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元コンサル女子の異世界商売~ステータス画面とAIで商売繁盛!~  作者: 雪凪
とにかく生活費を稼ぐべし

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1-7 初めての薬草採取

朝4時、アラーム音が頭の中で鳴り響く。体は12歳の少女だけど、中身の私の意識はまだ全然覚醒してない。うぅ……4時かぁ……寝ることはあっても、こんな時間に起きるなんてなかったよね……準備しなきゃ……

ぼんやりしながらステータス画面を開くと、日時の横に太陽マークのアイコンが新しく追加され、明るく点滅しているのを見つけた。触れてみると、天気予報が表示される。


─────────────────

本日の天気:午前中は晴れ、午後から雨

最高気温:22°C

最低気温:12°C

平均風速:3m/s

─────────────────


「へぇ、スキルって後から増えることもあるのね」


すっかり目が覚めた私は、感心しながら呟いた。

今日の天気は午後から雨か……うん、商売の鉄則は『需要と供給』。天気に合わせて売れそうな薬草を採取するといいかもしれない。昨日売れた薬草を適当に採取しようと考えていたけど、天気予報があるなら話は別だ。この情報を活かさない手はない。

その瞬間、『タスク管理』が自動で立ち上がり、5種類の薬草名を表示した。


─────────────────

本日の採取予定:

1.朔月草(5束)

2.星月草(10束)

3.翠風草(12束)

4.紫霧草(15束)

5.涼香草(8束)


※推奨採取量を表示しています

─────────────────


私は、薬草仕分けテーブルまで移動して、アイリスが几帳面に書いていた在庫のリストを確認する。


ふむふむ。載ってない薬草ばかりね。ちゃんと在庫は考慮されてるわけか。これが天気に合った薬草ってことなのよね、きっと。えっと……星月草はとがった葉の薄い緑色の薬草で効能は……


アイリスの知識を使って薬草の詳細を確認していると、新たなメッセージが表示された。


─────────────────

アクティブスキルと連携しますか? 

[はい][いいえ]

─────────────────


パッシブとアクティブの連携なんて、ますます便利になるじゃない!

迷わず[はい]を選ぶと、薬草の名前の横に[詳細]と[地図]ボタンが増えた。

試しに翠風草の[詳細]に触れると、薬草辞典のページが開いた。

パッシブスキルの「タスク管理」に、アクティブスキルの「辞典」と「地図」が連携されたようだ。


─────────────────

翠風草(すいふうそう) レア度:Bランク


効能:呼吸器系強化、酸素吸収促進、

気管支の炎症を鎮める

採取可能期間:春分から夏至までの間

保管方法:乾燥させる場合は、通気性

の良い布袋に入れて常温保存

─────────────────


翠風草は、鮮やかな翠緑色の幅約5cm 長さ10cm程度の葉を持っていて、淡い緑色の茎の 先端に淡緑色の花を5〜7輪咲かせるようだ。風車みたいで特徴的な形だ。


「なるほど……じゃあ地図は採取できる場所かな?」


[地図]ボタンに触れると、5つの薬草の場所が赤く光っていて、翠風草の位置はさらに点滅していた。それだけではなく、5種類の薬草採取のルートが表示されている。ルート上にある他の薬草も青く色がついていた。


すごっ! 採取する薬草を決めたら最適化したルートまで教えてくれるんだ。これも前世にあったら、めっちゃ外回りがラクだったのになぁ。東京の地下鉄は初見殺しのトラップ多すぎでしょ。

昨日から何度目かわからない前世の愚痴がでてしまうのは、もはやしょうがない。便利すぎるスキルが悪いのだ。ちゃんと、方位のマークとスケールバーと検索入力欄ができている。さすが、仕事ができる男、アシスタント君。




動きやすい服装に着替えて、準備を整えて家を出た。まだ夜明け前の空は暗い。遠くからはカンテラにみえるように、発光画面の照明を暖色でセットする。

石畳の一本道を30分ほど歩くと、森の入り口に到着した。ここからは舗装されていない道だ。

東の空が明るくなり始めているが、森はまだ真っ暗で少し不気味だ。

思い切って森に入ると、かすかな小鳥のさえずりが静かな朝の空気を彩り始めていた。


さて、ルート通りに廻るなら……まずは朔月草ね。ここからは地図は開きっぱなしにしとこうかな。ながらスマホは危ないけど、効率重視だ。

地図に従い、湿った土の上を慎重に歩く。途中で道から外れて、更に木々の間を奥の方へと進む。やがて小さな開けた場所に辿り着いた。そこには、半透明の葉を持ち、淡く光る白い花を一輪咲かせた朔月草が群生していた。


