式の準備〜6
〜sideアリシア〜
見渡す限りの白と黒の壮大な景色に人が生活するのに非常に適している気候が流れている。
今現在、私はスルースの洞天という場所にいる。
洞天は仙人が作り出すこの世から格別された別世界であり、索冥も同じ様なものを持っているが大きさが桁違いである。
索冥の場合、ドーム型の空間にぽつんと小さな菴があるくらいだが、スルースの場合だともはや異世界だ。
「仙人として洞天を創れる様になって一人前です。私サイズが普通でして墨蓮天峰真君が規格外なんですよ」
と隣で抹茶を飲んでいた索冥が私の思考を読んだのかそう言った。
ちなみに索冥は七大罪龍の大半が不在中である為、色々手伝ってもらっている。
「そうなのか………。しかし、ここは静かでいいなぁ。景色が白黒なのが気になるがそれを除けば穏やかだ」
まるで絵の中に迷い込んだ様に錯覚する白黒の渓流は実にのんびりとできる。
「白黒なのはボクの仙力のせいだから仕方ないよ。一応着色できるけど、変に手を加えるとかえって見栄え悪くなるからね」
「そうですよー…………、あまり手を加えない方がいいですよー……………」
と答えたのはスルースとカグラだった。
スルースはいつものだぽついた服ではなく、医師がする様な服装をしており、寝そべったカグラの腰に細い針の様な物を刺している。
「…………墨蓮天峰真君。先程から何をなさっているので?」
「鍼治療だよ。かぐ姉この前腰やっちゃったからそれの治療。あと他にもガタ来ているみたいだからそれもついでに」
スルースはそう言って糸の様に細い針をカグラの肩や首にも抜いたり刺したりしていった。
「…………はいおしまい。どう?かぐ姉」
そうして針を抜き終わり、スルースはカグラに聞いた。カグラは寝台から降りて立ち上がり、しばらく体の動きを確かめた。
「……えぇ、良くなりました。ありがとうございますスルース」
「それはよかった。また無茶しないでね」
「わかってますよ………さて、行きますか」
とカグラはいつものメイド服の様な装備を着てどこかへ行こうとした。
「いやどこ行くの。しばらく安静にしてって」
それをスルースはカグラの袖を掴んで静止させた。
「いやどこって………宴の為の狩りですが?」
「充分活躍したでしょ。病み上がりなんだからまた腰やっちゃうよ?それでやったらバルに『そんなんやからババアなんや』って言われるよ」
「………………嫌ですねそれは」
スルースの説得によりカグラは出陣を諦めて席に着いた。そしてスルースの召使い?である天津が用意した茶を飲んでひと息ついた。
「……………そういえば、あの2人の馴れ初めはいったいなんなんだ?」
私は今まで気になっていたことを2人に聞いてみた。
仲睦まじく、どちらかに邪な心を持って近づこうものならもう片方が殺気を纏わせて過剰反応する彼女達のどういうものかは知りたいものだ。
「それ、りゅう姉に直接聞いた方がよくない?」
「3時間ノンストップで胸焼けする惚気に入るから嫌だ」
「「……………あぁ、なるほど」」
スルースの返しに私が理由を述べるとスルースとカグラは思い当たる節がある様で納得した。
「あの2人の馴れ初めはですか………。まぁ、いいですよ。私たちが知る範囲ならばお答えします」
そうして、カグラは話始めた。




