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元コンサル女子の異世界商売~ステータス画面とAIで商売繁盛!~  作者: 雪凪
渾身精魂のプレゼンテーション

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2-28.5 【閑話】ステータス画面のメンテナンス

寝る前の日課、ステータス画面の確認をしていた時にふと思った。


「ねぇテオ、最近は緑知の指スキルも変化ないし、ステータス確認しなくてもいいんじゃない?」


『アイリス様、それであれば、これを機に、ステータス画面の機能を総点検してはいかがでしょうか?』


「え? 点検って?」


『アイリス様のご要望をお伺いし、出来る限りお応えさせていただきます!』


なんか、テオが張り切り始めた。寝る前だから、ちょっとめんどくさい。


『では、まずはトップ画面からご覧ください。右側のアイリス様の全身像ですが、ずっと同じピンクのワンピースで、少し単調ではありませんか?』


「それはそうだけど。変更できるの?」


『せっかくデータベース化しているワードローブがございますので、それを活用してはいかがでしょう。TPOに合わせて3パターンくらいコーディネートを切り替えられるように』


「え、それはあり! じゃあ髪型とメイクも連動させてよ。朝のコーディネートの参考になりそう」


一瞬、ステータス画面がアプデのクルクル画面になったが、ほんの数秒で元に戻る。全身の画面をタップすると、商会制服姿で編み込みまとめ髪をして落ち着いたメイクに変わり、お辞儀の動作をした。更にタップすると、お出かけ着のワンピース姿で、ふわふわカールした髪に華やかなメイクに変わり、クルッとスカートを靡かせてターンする。またタップすると普段着でおろした髪とノーメイクの私になって、ジョウロを持って、月ちゃんに水を上げる時の動作をしている。よく見ると、全身姿の横に「清楚」 「華麗」 「大人っぽい」 「ロマンチック」 「青系」 「帝国風」などの選択肢もある。


「あははは、着せ替え人形みたい。見て見て、お出かけ着のロマンチックモードすごいよ? レースonレースだよ! このメイク、カラコンとツケマしてない? あ、でも、あのさ……面白いけど、よく考えたら、どうせ毎朝テオに聞くから意味なくない?」


『アイリス様……』


つい、根本から否定してしまった。


「まぁ、楽しいからOKよOK。次! パッシブスキルを見直してみよ?」


『承知いたしました。まず、スキル技能自動取得についてですが──』


「最近あんまり変化ないけど、一応あった方がいいわよね。所持金自動計算は商会でめっちゃ使ってるし、これは必須!」


いつの間にか、所持金は日本円で9桁を突破している。自分の商品の売上げ、レオン会長からたまにもらう太っ腹特別ボーナス、開発商品の特許料の一部などだ。もしかして、もうFIREして異世界スローライフなんて始めてもいいかもしれない。きっと、秒で飽きるけど。


『体調管理機能はいかがでしょう?』


「うーん......テオの警告メッセージがうるさいのよね。 『残業が3時間を超えました。休憩を取ることを強く推奨します』 とか」


『申し訳ございません。ですが、お疲れの時は休んでいただきたいので......』


「うーん、このままでいいけど、これからは休みの日はオフにしてもいいかもね」


『アイリス様、オンオフに関わらず、アイリス様の体調管理は私の重要な任務ですから、無理をなさっている場合は警告を申し上げますことは変わりません』


「え? じゃあオンオフの意味って……」


『......データベースの更新をいたしましょうか?』


「話をそらさないで! ......あ、タスク管理は絶対必要! これがないともう生きていけないレベル」


『翻訳機能は、パッシブになってご不便は?』


「むしろ超便利! 自動翻訳が無かったら、呪いの調査なんて1/10も成果出てなかったと思うもん。よく考えたら、パッシブスキル、全部必要じゃない? 見直す意味あった?」