「ここね。この場所は地図スキル無しでたどり着くのはムリかもしれない。しかも新月の次の日の早朝しか咲かない薬草だもんね。」


記憶をたどっても、アイリスのお父さんが朔月草を採取してきたことはないみたいだ。やっぱり、ステータス画面から得られる情報はかなり特殊かもしれない。

朝露に濡れた朔月草の銀色の茎を、慎重に摘み取る。冷たく、しなやかで、かすかに甘い香りがする。


「5束……ちょうどいいわね」


丁寧に、保護紙に包んでカゴに入れる。




次は星月草の生育地へ。森の道に戻り、今度は細いけもの道を進む。しばらく進むと、青みがかった白い花が一面に広がっていた。星月草はよく使うので、10束以上採取しようとした瞬間、黄色の注意画面が表示された。


─────────────────

注意:推奨採取量を超えています。薬草

の持続可能な成長のため、過剰採取は避

けてください。

─────────────────


そうだった……アイリスの記憶が蘇る。父親と一緒に採取に来たときのことだ。


『アイリス、覚えておきなさい。薬草は大切な自然の恵みだ。1/3だけ採って、残りは自然のままにすれば、薬草は絶えることなく、私たちに恵みを与え続けてくれるからね。決して欲張ってはいけないよ』


父親の優しい声と笑顔が、鮮明に思い出される。


「ごめんなさい、アイリスのお父さんの教えを破るところだったわ」


そうつぶやいて、採取を10束で止める。 前世でも、SDGsは外せないお約束だったよね。持続性はめっちゃ大事。

次の場所へ向けて地図を確認すると、採取した星月草は黒字に戻り、その下に「100%回復時間:120時間」と表示されていた。つまり、5日後にまた来ればいいのだろう。ゲームの採取系でよく見る表示だ。うんうん、便利便利。きっと次は、この回復時間も織り込んだタスク管理をしてくれるはず。




森の奥へ進むにつれ、木々が生い茂り、暗くなってきた。発光画面を3個に増やし、明るさも少し強くしてもらう。次の目標、翠風草を探す。今回は群生していないので、自分の眼で探さなくてはいけない。少し先に、風に揺れる風車のような花が目に入る。嬉しくなって、手を伸ばそうとした瞬間、赤い警告画面が目の前に表示された。


─────────────────

警告:翠風草の周辺に毒草が生えていま

す。手袋を着用してください。

─────────────────


うわっ! あぶなっ!! ありがとね、アシスタント君。慌てて手袋を着用し、慎重に翠風草を採取した。




時間が経つにつれ、まるでスタンプラリーみたいに思えて、楽しくなってきた。採取予定にない薬草も、ルートに近ければ採取して、赤や青の文字をひたすら黒に変えていく。ソシャゲでデイリークエストの赤ポチをひたすら消している気分だ。


ふと、顔を上げてあたりを見回すと、すごく不思議な気分になった。二日前までビルの間を走り回っていたのに、今は全身で豊かな自然を満喫している。森の香り、鳥のさえずり、木漏れ日の温かさ……全てが新鮮な本物だ。紫霧草の紫色の霧のような花、涼香草の爽やかな香り。一つ一つの薬草に、魅了されていく。


採取に熱中していると、タスク管理のリマインダーが立ち上がった。


─────────────────

通知:市場の準備時間です。

帰宅前に、採取薬草をご確認ください。

─────────────────


「えっ、もうそんな時間?」


見上げると、木々の隙間から青い空が見えた。

発光画面がいつ消えたのかも気づかないほど、スタンプラリーに熱中していたようだ。

慌てて採取した薬草をカゴから出して、朝の光の中で再確認する。よし、全部揃ってるわね。


私は、達成感に満足げして頷き、帰る準備をする。

森を出る時、振り返るとキラキラと朝日を反射する木々が見えた。







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