ルナティアorリバーサル〜1
草木も眠る丑三つ時。
魔王国エンフィエルの魔王城の側にある離宮の一部屋に怪しげな集会が開かれていた。
「………それでは、これが約束のブツですリュウエン様」
「ありがとうティアちゃん。お礼は後ほどで」
その怪しげな集会を開いているのはティアムンクとリュウエンだった。
「ちゃんと容量を守って使用してくださいね。いくら危険がない代物でも使い方を誤れば大変なことになりますから」
「わかっているよ。……それよりも効果は大丈夫なの?」
「えぇ、リュウエン様のご要望通りにお姉様のみ効果があり、それ以外の方には少し体臭がフローラルな香りになるだけですわ。そして、効果も実験体による臨床実験で確認済みです。ただし、これは対象が起きてないと効果がありませんのでご注意を。それとリュウエン様のご希望通りにスプラッシュタイプにしております」
「………良かったぁ。これで私にも」
「リュウエン様、ひとつよろしくて?」
「……ん?なに?」
「既に作った私が言うのもあれですが、やっぱりやめませんか?事が知れればいくらリュウエン様に甘いお姉様でも………」
「大丈夫だよ。きっと理解してくれる。それにルナちゃんも欲しがってたし」
「そうですの?………まぁ、それはご本人に任せますが」
「うん。ほんとありがとねティアちゃん」
「いえいえ、このくらい容易い事ですわ。では、お休みなさいませ」
「うん、おやすみ」
そうして2人の怪しげな集会は終わった。
***
〜sideリュウエン〜
ティアちゃんから例のブツを貰ってから1日が経った。
昨日はルナちゃんは溜まった仕事を片付けて、帰って早々寝ちゃったから使えなかった。そして、今も寝ている。
例のブツは袖に仕舞ってあるから起きて来たルナちゃんに投げつける。寝起きで判断力が鈍っているルナちゃんなら私でも当てられる。
………ふふっ、完璧!
と廊下に続く扉が開き、そこから眠そうなルナちゃんが入って来た。
「おはようルナちゃん」
「おぉ、おはよ…………止まれリュウエン。今すぐその袖に隠してるもんを出せ」
と私が行動を起こそうとした瞬間、ルナちゃんは急にシャキッとしてそう言った。
「…………な、なんのこと?」
「とぼけるな。匂いでわかっておる。おおかた、ティアになにか作らせたのだろ。いいから出しなさい」
「…………………はい」
私は大人しく袖の下に隠していたもの《アイテムボックス》に入れて代わりの瓶をルナちゃんに渡した。
「…………リュウエン。いい加減にせんとほんとに怒るぞ」
ルナちゃんは私から一定の距離を取りつつそうジト目で言った。
「………やだ」
「…………はぁ、リュウエ「隙ありッ!!『カシャンッ』」ーーーは?」
ルナちゃんが呆れた顔をして私に近づいた瞬間、いつの間にかルナちゃんの後ろにいたティアちゃんが何かを投げ付けた。
「やはりリュウエン様はしくじりましたね。ですが、こんな事もあろうかと思い、予備でもう1つ作っておきましたわ!」
「ナイス!ティアちゃん!」
「待てお前たち!いったい何作ったんじゃ『ボフンッ!!』」
ルナちゃんは例のブツを受けた後、白い煙に包まれた。モクモクとまるで漫画みたいな白い煙がしばらくルナちゃんの周りを停滞した後、晴れるとそこには…………
「………ゲホッゲホッ、いったいなんなんじゃ………ん?なんか声が低く………は??」
ルナちゃんは困惑した様子で自身の体をペタペタ触っている。
ルナちゃんの声はナザールさんの声を少し低くした感じになり、ルナちゃんの体格はナザールさんと然程変わらなくなった。しかし、女性のものではなく、細身のマッチョの男になっている。
そう、私がティアちゃんに依頼したブツ。それは………
「性転換ポーション、成功ですわッ!!」
「な、なんじゃ、こりゃああぁぁぁぁ!?!?」
ティアちゃんの歓喜の叫びとルナちゃんの絶叫が朝の離宮内に響き渡った。




