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唐突にラストの口から放たれた『ご主人サマ』の言葉。
格好が目の毒過ぎて直視するのが憚られるだけでなく、こちらを純粋に誘惑しようとして体を揺すったり揺らしたりしている為に、思春期男子としてはその蠱惑的な身体にどうしても視線が誘導されてしまい、頭の中がまたしてもピンク色に染まりそうになる。
が、どうにか耐える。
ナニかが反応しそうになるが、男のプライドと意地に掛けて必死に耐える。
具体的には、賢者の石に頑張って貰う、と言うのもそうだが、唇の端っこを自ら噛み切った上で更に歯を突き立て、出血させると同時に激痛を引き起こして理性を保たせるのだ。
…………戦闘中に幾らでも、手足がもげる様な目に遭ってるヤツが、その程度で正気を保てるのか?
取り敢えず言っておくとすれば、俺とて幾ら直ぐに治るから、とは言え、痛いモノは痛いのだ。その程度に関わらず、な。
そうして、どうにかエロスの塊としか表現出来ないラストの身体(9割り裸で積極的に誘惑傾向)を直視しても耐えられる様になった俺は、彼女へと問い掛けを放つ。
当然中身は彼女の発言の内容に付いて、だ。
「…………で、一体何のつもりで『ご主人サマ』なんて言い出したんだ?
命乞いにしては、少し斬新過ぎないか?」
多少の殺気と共に、そう問い質す。
先も述べた通りに、目の前のラストは自らが求めるモノを得る為に、目の前の障害を排除する事に躊躇わないし止まらない。
抱き込むのも、目を逸らすのも土台無理な話であり、だからこそ殺して排除してしまおう、と決断していた。
が、今見ている限りだと、その『求めていたモノ』を既に手にしており、かつその対象が俺である、様に見える。
確かに、最初から一貫して、俺の胤を得る事が目的だ!と公言してはいたものの、先程までの態度との温度差に風邪引きそうになっているのは、俺だけでは無いハズだ。
だから、俺は確かめないとならない。
既に、求めていたモノを手にしたが故に大人しく牙をしまうのか。
それとも、未だに刃を隠してソレを突き立てる為の隙を窺っているだけなのかどうか、を。
そんな意志を込めた俺の質問であったが、意外な程にラストは正直に答えて来た。
…………いや、より正確に言うのであれば、正直に答えた、と言うよりも、コレは長年溜め込んでいた不満をぶち撒けた、と言うべきモノであった。
結論から言えば、彼女の言動は本心からのモノであった。
故に、俺と敵対するつもりは、もう無いと見て間違いないだろう。
────さて、もう少し詳しく説明すると、どうやらラスト曰く、『私は私よりも強いオスが現れるのを待っていた』のだとか。
少し前にも触れた通りに、魔族はより強い者を尊び、ソレに挑んで自らの力を証明する事こそを誉れ、とする文化形態を持っているらしいのだ。
で、そんな文化の中でラストは、その傾向がより強く出て来ていた個体、なのだそうだ。
…………うん、何を言いたいのかは、俺にも理解出来る。
そんな事で、あのセリフが自然と、しかも心の底から発せられる様な事態にはならねぇだろうが!?と。
正直、俺も初めて聞いた時はそう思ったが、これにはキチンと続きがある。
何でも、ラストは昔から強かったのだそうだ。
それも、同世代の後の【七魔極】として並ぶ者達と比べても、頭一つ抜けている程度には昔から強かった、のだとか。
流石に、1代前、俺が倒した連中と比べると、幼少の頃は弱かった、と言えたのだそうだが、今となっては同格かもしくは上、となってしまい、少なくとも『戦えば絶対に勝てない』と思わせてくれる様な相手は、基本的に現れてくれなかったのだそうだ。
そして、そんな幼少時代から常に思っていた事なのだそうだが、自分が子を産むのであれば、自分よりも強い相手の子でありたい、と願っていた、との事。
それも、ある程度拮抗して、なんて程度の強者でなく。
