっているはずだ。
とにかく、お前は仲間たちとの合流を急げ。
何をするにしても、我々『十人委員会』が全員揃わないことには何も始まらない。10番目の岩崎快司には、既に別の指示を出している。お前は、優紀に悟られないように、仲間たちを集めろ。しくじったら、貴様の体をミンチにして鮫の餌にしてやるからな!
私の大嫌いなクソ生意気な後輩、陣ノ内暁人へ』




