25階層の異変
本編戻ります
改めて石切ダンジョンに行く。
今日は土曜日なので時間に余裕がある。
転移用魔法陣で一気に21階層に移動し、そこから迷宮転移で25階層に行く予定だったが――
「……泰良様。途中23階層に行ってほしい」
トゥーナの要望により、23階層に転移する。
前は時間がなくて、ゆっくり見る時間がなかったもんな。
23階層には異世界の絵画が飾られている。
エルフの世界の絵画に何か村なようなものが描かれているかと思ったが、他のダンジョンと同じ森の中の風景画だった。
トゥーナがじっと絵を見ている。
俺はその間に他の絵も見るか。
海の中、砂漠、空の島の風景画。
海の中と空の島の風景画は特に気になる点はないが、砂漠の風景画は少し違っていた。
「やっぱりこれ、ピラミッドだよな。俺が知ってるものよりは縦長で塔みたいになってるけど」
「そうですね。でも、ピラミッドといえばエジプトのものだけじゃなくて、メキシコの太陽のピラミッドみたいなものもありますし、知的生命体がいたら一定の割合でピラミッドを作るのかもしれません」
「少なくとも砂漠の世界には知的生命体がいるってことなんだ」
「いたって言ったほうがいいわね。この砂漠の世界も既に滅んでるんだし」
人間がいたら宗教が生まれる――みたいなものか。
エルフの世界にもピラミッドはあるのだろうか? 今度聞いてみよう。
「……泰良様、行こう」
「もういいのか? 今日はまだ時間があるからゆっくり見ていていいぞ」
「……ん、問題ない。だいたいわかった」
何がわかったのか俺にはわからないが、トゥーナがいいというのなら先に行く。
25階層に迷宮転移で転移した。
相変わらず歩きにくい岩山だ。
早速配信を開始する。
今日の挨拶はトゥーナが行う。
「……チーム救世主&トゥーナの配信、はっじまっるよぉぉぉ。この番組はハ〇ス食品の一社提供で行っています」
「勝手にスポンサー宣言するな!」
と俺は思わずツッコミを入れたが、
〔始まった待ってた〕
〔トゥーナ様輝いてる。ありがたやー〕
〔提供ハ〇ス食品か。だから配信前にバ〇モントカレーのCM入ったのか〕
〔マジでハ〇ス食品がスポンサーに入ったのか。ネタだと思った〕
〔インド人もびっくり(カレーだけに)〕
え?
本当にスポンサーになったの?
東大阪に大阪本社を設置しているあのハ〇ス食品が!?
〔サポート:トゥーナ様同行時のみのスポンサー契約になっています〕
ガチのスポンサーだった。
まぁ、同接数は毎回数十万人――再生数は数百万回再生しているのでスポンサーがついてもおかしくはない。というか、これまでもいろんな企業からスポンサー案件が来ていたが、全部断ってたんだよな。
一応、配信の前に押野リゾートのCMを流しているらしい。
そのせいで、天下無双は押野リゾートの傘下企業だとか噂されているが、出資者というだけで傘下ではないし押野グループといえど命令権も人事権も持っていない。
天下無双は完全に独立した法人だ。
「……今日は30階層のボス撃破まで行う。予定時間三時間。最後までお付き合いよろしく」
トゥーナが言う。
〔はい、トゥーナ様!〕
〔トゥーナ様のご命令とあらば24時間視聴も〕
〔この忠誠は御身のために〕
〔Eランク冒険者になって料理技能を得たら結婚できました! ありがとうございます!〕
相変わらずリスナーのノリがいい。
トゥーナのクエスト発行で恩恵を受けてた人からのお礼が届いている。
異世界の女王っていうだけでなく、クエストの恩恵を考えると人気あるのも当然か。
25階層を歩く。
既に階段の場所は姫の分身が発見済みだ。
山を越えていけば最短距離で辿り着くが、歩きにくいので谷底の川沿いを上っていくのが良いらしい。
「綺麗な川。魚とかいないのかな?」
ミルクがせせらぎのような川を見て言う。
ダンジョンで釣りとかサバイバルとかできたら楽しいかもしれないな。
水野さんもそういうダンジョンだったら喜んでくるかもしれない。
と思っていたら、川の中から、めっちゃ怖い顔の怪魚が飛び掛かってきた。
ピラニアサイズの魚が川の中から飛び出してくるのは結構怖い。
避けて地面に落ちても、さらに跳ねて襲い掛かって来る。
姫がクナイを使って撃退した。
「弱すぎるわね」
「姫が強すぎるんじゃないか?」
「この階層の敵にしては弱いって言ったのよ。こういう階層に似つかわしくないくらい弱い魔物がいる場合、その魔物を束ねる親玉がいそうな気がするけど――探す?」
「別に捜さなくてもいいだろ。26階層に行くついでに見かけたら倒す感じで」
一応、EPO法人所属の探索者によるダンジョン配信中はその階層の魔物を世間に伝える義務みたいなものがあるのだけど、あくまで可能な範囲であって、無理に捜してまで伝えるものではない。
わざわざ捜索に手間をかける必要もないだろう。
と思っていたが、川沿いを歩いていると何度も何度も怪魚に襲われた。
「うっとうしいっ!」
俺は思わず叫んだ。
インベントリに収納されているドロップアイテムのうま川魚の数も300を突破している。
それだけ倒しているってことだよな。
「なんか数が増えてるよね。この先にいるのかな? 怪魚のボスが」
「……ん、怪魚の親はたぶん巨大怪魚。水中に潜って姿を隠し、隙をついて水鉄砲を放ってくる。体当たりも強く、その頭は岩よりもロックタートルよりも硬い」
これまた面倒そうな敵だな。
やっぱり関わりたくないんだが、怪魚の数が増えていることを思うと、この先に――
「ここかな?」
川の上流になんか池のような場所があった。
巨大な魚が隠れられるならばこの場所くらいだろう。
だが――
「臭っ!」
強烈な異臭が。
池の臭いかと思ったが、そうじゃない。
周囲にうま川魚が散乱していた。
臭いの原因はこれか。
ドロップアイテムは一定時間経過したら消えるはずだ。ということは、この魚を倒した奴はまだ近くにいるのか?
「どういうことだ? 最近、誰かダンジョンに入ったのか?」
「ダンジョンのスタッフが言うには今日20階層以降に潜ってる探索者は私たちだけのはずだけど――」
「……泰良様、この魚、まだ生きてる」
トゥーナが見つけたのは巨大な魚。
たぶんこの池のボスだ。
だが、もう瀕死の状態。
頭が大きく陥没している。
まるでものすごく硬い物に頭を殴られたのか、もしくは硬いものに自分からぶつかったのか。
ロックタートルよりも硬い頭がこんな状態になるとは――一体何があったんだ?