自身の力を以てしても、圧倒的に力の差を見せ付けられ、まるでボロ雑巾の様に翻弄された状態で、使い捨ての道具でも使うかの様に荒々しく蹂躙され、その後は特に顧みられる事も無いままに孕んだ事を自覚したい、と思っていたのだとか。
だが、先も述べた通りに、そこまで格上の存在、と言うのが魔族の中に居なかったのだ。
強いて言えば魔王がソレに当たるが、流石にソレだけを目当てに挑める様な相手では無く、また自身も次世代の【七魔極】として忙しくしていた事もあって、実際に、と言う事は終ぞ出来なかったそうな。
故に、次第に周囲に対しては高圧的、と言うには少し語弊があるが、兎に角サディスティックに振る舞う様になった、との事。
そんな中で、父親たる先代を破った者が現れた、と彼女は耳にした。
その後、立て続けに他の【七魔極】も次々と撃破され、遂には魔王すらも討ち取られた、と聞いた時には、正しく興奮のあまり絶頂した、らしい。
で、ソレを成したのが誰なのか?を調べた結果、もうこの世界に居ない、と判明。
同時に、己こそ魔王を討ち取りし張本人なり!と名乗りを挙げている輩も居た為に、情報収集も兼ねて王国を強襲、蹂躙、略奪。
その際に、どうやら俺の事を再召喚するか、もしくは俺の居るこの世界へのゲートを開くべくアレコレと研究していた諸々を奪取した為に、仲間を自称するだけでなく『自分の方が格上』『こちらの言う事なら何でも聞く』と自慢していた事もあって、オモチャにしてしまっていたシュヴァインを引き連れて世界間移動を決行した、との事だった。
その後、知っての通りに俺に挑み、そして敗北。
最期のトドメ、として刺されそうになった『修羅』の威力と破壊力を目の当たりにし、自らの肉体に叩き込まれていたらどうなったのか?を想像したらそれだけで無意識的に足元に水溜りを作っており、本能が『このオスに屈服したい!』と絶叫を挙げながら絶頂。
結果、今までのサディスティックな心境が反転し、マゾっ気が剥き出しの状態になった、と。
なお、ここまで俺のまとめや推測が混じっての説明となったが、これらは全てラスト本人の口から出た説明を元にしている。
故に、と言う訳でも無いのだが、自らの来歴と内情、性癖に至るまで自らの口で暴露させられた彼女の自尊心はズタズタのボロボロな状態となっており、ソレが彼女の被虐心に直撃する形となり、更なる興奮を齎していた。
お陰で、最早ほぼ布地が残されて居ない為に機能を離せなくなっていた着衣が、別の要因にて機能停止へと追い込まれ、ラストの足元に広がる水溜りは規模を拡大させる結果となったのだった。
…………それらの説明を受けた俺は、どうするべきだろうか?と腕を組んで天を仰ぐ。
ぶっちゃけ、コイツは『敗北を知りたい(笑)』で行動していただけであり、偶々その条件に俺が当て嵌まった、と言うだけで別段俺に惚れている、と言う訳では無い。
だから、同じ様な条件の相手が現れた場合、アッサリと鞍替えして裏切る、なんて可能性は否定出来ない程度に高い。
なので、信用は出来ない。
…………出来ないのだが、自ら『ご主人サマ』と呼び、慕って来る相手を無碍にする、と言うのも躊躇われるのが正直な所。
更に言えば、ここまで発情剥き出しで抱いてくれ!と迫られたら、例え敵であっても受け入れてしまいたくなるのが思春期男子の頭と心、と言うモノである。
と言うよりも、こんなに良い身体した女が、自分から『好きにしてくれ!』と頼み込んでいるのだから、その勢いに任せて貪ってしまいたいのが本音。
このままブチ◯し、孕ませて従順な肉◯器に……なんて邪心が無いとは言えないが、さりとてここで殺しておくか……と言える程にドライでも無ければ、彼女の身体が見事過ぎて正直殺すのが勿体無い……なんて考えていた時であった。
俺とラスト。
その両方の頭上に影が差し、ソコへと向けて複数の人影が舞い降りてきたのであった……。
まぁ、モテなかった男子がものすごい身体した美女から迫られれば迷って当然だよね!(目そらし)




