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お役所仕事

「調査ってどうするんだよ。あのダンジョンは入り口が封鎖されているし……まさか、隣にPDを設置してこっそり侵入しろって言うんじゃないだろうな?」

「泰良、それは犯罪だよ」


 やっぱり犯罪だよな。

 かつては封鎖されている石舞台ダンジョンにその方法でこっそり入ったことはあったが、あれはミルクを救うためで緊急事態だったから仕方ない。

 だいたい、入るときはよくても出るときは困る。

 PDから他のダンジョンに入ることはできても、戻ることができないからだ。

 いや、実は姫の協力があればこっそり戻る方法も確立しているのだが、しかしやっぱり無断でダンジョンに侵入するのはダメだと思う。


「ダメなのです? んー、人間は面倒なのです。えっと、誰かに泰良の入場の許可を貰うのです。アメリカ大統領でいいのです?」

「話は日本国内に留めてくれ!」


 とりあえず梅田ダンジョンのダンポンに連絡を取り、そこから職員に、ダンジョン局の局長に、防衛省に、防衛大臣にと数珠繋ぎで連絡を取ってもらうことになった。

 結果、俺たちが調査をする許可を貰った。


 というか、最初から俺たちに調査の依頼をするつもりだったらしい。

 というのも、ダンジョンの一階層にいきなりレベル100、20階層台相当の魔物が出て来た上、奥はかなり深く、それでいてダンポンもダンプルもダンジョンの正体がわからないというのだ。

 低レベルの探索者ではまともに調査ができず、それでいて、いつも調査をしているベテランの竹内さんたちは未だに琵琶湖の黒のダンジョンに潜っているから動かせないらしい。

 そこでお鉢が回ってきた先が俺たち。いや、正確には姫だった。

 彼女には分身のスキルがある。

 それを使えば、かなりリスクを抑えて調査ができる。

 そして、姫の分身が調査をして、安全が確認できた場所は俺たちも入って調べていいそうだ。

 その時に閑さんも一階層の調査に同行するらしい。


「というのが二週間前。もうすっかり冬休みが終わって三学期が始まっちまったな」


 学校の教室で俺は青木に愚痴をこぼしていた。


「いいのか? そんなこと、俺に話して」

「いいんだよ。新しいダンジョンについては今日にも公表されてるし」


 警察、市役所、ダンジョン局、防衛省が関わっているからかなり大ごとになっている上に時期が悪かった。

 琵琶湖の黒のダンジョンの情報が洩れ、世間から強い批難があったばかりだ。

 そこにきて、未知のダンジョンの発見とその周辺の封鎖だ。

 今は騒ぎになっていないが、自衛隊や警察車両が頻繁に行き来するようになっているからマスコミが嗅ぎつけるのも時間の問題。

 だったら、もう発表してしまおう――というのが国の方針である。

 そして、公表することが逆に俺たちの足枷になった。


 つまり、政府が発表する前に勝手に行動されては困るというのだ。

 結果、俺たちはダンジョンに潜れず、政府の発表を待つことになった。

 しかも、発表してすぐに潜るのではなく、まずは自衛隊、国家探索者、俺たちと順番にダンジョンに潜る。


「国家探索者? 聞いたことがないぞ」

「新制度だってさ。公務員扱いの探索者。ベテラン探索者を金で雇うらしい。EPO法人の個人バージョンだそうだ。それも今日発表」


 海外では割りと普通にある制度なんだが、日本では警察官と自衛官の一部がその役割を担っていて、それでも廻しきれない部分も竹内さんたち初期からの協力メンバーが手伝ってきたから必要なかった。

 ただ、上松防衛大臣の辞職により、竹内さんとの繋がりが薄くなった結果、彼の協力が得られなくなる状況を危惧しての制度の設立らしい。

 あくまで、EPO法人の延長で、組織に属していない探索者を囲うための政策らしいが。


「なるほど、国家錬金術師みたいな制度だな」

「閑さんも同じこと言ってたな。強さだけでなく、研究者もなれるからまさにそれだ」

「人語を操れる合成獣を作り出す研究者が現れなければいいな」


 さすがに合成獣とか作る研究はない……と思う。

 だが、人工的に魔物を生み出す研究ならあるかもしれないから怖いな。

 C国で魔物実験が行われているとかはダンジョンができた昔から噂になってる。


「じゃあ、泰良も国家探索者になるのか?」

「ならないよ。さっき言ったけど、EPO法人に入ってない人向けの制度だ。青木こそどうなんだ? お前、いまは中堅レベルの実力者だろ?」


 響さんも彼は彼で覚醒者として強かったが、青木は天使に変身できる槍を手に入れてからその実力が開花し、今や響さんと肩を並べる、いや、それ以上の実力の持ち主だ。


「それなぁ……俺はこのまま配信者として続けていきたいんだけど、その国家探索者の話を聞いたら、親父が勧めてきそうでちょっと不安だ」

「配信者になるの、応援してくれてるんじゃなかったのか?」

「親父は本当は俺に警察官になって欲しかったみたいだから。勤務中にスマホ弄れない職場はイヤなのに」


 警察でなくても勤務中にスマホを弄ったらダメだろ。


「それならダンジョン探索者も無理だろ。お前、それで一度諦めたんだし」

「それがな! 最近GDCグループがダンジョン内で使えるトランシーバーの開発に成功したらしいんだ! ダンジョン内の素材だけで作って、しかも組み立てまでダンジョン内で行ってるらしい。それで、このまま開発が進めば五年以内にはダンジョン内で使えるスマホができるだろうって噂になってるんだ」

「へぇ」


 キングさんの会社、そんな開発もしてるのか。


「そうだ。青木、今日ダンジョンに行かないか? 今日、うちの女性陣は全員用事があってな。お前は暇だろ?」

「配信もないしいいぞ。石切ダンジョンだな」


 久しぶりに青木と二人でダンジョンだな。

コミカライズの2話後半が公開されています。

会員登録が必要ですが待てば無料で読めます。

もしよかったら読んでください。

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― 新着の感想 ―
幼女と温泉はまだですか? あ、青木クンが幼女になるのですな(まってちがう)
嫁が1人増えちゃう
感想文で何人があのセリフを書くだろうか?w そして石切ダンジョン。 青木ちゃんと二人、何も起こらないはずはなく・・・。
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