『ふふ、では新機能の追加を提案させていただきましょうか?』


「パッシブの新機能?」


『新機能として、月詠草管理スキルを追加してはいかがでしょう?』


「月ちゃんの管理スキル? うーん、よく分からないけど、今までも水やりのタイミングとか教えてくれてたよね?」


『はい。ただ今から追加させていただきます』


「あ、もう追加しちゃうの? って、これ何? カウントダウン?」


画面の隅に、365という数字が浮かび上がる。そして直ぐに364:23:59という表示に変わった。


「テオ、これ何のカウント?」


『申し訳ございません。その件に関しては、お答えできかねます』


「えぇ!? それって、お答えできかねる系の謎が増えるってこと?」


『アイリス様、お答えできかねるものは、お答えできかねます』


「もう! テオってば!」


『はい。私がしっかりとサポートさせていただきます。ただし、最終判断はアイリス様にお任せいたします』


「はぁ、1年後に月ちゃんに何か起こるの? って、え、待って」


何気なく月ちゃんの植木鉢を見たら、いつも何もない表面が少し盛り上がっている……ような気がする。ほんの少し、真ん中あたりが。


「テオ! 月ちゃんの鉢が変化してない?」


『アイリス様、体調管理機能からの警告です。23時を過ぎましたので......』


これは、何も答えてくれないヤツだ。画面の隅で、静かにカウントダウンが進んでいく。364:23:58......364:23:57......。


『アイリス様、もう寝る時間です』


「はいはい、今から寝ます。おやすみなさい。でもさ、テオ。このカウントダウン、絶対に気になるわよ?」


『おやすみなさいませ、アイリス様』


有無を言わせない、テオにしては強引な就寝挨拶だ。布団に潜り込んで、窓の外を見上げる。月の光が月ちゃんを照らしている。カウントダウンは一体何を意味しているのだろう。月ちゃんは知っているのかな。




翌日の夜、またステータス画面を展開して、テオに話しかけた。


「テオ、昨日はトップ画面とパッシブスキルを整理したから、今日はアクティブスキルをやっちゃおう」


『はい。では、順番に確認してまいりましょう。まずは時計機能から』


「うん。ストップウォッチとタイマーは、調薬にめっちゃ役立ってるわ。抽出時間の調整には必須よね」


『アイリス様、タイマーのスヌーズ機能は不要ではないでしょうか?』


「え、なんで?」


『お昼寝時間が仮眠推奨時間15分に対し、平均27分というのは......』


「はい、次! メモ帳ね!」


『アイリス様……承知いたしました。データベースに進化してからの使用状況を確認いたしましょう』


「便利すぎて手放せないわ。商品開発のアイデアとか、会議の記録とか、とにかく気になることは色々書き込んでるし」


『はい。ただし、"今週の美味しかったお菓子ログ"の分類は業務フォルダではなく趣味フォルダでは......』


「あれは大切なマーケティングデータよ! 商品開発の参考になるの!」


『"美味しい"という感想だけでは、データとして不十分かと』


「うっ......いいから、次よ! 次! 地図機能よ」


『移動が増えたおかげで、地図の範囲が大幅に広がりましたね』


「あちこち行ったもんね。王都方面も帝国方面も範囲が広がったし!......あれ? ちょっと待って。何で薬草じゃなくて図書館と本屋のアイコンがあるの? え、めっちゃ詳しい情報が載ってるじゃない」


『そ、それは......効率的な情報収集のために必要な......』


「しかも、無駄に点滅してるし」


『図書館は人類の叡智の集積所であり......』


「はいはい。ねぇ、検索機能をもっと充実させない? 前世の便利マップみたいに、お店の口コミとかメニューとか見れたら嬉しいんだけど」


『承知いたしました。図書館以外の施設も......じゃなくて、全施設の情報を充実させましょう』


「どうやって情報を集める? 点数評価もあったら便利なんだけどな」


『新聞や雑誌の情報、あとは市場などで耳にする噂話などを元に星評価を付けましょう。データベースはありますので、すぐに連動させます。少々お待ちを』


今回のアプデクルクルタイムは15分ほどかかった。


「試しに、ソルディトの地図を表示して……ケーキ屋で検索ポチっと! おぉぉ、知らないお店が結構あるわね。今度の休みは食べ歩きしなくちゃ」


『アイリス様……』


「待って、テオ、違う! これは、その、商品開発の......ね? うん、本屋さんにもよって最新のカフェ情報も探そうね」


『私は何も言っておりませんが……コホン。では次にカレンダー機能を──』


「このままで便利よ。タスク管理よりシンプルに予定を確認できるし。えーっと、今週は明日の午後にイベントスペースの打合せ、明後日の朝イチで商品企画会議、午後は翠風学舎との打ち合わせで、事務室の月次のお手伝いもあるのか」


『なぜか"エトラ支店長来訪予定日"だけ星マークが付いていますが』


「だって支店長の王都土産の差し入れだけは、絶対に逃すわけにはいかないんだもん!」


『アイリス様、ニキビと体重管理は、どうぞお任せください。スリーサイズのグラフもご用意しております』


「余計なお世話よ!」


久しぶりの、慇懃無礼執事モードだ。盗んだ馬車で走り出したいくらいイライラさせられる。


『さて、辞典機能はいかがでしょうか』


「薬草辞典、薬辞典、動物辞典、鉱石辞典、植物辞典か。薬の材料のために増えたわね。これはこの調子で増やしていきたいわ。そうね、カラー辞典がほしいかも。他にテオがデータベースから作れそうな辞典ってある?」


