全員のステータス確認
仲間ステータス確認回です。
「どうしたの、泰良」
俺の動揺を察したのか、ミルクが心配そうに尋ねる。
「いや、俺の幸運値の異常さがわかった気がして……」
「今更?」
姫が眉間にしわを寄せて言う。
いや、高いのは知ってたけど、こんなのレベル500とか1000とかの人に比べると大したことないと思ってたんだよ。
この苦しみ、わからないかな?
わかってほしい。
そうだ!
「そういえば姫には俺のステータス、正式にパーティを組んだら教えるって言ってたよな? ミルクも正式に天下無双の一員として加わったし、ここで全員のステータスを確認しておかないか?」
「そうね。今回の調査では四人一緒に行動するわけだし、いいと思うわ」
「はい。私もみんなのステータス知りたいです」
「敵を知り、己を知れば百戦危うからずってやつだね。大切なことだと思うよ」
俺がそう提案すると、みんな乗り気になってくれた。
自衛隊の人たちが休憩のためにと用意してくれた待機用のテントに入り、それぞれメモ用の紙にステータスを書く。
スキルは書かずにステータスとレベルだけという条件で。
「じゃあ、まずは私からよ」
自信満々に言ったのは姫だった。
彼女のメモを見る。
数字は綺麗なのだが、日本語を書くのは苦手なのか、少し文字が歪んでいた。
――――――――――
レベル:26
体力:215/215
魔力:0/0
攻撃:101
防御:91(+1)
技術:131
俊敏:357(+171)
幸運:13
―――――――――――
俊敏値たかっ!?
なにこれ、俺の方がレベルが高いのに、倍以上ある。
特に増加値が高い。疾風のイヤリングの効果だけじゃないよな?
「この増加値、どうなってるんだ? 半分近く増えてるぞ?」
「私のスキル、『速き者』の効果で俊敏値が常に100増えるのよ。疾風のイヤリングの効果に反映されないのは残念だけどね」
元々俊敏値が高いのに、そこからさらに100増えるって、凄いな。
「見事に尖端異常者の数値だね。ここまでの値は見たことないけど」
「尖端異常者?」
「一つのステータスに特化した人のことをそう呼ぶの。魔力値と幸運値を除いて体力を半分にしたステータスで五角形を作った時、一つのステータスが伸びてると尖って見えるのが由来。」
「じゃあ、俺も尖端異常者ってことになるのか」
「そうだね。まぁ、幸運値はみんな低いから五角形の中に含まれないんだけどね。じゃあ、泰良は当然最後として、次は私のステータス。この中で一番レベルが低いから見せるの怖いけど」
とミルクがメモを出す。
相変わらず彼女の文字は習字のお手本のように綺麗だな。
――――――――――
レベル:13
体力:60/60
魔力:245/245
攻撃:37
防御:35
技術:39
俊敏:31
幸運:5
―――――――――――
こっちは魔力値が異常だった。
俺と違って熟練度をしっかりあげているからだろうな。
「魔力が凄く高いよ、ミルクちゃん。基礎値なら私よりも高いもん」
「幸運値は最低ラインなのが玉に瑕だけど、それ以外は魔術師のステータスとしては優秀よ」
「そうだな。これなら5階層の敵とも一人で戦えそうだ」
そして、次はアヤメと。
アヤメの文字はかわいらしいが、少し小さくて遠目だと読みにくい。
――――――――――
レベル:24
体力:75/75
魔力:292/146(+292)
攻撃:75
防御:58
技術:62
俊敏:70
幸運:9
―――――――――――
「ミルクちゃんと比べると、私の場合装備頼りですよね」
アヤメが恥ずかしそうに言う。
「いいえ、ユニーク魔法に複合魔法の両方を使えるミルクと比べて、風魔法だけでここまで魔力が高いのは稀よ。たぶん、アヤメは普通の人に比べて魔力の伸びが高いんだと思う」
「私だって、薬魔法を覚えるまでは魔力が二桁だったし」
「うん、アヤメは頑張ってるよ。さて、最後は俺だな」
なんだ、みんな俺より凄いところあるじゃん。
だったら、俺のを出してもそこまで驚かれないんじゃないか?
とメモを出す。
――――――――――
レベル:33
体力:515/515
魔力:170/170
攻撃:205(+20)
防御:203
技術:182
俊敏:181
幸運:385
―――――――――――
全員無反応だった。
……あれ?
おーい、誰か、何か言ってくれ。
姫が無言でテントから出ていく。
そして帰ってきたと思ったら、その手にはライターを持っていた。
そして、俺のメモを手に取ると、金属製のゴミ箱に入れて、ライターで火を点けた。
「ってなにするんだ!」
「アレを誰かに見られたら大騒ぎになるわよ。シュレッダーでも怖いくらい」
「やっぱり誰にも言えないよな」
「そうね、配信するにあたって、幸運値の尖端異常者だっていうのは伝えてもいいと思うわ。というか絶対にバレるもの。黙ってれば幸運値70か80くらいだって思うはずよ。確か、日本ではないけれどドイツあたりに幸運値が最初から30くらいあったって言ってた人がいて騒ぎになってたから」
初期値30で騒ぎになるのか。
「アレはともかく、他のステータスも高いよね?」
「はい。アレ以外もレベル7差とは思えないくらい」
「たぶん、アレのせいね。レベルアップごとにステータスの上昇値にはムラのようなものがあるんだけど、泰良の場合、そのムラの中で上限値に近い数字を引き続けてるんじゃないかしら?」
俺の幸運値が高すぎて、幸運値が2023年の阪神ファンにおける「優勝」の二文字みたいになってる。
「泰良、ここまでアレが高いと日常生活でも思うことはないの? いくらダンジョンの外で影響が少ないって言ってもいろいろあるでしょ? 宝くじで高額当選を引いたとか」
「うーん、くじ引きとかは子どもの頃のトラウマで最近はあんまりやらないからな。強いて言えば、仲間の女の子が全員カワイイってことくらいだが――」
と俺が言うと、ミルクとアヤメが後ろを向き、姫が盛大にため息をついた。
「泰良、あんたいい加減にしないとそのうち刺されるわよ」
「ヤバイ、いまのって考えればセクハラだもんな。悪い、つい思ったことをそのまま言ってしまった」
「……はぁ」
姫がもう一度ため息をついた。
発言には気を付けないといけないな。




