お宝発表(その3)
アヤメの他のドロップアイテムを見る。
魔法関連のアイテムが多い。魔法の缶切りも二本あった。
「これ面白いな――」
一枚の絵画。
そこには大きな鏡餅の絵が描かれている。
【餅の描かれた絵:絵に描かれた餅が翌日、絵の前に現れる。餅の大きさ、数、種類は毎日変わる】
餅製造機だった。
他にも開封済みのD缶があった。
中身は空っぽ?
「中にはこの本が入っていました」
20種類以上の魔法を使える人が開けられる物で、中には紫色に染められた獣の革で装丁された羊皮紙の本が入っていた。
【グリモワール・エテルナ:魔法を登録できる。登録された魔法は発現可能なスキルを持っていると優先して修得できる】
これはまた便利だな。
みんなも鑑別のモノクルで見る。
「ん? どういうことだ? 魔法のスキルを使っていたら魔法が修得できるのは当たり前じゃないのか?」
「いや、魔法って同じスキルでも使える魔法は結構違うんだよ。たとえば雷魔法でも、俺の知っている人が使っている魔法は、雷神の裁きって言うんだが、アヤメは使えない。同じような魔法で雷神の一撃ってのがあるが、微妙に違う」
「はい。たぶん私は魔法の熟練度を上げても、雷神の裁きは使えないと思います」
多少威力が違うだけなら問題ないが、偶然にも発現した珍しい魔法を確実に修得できる――そんな魔法は便利だろう。
「1ページに1つの魔法だったら、300種類くらい登録できるな」
「別にこの本を持ち歩く必要もないなら、ダンジョン局で保管してもらえれば珍しい魔法が集められるわね……というか、トゥーナに頼めばいろいろとエルフ特有の魔法を覚えられるんじゃないかしら?」
と言って、姫がトゥーナを見た。
どうなんだろ?
エルフの魔法って俺たちのスキルで再現できるものなのか?
試す価値はありそうだが。
「……ん、便利そうな魔法を纏めてみる。今度試そう」
ということになった。
次にトゥーナの番になったが、なんじゃこりゃ?
植物が多いな。
乾燥した葉っぱや、人間みたいな形の人参。
鑑定してもよくわからない植物の名前が出てくる。
「トゥーナ、これって?」
「……ん、薬の素材。とても貴重」
「へぇ、そうなんだ。お、アイテムバッグあるじゃん」
トゥーナの前にある鞄を手に取る。
【アイテムバッグ中:亜空間にアイテムを収納することができる。容量はそこそこ大きい】
これはいいな。
「アヤメが使う感じでいいか?」
「いいんですか? 私は物を持ち運んでませんが」
「いいよいいよ」
俺はインベントリ、姫はアイテムボックスのスキルがそれぞれある。
ミルクはアイテムバッグ大を使っているので、物を運ぶのに不便なのはアヤメだけだ。
「伝説級のアイテムなのに扱いが雑っすね」
「あれって売ればどのくらいの額になるんだろ?」
知らない。
他に面白そうなのは――
「箱庭農園――水野さんが手に入れた箱庭牧場の農園バージョンか……へぇ、自動で作付けをしてくれるだけじゃなく、種を入れたらそれを植えてもくれるのか」
自給自足できそうだな。
「……泰良様、この箱庭農園欲しい。トゥーナがもらったらダメ?」
「トゥーナがそう言うのは珍しいな。理由を聞いても?」
「……ん。この世界からエルフの世界に戻る時、あっちでもスパイスを育てられるか不安。これがあれば確実に育てられる」
あぁ、それは確かにトゥーナにとって死活問題だ。
全員で話し合い、トゥーナの所持を許可する。
いつか作れるといいな、エルフカレー。
気を取り直して、ミコト(正しくはミコトの分身)が拾って来たアイテムを見る。
ミコトが拾ったわけじゃないし、意識も共有していないので、全員本当に初見だ。
一番最初に目についたのは、独楽だな。
ただずっと回り続けている。
【永久機関A:回り続ける独楽。絶対に止まることはない】
「凄いわね――永久機関って。物理学を崩壊させるには十分な気がするけど」
「ダンジョンが登場した時点で、この世界の物理学は既に崩壊していると思うよ」
宇宙質量保存の法則なんてあったとしても、そもそも宇宙の外からダンポンがやってきたんだもんな。
「魔石のない世界なら、永久機関で発電とか言って政府が黙って無かったかもしれないわね」
「どうしますか? 閑先生行きですか?」
「研究してわかるものなのか、これ?」
青木が独楽を指で触ろうとする。
高速といってもめっちゃ速いわけじゃないので、軽く指が弾かれた感じになる。
んー、とりあえずインベントリに保管しておこう。