『医学事典、法律辞典、経済辞典、心理学辞典、哲学辞典、科学技術辞典、歴史辞典、天文学辞典、ことわざ辞典──』


「あ、はい、すとっぷ。必要になったらテオ先生にご相談させていただきます。次! オフィ……じゃなくて、表計算と文書作成とプレゼンテーションソフトね」


『はい。文書作成とプレゼンはメモ帳機能をお使いなので、ほとんど使用しておりません』


「あーね。結局さ、ここでは印刷したりディスプレイ表示したりして、他の人に見せられないからさ、自分用ならメモ帳で十分なんだよね。メモ帳の機能はめっちゃ充実してるし」


『アイリス様、表計算ソフトの"商会の独身男性 年齢分布表"は削除してもよろしいでしょうか? 必要ございませんよね?』


「そ、それは統計の練習用に残して!それは、ミナさんとリコラさんに頼まれたのよ? ほんとだからね? えっと、他に追加したい機能って何かないかな?」


『なにか思い当たることはございますか?』


「そうねぇ......無理なのはわかってるけど、印刷できるカメラ機能が欲しいなぁ。毎日スケッチするのは大変そうだし」


『記録用ということですね? これから月ちゃんの写真を毎日撮影する予定ですか』


「え!? なんで分かったの!? ってか、テオは物理的な干渉はできないから印刷写真は無理でしょ?」


『はい。しかし、帝国製の特殊紙と電磁波を使えば、簡単な画像を記録することは可能です』


「えぇ!? どういうこと? 詳しく!!」


『先日の帝国科学通信に感光性の粒子が薄く塗布された特殊紙の情報が載っていました。実物を見ないと断言はできませんが、私が微弱な電磁波を与えることで、画像を定着させることができるかもしれません。前世のBluetoothやWi-Fiのように、AIシステムは電磁波を発信できるのです』


「そういえば、前世でもAIアシスタントって、無線通信とかデジタル信号は使えたわよね。だから、電磁波で特殊な紙に反応を起こせるってこと?」


いや、でも待って。前世のAIアシスタントって信号を発信する物理的な本体が存在していたけどテオって……いや、考えたら負けだ。うん、気にしない気にしない。


『はい、その通りです。よくおわかりですね、アイリス様。この世界でも同じ原理が使えます。電磁波は通信に使っておりますので、アザランス帝国の特殊紙で実験してみたいところですね』


いや、待って待って。通信ってどこに、誰と? どゆこと? ホラーなんだけど??


『ただし、いくつか制約がございます』


「あ、やっぱり答えてくれないのね。で、どんな制約?」


『まず、モノクロの線画程度しか表現できません。また、一枚の画像の定着に10分ほどかかります』


「どっちにしろ、写真はこの世界の人には見せられないから、自分用だもんね」


『はい。データベースに保存する分には、カラーでも動画でもお好きにしていただけます』


「じゃあ、いいや。印刷写真は使い道が少なそうだからいらないわ。カメラスキルとアルバムフォルダを用意してもらえば、それで月ちゃん成長記録をメモ帳で作るわ」


『かしこまりました。では、カメラスキルを実装いたします』


今回はすぐに新しいアイコンが現れ、【カメラ】というスキルが追加された。早速、月ちゃんの植木鉢を撮影する。


「テオにお願いしたら、いつでも必要な画像を見せてくれることはわかってるけど、やっぱり自分でシャッターを押すのは楽しいわね」


『ステータス画面の発光画面でライティングしましょう』


なんか、テオが露出がとかF値がとか言って、ノリノリになってきた。


『では、月ちゃん成長記録用のフォーマットを用意いたしますね。年月日、天気・気温・湿度、月照時間、写真3枚、メモ欄、他に何が必要でしょうか?』


「ぷっ、なんか、小学校の朝顔観察日記を思い出すわ」


テオの張り切り具合に思わず笑ってしまった。けれど、窓辺の月ちゃんは、やっぱり少し地面が盛り上がっているし、画面の隅では、謎のカウントダウンが、静かに時を刻んでいるのだった。







最近、タイトル詐欺になりつつあるので、「違うんです、ステータス画面はめっちゃ使ってるんです!」アピールしてみました。タイトルを変えるべきなんだろうか……うーん。

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