式の準備〜3
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私とリュウエンのこの世界の婚約式である『万竜の祝宴』が執り行われることが決まった日からなんだか周りが慌ただしくなった。
ナザールはティアムンクとバルザックを連れてどこかへ狩りに出かけ、スルースは何か作っている。ちなみにカグラはギックリ腰で療養中である。
最年長だからあまり無理はしないで欲しい……。
そして、私とリュウエンはイスチーナ様の指示で別々の場所にいる。
イスチーナ様曰く、なんでも『万竜の祝宴』に選ばれた竜の番はその時期が来るまでそれぞれの領域で1人で過ごすそうだ。
リュウエンは半精霊である煉獄龍精である為、精霊界に行った。私は世界の底である奈落の底よりも更に深い『裏の世界』にいる。
『裏の世界』は文字通り裏側の反転した世界で、殆どの生物が認知できない領域である。一部の高位アンデットや公爵クラスの悪魔くらいしか認知できない。そして、それは神であるイスチーナ様も例外ではなく、彼女自身もその殆どが認識できないいわゆるブラックボックスだ。
そんな場所に私はいる。
まぁ、ここが私の領域だし。
最初に気づいたのは精霊を人間達から解放した日だった。それまでは日陰や物陰に明らかにこの世のものではない何かが私を見ていたが、その日を境に交流が始まった。
『彼ら』は私たちが住む世界に干渉できないし干渉もされない。生き物ですら怪しいが話してみるとなかなか面白い奴らだ。
壁やら結界やら意味を成さず、ふらりとやって来て挨拶したかと思えばふらりと去ってゆく。たまに手土産を置いていったりもするが、その殆どが人前では出せない代物だ。まぁ、貰うが。
そして『彼ら』の姿は千差万別だが、ひとつ共通点がある。それは全体像をはっきり認識するとその人物は発狂してしまうのだ。いわばクトゥルフ的な存在だ。
以前、リュウエンがこちら側に迷い込んでしまった時には非常に焦った。あれは私がいわゆる部屋の扉を開けっ放しにしていた様なもので私が悪い。あの日の出来事はリュウエンには悪いが記憶処理をして難を逃れた。
そして私は今、『龍化』して大きな岩の上で丸くなっている。なんか『裏の世界』だと龍の姿が1番楽なのだ。
というかついさっき気づいたけど、私の見た目若干変わっていた。以前は随分とスリムな見た目だったが銀色の逆立った鱗に覆われた流線型の体躯に4つの翼は鉤爪の様な物が付いた凶悪なものになっていて、身体の大きさは以前より約5倍程大きくなっていた。
…………まぁ、それはいい。問題は私の下だ。
『『『………………………』』』
埴輪みたいな顔をしたくねくねした何かが何千匹も集まって私を崇めているのだ。
両手を擦り合わせてバンザイしてぺたんと地面に倒れる動作を波の様に永遠と行っている。
『…………………なにこれ?』
ひとりごとを呟くも私の問いに答える者はいない。
そうこうしているうちにまた色々と増えていき、皆が埴輪モドキと同じ様に私を崇め続けていた。
私はその混沌としたよくわからない場所にいるのだ。




