黒のダンジョン魔物対策
「倒せるの? あのブラックタートルの子どもを?」
「はい。あ、いえ、まだ確実とは言えませんが。ブラックタートルの幼体の体力ってとても少ないんですよね? 具体的にどのくらいかわかりますか?」
「ああ、敵の能力を調べるスキルを持っているものに調べてもらった。個体差はあるが、全て一桁だそうだ。しかし、我々の攻撃では削ることができない」
「だったら、可能です。壱野さん、あれがあるじゃないですか」
「あれ? ……あぁ、あれか!」
実はアヤメに念話で答えを教えてもらい、あたかも自分で気付いたかのように俺はあれを取り出した。
それは、タワシだった。
「亀の子には亀の子タワシだ」
『…………』
本城さんや自衛隊の皆が白い目で俺を見る。
やばい、滑った。
「これ、普通のタワシに見えますが、魔法のタワシでして、ぶつけた相手に固定10のダメージを与える魔道具なんです。だから、こうして長い棒に括り付けて殴れば、ブラックタートルの子を倒せます」
「なんとっ!? いや、しかしブラックタートルの幼体は広がっている。それ一つで――」
「安心してください。魔法のタワシは全部で三十九個あります」
俺はインベントリから全ての魔法のタワシを取り出した。
「これは作った物ではなく宝箱から出たものなので数を増やすことはできませんが、これで押し返すことができますかね?」
俺が尋ねると、その場にいた自衛隊の上官らしき人が頷いた。
そこからは早かった。
どこからか持ってきた物干し竿にタワシを括りつけ、まるでトイレの掃除用ブラシのような形になった武器で、防壁に向かってくるブラックタートルの幼体を叩き潰していく。
その様子を俺たちはモニターに映し出されている映像で見ていた。
効果は抜群のようだ。
「はは……私たちが生み出した兵器でびくともしなかった魔物がタワシで倒されていく」
本城さんが複雑な笑みを浮かべた。
兵器一つ開発するのに一体どれだけの時間と資金を費やしたかはわからないけれど、その兵器以上の力をタワシ一つで解決されたんだ。
そりゃ思うところはあるだろう。
とはいえ、成果が出ていることは素直に喜んでいるようだ。
だが、ブラックタートルの幼体は駆除できても、ブラックタートル本体や他の魔物の対処ができない。
何か方法はあるか?
やっぱり――
『泰良、前みたいにPDに足を突っ込んで、魔法を放つつもり?』
姫が念話でたずねた。
『それが一番だろ?』
『言っておくけど、ブラックタートルは金亀神ほどじゃないけど魔法耐性があるそうよ。それに、現在、この島には無数のカメラが設置されている。富士山の魔物と戦った時に映していたテレビ局のカメラと違って色々と解析できる研究用のカメラがね。変身ヒーローマスクを使ったところで、どこまで誤魔化せるかわからないわ』
だったら、どうすればいいんだよ。
影の中からクロが吠えた。
自分が戦おうかと提案しているようだ。
クロは魔物だから、ダンジョンの外でも問題なく動ける。
だが、クロだけに任せても多勢に無勢だろ。
ん? 待てよ?
魔物同士戦わせればいいのでは?
「魔物をテイムして戦わせるのはどうだ?」
「泰良、テイムした魔物はダンジョンの外に連れ出すことはできないんだよ?」
「それは知ってる。でも、既にダンジョンの外に出ている魔物をテイムしたらどうなるんだ?」
「あっ!」
ミルクも気付いたようだ。
これなら――
「壱野さん。ダンジョンの外に出た魔物に対して捕獲玉の使用は既に試しました。残念ながら、ダンジョンの外に出た魔物を捕獲玉を使ってテイムすることはできないようです」
俺が思いつくような方法は既に試した後ってことか。
やっぱりクロが特殊なんだよな。
PDの中で倒したらテイムできたんだから……ん?
そういえば、黒のダンジョンの魔物をダンポンのダンジョンの中で倒したらテイムできることがあるって聞いたことがある。
だったら、PDの中に黒のダンジョンの魔物を誘い込んで倒せば、ダンジョンの外で戦える魔物軍団を生み出せるんじゃないか?




