表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/94

18

 


 妹に誘導される形で進んだ先にて、彼女らの拠点の訓練所に到着する。

 外観や中身は、ほぼ学校の体育館であり、その中を10代半ばの少女達が駆け回り、汗を流している光景は正しく『青春』と言うヤツなのだろうなぁ、と何処か遠い所を見つめながら、現実逃避も兼ねて考える。



 …………何故、現実逃避なんてしているのか?

 答えは簡単。

 この場に、男が俺しかいないから、だ。



 先ず、訓練所に付いた時に発覚した問題。

 俺が使える更衣室が無かった。

 何故なら、ココはあくまで『魔法少女』が所属する組織であり、野郎がココを使う事を想定していなかったから、だ。

 当然、男子トイレ、なんてモノも訓練所には無い。

 辛うじて、職員用のが本館に在る程度なので、催したらそちらに行くしか無いだろう。


 だから、と言う訳でも無いが、俺は訓練所の隅っこの方で着替える羽目になった。

 一応、コッチ見ない様にね?とは教官役の少し年嵩(と言っても10代の終わり程度にしか見えない)の少女達からも通知があった為に、そこまで露骨に眺め回される事にはならなかった。

 …………ならなかったが、それでも隠そうとしている視線がチラホラと、巧妙に隠された視線がそれなりに、隠す意図も無いガッツリとした視線が極少数、着替え途中の俺へと突き刺さって来たのだ。


 …………いや、分かるよ?

 お年頃故に、異性の身体に興味が出る、なんて事は当然だし、魔法少女なんてやっていれば、忙しくてまともに男子とお付き合いして〜みたいな事も出来ないのも、仕方無いとは思う。

 ……思うが、だからといってコレは見境なさ過ぎないか?

 全盛期のマイマッソーボデー(笑)なら、この場の全員に黄色い悲鳴を挙げさせながら熱狂の渦に叩き込んでやる事も出来ただろうが、今の俺はただのヒョロガリだからな?

 不要な(脂肪)も付いていないが、逆に必要な(筋肉)もほぼ付いてない様な身体だからな?

 見ても楽しくも何とも無かろうよ?

 だから、下を着替え始めたからって、教官役も混ざって視線増やすの止めよっか?


 ────と言った具合に、セクハラと言うには過剰反応に過ぎるな、とは理解しているが、そう言いたくもなるだろう?と同意を求めたくなる経験を経て現在。

 俺は妹である桜姫と対峙していた。


 場所は訓練所の一角。

 広さとしてはバレーコート1面分、と言った所だが、その機能はやはり兄貴の拠点にあったモノと同じ様なモノであるらしく、受けた負傷やダメージを無かった事にして、疲労感に換算する、と言うモノ。


 とは言え、向こうと全く同じモノ、と言う訳では無いらしい。

 俺も詳しくは知らないのだが、兄貴の所のモノは、どちらかと言うと科学をメインに据えて、最初の状態を数学的に一時保存しておき、終わった際にそのデータを上書きし、齟齬が出た分が身体に対する疲労感の形で表出する、と言うモノらしい。

 んで、こっちの桜姫の方は、主に魔術的なアプローチによりそれらを実現しており、時空間魔術で状態を一時保存。そして、終了し次第その状態に巻き戻すのだが、その際に必要な魔力が膨大になる為に、やはり使用者から消費された分が徴収されて疲労感として現れる、と言う感じらしい。


 まぁ、どちらも結果は同じだし、動力として魔力を必要としている、と言う点に関しても変わらない、と言えるだろう。

 とは言え、別アプローチの技術が、結果的に同じ地点を示す、と言うのはある種のシンギュラリティの様でもあり、何処か面白さを感じるのは俺だけでは無いハズだ。


 と、そうこうしている間に、桜姫の方も準備が終わったらしく、俺と同じくコートの中へと入って来る。

 服装は勿論運動着の類いであり、ただのジャージを来ている俺と比べると、何処かのお嬢様学校の学生さんにも見えてくるのだからあら不思議。


 まぁ、家の規模、で言えば、十分にお嬢様と呼べない事も無い、か?

