お宝発表(その1)
前回と同じく宝箱を四十個開けると他の宝箱が見つからなくなった。
宝箱を開け終えた俺はロビーに戻る。
かなりコンスタントに開けていったうえに、出てきたものが金のスライムばかりだったので鑑定に時間を費やすこともない。なので絶対に一番だろうと思ったら、既に姫とミコトがロビーにいて、ダンポンとゲームで遊んでいた。
「姫はともかく、ミコトは早すぎないか? 本当に開けたのか?」
「宝箱は一個開けたら飽きたのじゃ。残りは分身に集めさせておるから問題ない」
ミコトが宝箱から持ってきたらしい金属の塊を見せていう。
詳細鑑定によると火属性を帯びたミスリル――フレイムミスリルという金属らしい。
率先してダンジョンに入りたいって言っていたのに、いきなり飽きてゲームをしているとか、なんかミコトらしいな。
「姫は?」
「私はちゃんと全部開けたわよ。普通に走り回って集めただけ。いいものもあったしガラクタもあったわ。中身についてはみんな帰ってからでいいわね……あぁ、負けた。泰良、代わろうか?」
「そうだな。じゃあ、交代で――ところで、コントローラー二個しかなかったはずなのになんで四個あるんだ?」
「妾が用意した」
ミコトが木の葉を取り出して手の中で振ると、木の葉がゲームのコントローラーに変わった。
なにそれ、めっちゃすごい。
スキルだとしたら、アヤメにラーニングしてほしいくらい便利そうだ。
「タイラ、はやくキャラを選ぶのです」
「お客様が選ばないと先に進まないのですよ。選ばないのなら、イ〇ーにするのですよ」
「待て、自分で選ぶから!」
俺は自分でキャラを選び、マシンをカスタムした。
ゲームを始めて暫くして、アヤメが戻ってきた。
続いて、水野さんと胡桃里さんと戻ってきて、次に戻ってきたのが小さな狐のぬいぐるみの集団だった。どうやら、これらがミコトの分身らしい。正確には分身の分身か? 次にトゥーナとミルクがほぼ同時に戻ってきて――
「あれ? 俺が最後か?」
ミルクたちから少し遅れて最後に青木が戻ってきた。
これで全員戻ってきたな。
「じゃあ、誰から――」
俺が言い終わる前にミルクが手を上げた。
やっぱりダメだったか。
「じゃあ、ミルク……えっと、ポケットティッシュも使い道があるぞ? いろんな企業から在庫はないのかと問い合わせがあったみたいで」
「ポケットティッシュは出なかったよ」
ミルクはそう言ってアイテムバッグから取り出した。
茶色い亀の子タワシを。
次から次に。
「亀の子タワシね……存在は知っていたけど、実物を見るのは初めてだわ」
「うちのじいちゃんが身体を洗う時に使ってたな」
「これで身体を洗ってたのっ!?」
うん、まぁ信じられないかもしれないが、そうなんだ。
「でも、これ普通のタワシじゃないっすよ? 固定ダメージ10与える魔法のタワシっす」
胡桃里さんが鑑別のモノクルを使って言う。
「は〇れメタルを倒すには便利だな。避けられたらアウトだけど」
また青木がショーもないことを言うが、まぁ使い道が0じゃないだけマシか。
「……あれ? このタワシ、他のタワシと違う?」
トゥーナがタワシを一つ手に持ち言う。
違う?
他と同じに見えるが――えっと?
【当たりタワシ:管理人のダンポンに持って行こう。豪華賞品が手に入るぞ】
え? 当たり?
「ミルク、当たりって書いてるぞ」
「え? 本当に!? ダンポン! 当たった! 私、当たったよ! 何が貰えるの?」
ミルクが興奮気味に騒いだ。
そういえば、ミルクが何か当たりを引いたのって初めて見た気がする。
青木が「パ〇ェロだったりして」とポツリと呟き、ミコトが「お主、本当に十八歳か?」とツッコミを入れた。
一体どういう意味だろう?
「おめでとうなのです! 当たりタワシを引いたお客様には、シェラトン・ワイキキに泊まるハワイ六日間の旅をプレゼントするのです! 優雅で価値あるひと時をお過ごしくださいなのです!」
「やった! やったよ、泰良! ハワイ旅行だって!」
凄いな、本当に。
普通に当たりだ。
ダンジョン産のもっと高価なアイテムが欲しかったと思うが、黙っておこう。
ただ、一つ気になることが。
「ダンポン、これ本当に使えるのか?」
「使えるのですよ。この世界に僕の仲間が来たとき政府と協定を結んで、こういう旅行チケットとかいっぱいもらったのです。その一つなのですよ。有効期限はないのでいつでも使うのです」
そうか、そうさせてもらおう。
ただ――ホテルの名前に押野リゾートって入ってるんだが。
日本人向けだと思うが、押野リゾートって海外も展開してたんだな。
俺たちならこのチケットがなくても無料で泊まれそうだ――というのは黙っておこう。
それにしても、なんでタワシがハワイ旅行になるんだ?




