ゲーミングミミック
「いいぞ、青木」
「わかった」
ミルクが麻痺石で作った銃弾を使って痺れさせたアイスウルフに、青木が猛毒石を投げる。
青木の場合、確率は3割くらいか。
逆に麻痺弾はアイスウルフと相性がいいのかミルクの幸運値でも8割くらいの確率で麻痺してくれている。
青木の攻撃値だと麻痺しているアイスウルフに攻撃してもほとんどダメージを与えられないし、麻痺状態でも完全に動けなくなるわけではないから危険だ。
少し離れたところから猛毒石を使うことで戦闘に参加させている。
猛毒になったアイスウルフは放置。
次に向かう途中――
「お、レベルが上がった」
「猛毒状態のアイスウルフの体力が尽きたみたいだね」
「そうみたいだな。これって凄いパワーレベリングだな」
まぁな。
魔物を倒したときに得られる経験値は戦闘の貢献によって配分される。
そのため、一緒にいるだけでは経験値が得られないが、ミルクが相手を痺れさせて青木が猛毒で倒しているので、ほぼ二人の貢献だ。
そして、自分より強い魔物を倒したときの取得経験値は大量に入って来る。通常のダンジョンだと安全マージンのせいであまり知られていないが、そういうことで青木のレベルは順調に上がった。
「それで、青木。スキルの方はどうだ?」
「スキルって滅多に覚えないよ。レベル10も増えたんだから一つくらい覚えて欲しいよな」
「そっちじゃなくて、ラージマッピングの方だ!」
「ああ、そっちか。問題ないよ」
青木のスキル、ラージマッピング。
ダンジョン内で移動した場所の地図を完全に記憶できるマッピングスキルの最上位版で、移動した場所の周囲の地図も把握でき、さらにマッピングされた範囲内に動く人や魔物の位置も把握することができる。
ただし、同じフロア限定。
一応人を探すには便利なスキルだ。
「まぁ、ダンプルがここにいるって確証もないんだけどな。かれこれ五時間も探し回ってるし……」
スパイスドリンクの予備も切れそうだ。
「そうだよな…ん? 泰良、あっちの雪の中に秘密の通路があるみたいだぞ」
「本当か? 行ってみるか!」
青木が通路があるって言っている雪山の断面をミルクが火魔法で溶かすと、本当に洞窟の入り口が現れた。
隠し通路といえば、石切ダンジョンで見つけたレジェンド宝箱を思い出すが、隠し通路の方向に宝箱はない。
代わりに魔物の気配がするが、一つしかないので大丈夫だろう。
三人で洞窟の中に入っていく。
中は薄暗いので、青木に光のランタンを持ってもらう。
水野さんのところで働いているアルバイトの子が作った魔道具で、魔石を使って周囲を照らしてくれるだけでなく、ゴースト程度の低級不死生物ならやっつけてくれる魔道具だ。
魔石の質を上げれば中級不死生物も倒せそうだが、こういうダンジョン内の薄暗い場所を探索する時も重宝する。
「なんか昔を思い出すよな! 三人でよく冒険だって言っては知らない路地に入っていって迷子になったっけ」
青木が懐かしいことを言う。
うん、本当に三人でいろんな場所にいったよな。
「私は止めたよ? 共犯にしないでよ」
「牧野が『こっち! 絶対にこっちに行ったら広い道に出られるから』って言った道に行っていつも迷ってた気がするぞ?」
「うっ……だって、迷ったときは広い道を歩けばいいって思うでしょ?」
ミルクのちょっとした運の悪さもその頃から発揮していた。
そして、本当に迷った時は、青木がどこからか拾って来た木の棒を俺に渡し、その棒を地面にさし、倒れた方に進んだら知っている道に戻ることができた。
あの頃から、俺の運もよかったんだな。
「まぁ、あの頃から牧野の目当ては俺じゃなくて壱野だったけどな」
「そうなのか?」
「もう……青木のバカ」
ミルクが青木の背中を抓る。
って痛いっ!
「ミルク、背中痛い。青木のダメージ俺が肩代わりしてるから抓るのやめてくれ」
「あ、ごめん。泰良、大丈夫? ポーション使う?」
「そこまでじゃないよ。体力もほとんど減っていない」
さすがに手加減はしているけれど、二人のステータス差を考えると痛い。
ダンジョンの奥に行くと、虹色に光る宝箱が鎮座していた。
通常の宝箱より一回り大きい。
「おっ! すげぇ! ゲーミングカラーだ。1680万色くらいありそうだ」
青木が感動するようにそう言う。
なんで1680万色なのかはわからない。
ゲーミングカラー……そうか、虹色っていうより、そっちの方が表現としてはしっくりくるな。
虹だと色の配色は決まっているが、こっちは時間ごとに配色が入れ替わっているから。
ただし、ありがたみは半減した。
「壱野、これってレジェンド宝箱だよなっ!? これ、お前が前に見つけた奴だろ?」
「いや、違うな。あれはミミックだ。宝箱の気配はないし、魔物の気配がする」
「え? マジで?」
「守護者みたいな魔物もいないしね。泰良の言う通りだと思うよ」
ミルクが言う通り、前に見つけたレジェンド宝箱の時は吸血鬼と戦ったし、トゥーナの知っている世界樹の種が入っていたというレジェンド宝箱にも守護者がいたらしい。
しかし、ここにはない。
それも、偽物と本物を区別する判断材料になりそうだ。
「ハズレか……だったら必要ないな。ド〇クエだとミミックでも小〇なメダル目的で倒してたから、イ〇パスも魔術師の塔に入る時以外は使わなかったくらいだけど、現実だとわざわざミミックと戦う必要もないだろ? 即死魔法とか使われたくないし」
「ごめん、ドラクエは11しかやったことないんだが、でもこのミミックはド〇クエのミミックよりむしろ当たりかもしれないぞ。小〇なメダルより価値があるかもしれない。青木、ミルク、少し下がっていてくれ」
俺はそう言って、即死魔法はないと思うが、念のためにミルクから八尺瓊勾玉を借りて、二人に離れてもらう。
そして、布都御魂を鞘から抜いて構えた。
最初の一撃は強力な一撃を食らわせる。
「斬絶華」
この一撃で仕留める。
そう思ったのだが、思わぬ誤算が。
宝箱が割れて、中から虹色の通常サイズのミミックが現れたのだ。
虹色ミミック――いや、ゲーミングミミックと呼ぼう。
「マトリョーシカかよっ!」
と思った直後、緑のガスが噴射される。
毒ガスかっ!?
即死魔法ではなく毒ガス――俺には効果がないが、ミルクと青木のところにガスが流れたら困る。
「布都御魂よ、その力を示せっ!」
俺の叫びに応えるように、周囲の緑のガスが浄化される。
リセットハンマーにより使用不可だった布都御魂の解毒能力が戻ったのだ。
ビックリしているのか、それとも別の感情があるのか、ゲーミングミミックは口をパクパクさせているが、俺はお構いなしに次の一撃を叩きこむ。
「疾風怒刀」
風を纏った剣がゲーミングミミックを粉々に粉砕。
その場には紫色の魔石が4個と、そしてゲーミングカラーの立方体の箱が残されたのだった。




