私の1日〜昼
「……………」
この数日、昼食を食べているとたまにチラチラと複数の視線を感じることがある。というか魔王城の何処にいても。
敵意とか警戒とは異なる、どこか好意に近い視線。その発信源となっているのはほぼ女性である。
男からも僅かながら視線を感じるが、大体は騎士団の者である。
「お姉様、人気者ですねぇ。やはりイケメンになっても変わりませんわねぇ」
と相席のティアムンクがそう言った。
「別に見た目が姉上寄りになっただけじゃが?それに我はそんなに見栄え良くないじゃろ」
「いやいやお姉様。お姉様は元のお姿でもかなり人気ありましたよ?容姿端麗で明るいその姿は若い殿方を虜にして、あざとい脂肪を一切排して、極限の造形美を追求したその肉体は貴族令嬢の目標にもなっておりますよ。ナザール様の場合、完全に完成された容姿と肉体ですのでその人気は好意というより信仰ですわね」
「あぁーーー…………、なるほど」
ナザールが信仰対象になっているのはわかる気がする。ナザールの見た目はそれこそ彫刻の巨匠が手掛けた様な誰でも羨む様な抜群のスタイルと容姿であり、何もしてなくてもカリスマ性が滲み出ている。
……………休日はでっかい猫の様にぐーたらしてるが。
「…何を話してるんだ?」
とここでナザールがやって来た。手にはでっかいオムライスが乗ったお盆を持っていた。
「あ、ナザール様。今、お姉様が人気者という話をしておりましたの」
「…なるほどな。確かにルナティアに対する不躾な視線が増えてるからな」
「不躾って……そこまでかの?」
「…あぁ。お前は気づいていなかった様だが、以前からそういった視線は多かったぞ。普段から下着同然の格好だったからな」
「いやそれ姉上もそうじゃろが」
普段から露出度の高い服を着てる人が何言ってるんだか…………。
「…まぁ、視線だけなら問題ないが、中には不埒な行動に移そうとする輩もいる。そういった輩はリュウエンが精霊に命じて対処している」
「おい待て。それ初耳なんじゃが?」
リュウエンの奴、何やってるんじゃ。いや私も似た様な事やっているが。
「まぁ、御二方ともご自身の魅力について無頓着過ぎませんか?」
「………はぁ?無頓着とはなんじゃ?」
「…別にありふれた容姿だろ」
「いや姉上がありふれた容姿ならば、この世の者は平均以下じゃろが」
「…何を言っているんだ。お前も知っての通り、私は世の女性がやっている様な美容は何もしていないだろ」
「姉上はそんなのが必要ない程、容姿がいいじゃろが」
「それはこの場にいる私達全員に当てはまることですわよ?」
そんなこんなで平和な昼時が過ぎて行った。
年末年始が忙しい為、投稿はお休みします。
再開は1/10にしますので、それでは良いお年を




