五人目の錬金術師
「ダンポン! その別次元って、異世界ってことか!? つまりエルフの世界に行けるってことか?」
Dコインや魔石を大量に集めなくてもエルフの世界に行って帰って来れるというのならそれほど便利なことはない。
「行けないのですよ。そこまでの力はないのです」
やっぱり無理だったか。
「具体的にどういうシステムなんだ?」
「異世界のアイテムが購入できるようになったのですよ」
「異世界のアイテムって何があるんだ?」
「いろいろあるですよ。武器や食べ物、他にスキル玉もあるのです」
「「「「「スキル玉っ!?」」」」」
俺だけでなく女性陣も食いつく。
スキルを覚えられるのは凄い。
「スキル玉って異世界の品だったのか?」
「元々ダンジョンで採れる物だったのですが、こことは違う異世界、イマネーションで僕たちのスキル玉を元に開発し量産できるようになったのです」
「スキル玉を人間が造ったのか」
いや、でも、地球だって解毒ポーションを製薬会社が解析して同等のものを作れるようになった。
地球より魔法技術が発達している世界なら、スキル玉を解析、模倣できたとしても不思議じゃないか。
「トレジャーボックスSや宝箱の中に入っているスキル玉は基本的にイマネーションで作られたスキル玉なのですよ」
そういや、トレジャーボックスSの中に念話のスキル玉が大量に入っていたな。
やけに大盤振る舞いだって思っていたが、あれもイマネーションのスキル玉だったのか。
「他にどんなスキルがあるんだ?」
「スキル玉を含めて追加されたアイテム一覧なのです」
ダンポンが俺に渡したのは漫画本くらいのカタログだった。
全員で中を見る。
「魔法の水筒も売ってる――一個100万D……5000万円っ!? 普通に買うより高いな」
「いままでダンポンが売っていたものやダンジョンショップに売っているものと違って、奇抜なデザインね。こっちで売られてるのはシンプルなものしかないから、欲しい人は欲しいと思うよ」
「あ、見てください。魔力が上がるアクセサリーですよ。カワイイですね」
「これ、異世界の銃かな? 子どもの玩具みたい」
なんか全然ページが進まない。
いろいろと面白いのが悪いんだ。
しかし、通貨がDコインっていうのがつらいな。
Dコインの個人間の売買は法律で禁止されているが、その法律を捻じ曲げさせてでもDコインを集めたい気分だ。
ただでさえ、エルフの世界に行くには天文学的なDコインが必要なのに。
次は薬の欄か。
異世界の薬ってどんなのだろうか――っ!?
「ちょっと待った!」
俺はそう言ってパンフレットを取り上げて薬のページを見る。
……よかった、豊胸剤はないようだ。
「泰良、どうしたのよ」
「いや、なんでもない。あ、異世界の化粧水も売ってるぞ?」
「気になるけど、自分を実験台に試すのは勇気がいるわね。それに、結構高いわよ」
7万Dだもんな。350万円だ。
そのくらいなら姫にとって端金かもしれないが、現金での支払いは不可能でDコイン限定となるとやっぱり高いよな。
「さすがに聖女の霊薬はありませんね」
「英雄の霊薬もな。いままで売っていたものよりちょっと効果は高そうだが、この程度なら買う必要はないか」
「農薬はダンジョン局が欲しがりそうだね」
そして薬のコーナーの最後にスキル玉があった。
スキル玉って薬の扱いなのか。
えっと――
「翻訳、千里眼、念話、気配探知、簡易調合、錬金。便利そうなものも多いけど直接戦闘に使えるスキルはないな」
「魔法スキルもないわね。私もちょっと魔法を使ってみたかったんだけど――」
魔法スキルのスキル玉は基本的にアヤメかミルクが使うからな。
でも、翻訳スキルは欲しい。
外国に旅行に行くときに絶対便利だろう。
って、値段200万D!?
高ぇよ!
他のスキル玉もだいたい200万Dだった。
俺の総換金額がまだ442万Dだったはずだ。
でも、1億円払ってでもスキルを覚えたいって人はいるだろうし。
「錬金スキルを覚えられるのは凄いですよね――錬金スキルを持っている人は錬金術師って呼ばれるんですけど、日本だと四人くらいしかいなかったはずです」
錬金スキルってそんなにすごいのか。
簡易調合は比較的入手している人が多いはずなのに、同列に扱われるのは違和感がある。
「スキル玉って全部同じ値段なのか? 便利なスキルとそうでもないスキルが同じ値段ってのも違和感があるが」
「イマネーションで作るために必要な原材料費や手間が全部同じだからなのです」
そういうことか。
「確かダンポンにDコインを結構預けていたよな?」
「はい。四人全員でだいたい1000万Dくらい預かっているのです。スキル玉五個と交換できるのですよ」
「てことは一人一個、スキルを覚えることができるのか――とりあえず、俺たちの分はスキル玉を含めてパンフレットを見てじっくり考えることにして、水野さんに錬金スキルを取ってもらうか? 武器とか作るのに便利そうだし」
「「「「賛成!」」」」
本人のいないところで、日本で五人目の錬金術師の誕生が決まったのだった。
水野さん「勝手に決めないでよ!」