 何せ、両親の内、片や現在の戦隊ヒーロー達の総司令の席を預かっており、片や自分達の技術を元手に起業し、経営しているのだから、資金面での不自由は余程の事が無い限りは無い事だろうしね。


 なんて考えていると、1人の女性が進み出て来る。

 先程、他の女子達の教官役を務めていて、その上で俺に対してもチラチラと視線を送って来ていた1人であった。



「では、これより試合を始める!

 魔法や変身も使用可だが、相手を殺めてしまう事だけは禁止だ!!

 相手を戦闘不能状態にするか、もしくは降参させればその場で終了。

 5分経っても決着が付かなかった場合、総合的に与えたダメージからポイントを算出し、多く獲得していた方の勝利とする!

 良いか!?」


「了解」


「ええ、ソレで宜しいです」



「………………では、試合開始っ!!!」



 ルールを説明し、俺達が了承の言葉を返す。

 ソレを確認したと同時に、コートの外へと避難した女性は、掲げていた腕を振り下ろし、手合わせの開始を宣言する。


 その言葉と同時に、行動を始める俺と桜姫。

 俺が自らの手の中に短剣を錬成し構えると同時に、桜姫は桜姫で自身が契約した『マスコット』を呼び出した。



「では、お願いしますね『ブロッサム』。

 ミラクル・プリテンド!!」


『ぷいっ!!!』



 何処からともなく姿を現したのは、何故か宙に浮く小動物。

 ピンクのフワフワした毛並みに大きな瞳、短い手足に長い尻尾、と可愛らしさに全振りした様な外観をしているが、その身体から放たれる魔力は膨大なモノとなっており、向こうの世界でも数度しか遭遇しなかった『ドラゴン』を彷彿とさせる魔力圧を纏っていた。


 そんな彼?(彼女?)が、桜姫の呼び掛けに応えて全身に力を込める。

 すると、彼女の身体全体に対して謎の発光現象が発生し、元の衣服が消失する様なエフェクトを伴いながら、踊る様な動作と共に衣装が変更され、フリルたっぷりで『ソレ防御力とかどうなの?』とツッコミを入れたくて仕方なくなる様な外見の衣服へと変わり、最終的にその手の中に短いステッキが出現し、俗に言う所の『変身バンク』が終了する。


 当然、俺とてその光景をボサッと眺めていた訳では無い。

 変身が始まると同時に手にしていた短剣を投擲したり、そもそもその前にマスコットを狙って極細の魔導金属(マギタイト)製のワイヤーを放ったりしていた。


 が、結果はお察し。

 何故か変身中にのみ張られる謎に強固な障壁によって、全て防がれてしまった。

 …………ぶっちゃけ、ソレを戦闘中に常時展開しておけばどんな相手にも勝てないまでも負けはしないのでは?と思わんでも無いのだが、どうやら変身バンクの最中に漏れ出す魔力を利用して張っているモノであり、意図的に展開し続けようとすると、どれだけ魔力量が多くても5分程度でガス欠になる、と魔法少女本人である桜姫が言っていた。


 そうして変身が終わり、手にしていたステッキをこちらに向けて来る桜姫。

 横に浮いていたマスコットは、一瞬とは言えこちらを蔑む様な視線を向けた後に、高く可愛らしい声で桜姫に対して


『頑張って!!』


 と声援を送り、その場でクルリと回転すると同時に姿を消してしまった。


 …………大方、連中の視点からすれば、自分達が目を掛けている娘に無謀にも挑む愚か者、とでも映ったのだろう。

 現に、魔法少女として契約を迫る連中は、揃って少女にしか接近せず、それでいてその子達が男と結ばれるといつの間にか能力を引き上げて接触を断つ、みたいな事を頻発させている。

 なので、まだ未確定ではあるが、そう言った傾向の強い世界のマスコットを準侵略組織として登録する、なんて動きも有るとか無いとか。


 …………いかんいかん、思考がズレた。

 一応とは言え、戦いの場なのだから、真面目にやっておいた方が良い、か?


 そう結論付けた俺は、桜姫の方も戦闘態勢が整い、魔力を昂らせている事を確認すると、瞬時に魔力を全身に巡らせ、身体強化を施す。

 そして、一足の元に桜姫の懐に入り込むと、空間収納にしまっておいた『金剛』を急速展開・装着し、未だに無防備に晒されていた彼女の腹部へと叩き込むのであった……。



初手腹パン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