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今日も平和な毎日が続く

〜sideアリシア〜



「……………ねぇ、アリシアさん。おかしくないですか?」



私の胃が崩壊しかけた眷属同士での会合から1週間が経過したある日、書類作業の補助をしてもらっているリュウエンが突然そんな事を口にした。



「すまない。話の筋が読めないのだが?」



「私ってルナちゃんと結婚しているんですよ?なのになんでこっちに来てから貴族のボンボンや狸やら狐に求婚されるんですか?」



とリュウエンは不満そうにそう言った。



確かにリュウエンは他の『七大罪龍(セブンズドラゴン)』の中で一番求婚されている気がする。



そもそも『七大罪龍(セブンズドラゴン)』のメンバーは全員が戦闘能力や有している知識もそうだが、彼女達の龍としての本性を出した時に出る鱗や爪などはそんじょそこらの魔石よりも純度の高い魔力素材として使える。



我々の世界の基準からすると彼女達は強すぎる上に利用価値があり過ぎるのだ。



そういった観点から私の直属の部下という建前を作って手を出させない様にはしているが、バカはいるらしい。



「こちらの世界だと婚約をした時、手首に相手と同じ紋様が信仰している神から授かるんだ。人間はナシアナでそれ以外はイスチーナ様だな」



「ふ〜ん。私たちの世界だと指輪でしたよ。ほらこれですよ」



とリュウエンは自身の左手を上げて薬指に付けてある龍の刻印がされた下手な上位魔法よりかは強い魔力を帯びた指輪を見せて来た。



「この指輪は雌雄の龍が刻まれて、魔力を流すと対となる指輪が反応するんです。そして、両者の同意が無ければ外せません」



「なるほどな…………。というかその指輪が纏っている魔力はなんだ?下手すると上位魔法クラスだぞ……」



「あぁ、それは昔ルナちゃんと2人で指輪作りではっちゃけて………その…………自重無しの本気で作った物ですからね?あはは……」



とリュウエンは遠い目をして力無く笑った。



自重無しの本気ということは先日のグラマリーヌの剣と同じクラスかそれ以上となるのかあの指輪は…………



「………やっぱり、こっちの婚約のやり方もやった方がいいですかね?」



「まぁ、こちら側の婚約の印は相手側が死別しない限りあり続けるから牽制としてはいいだろう。しかし、君たちにも適応されるかどうか………」



『出来るよ〜。婚約くらい』



とその時、頭の中にイスチーナ様の声が聞こえて来た。どうやら話を聞いていた様だ。



「あ、イスチーナ様だ。どうしたの?」



リュウエンも反応したから彼女にもイスチーナ様の声が聞こえて来た様だ。



『君、随分軽くなって来てるね………。まぁ、いいや。僕もずっと世界の管理とか疲れるからね。たまに眷属の君たちの視界を借りて下界の様子を見たりするんだ。というかさ〜?リュウエンちゃん、この前結構ケダモノになってたよね〜?旦那さん大丈夫?見ていたこっちも恥ずかしくなってーーー』



【ーーーーー今すぐ丸焼きにしてやるから首洗って待ってろ】



イスチーナ様がそう変な事言った瞬間、リュウエンからストンッと表情消えて聞いたことないくらいドスの効いた声が聞こえて来た。



『あ、いや、えーーーーと…………ごめんね許して?いやたまたま見えちゃってね?ん?ちょっと待って。なにその鍵。ーーちょッ!?なんでこっちに繋がる鍵持ってるの!?あ、待って、許してくださいッお願いしますッいやァァァ!?!?来ないでぇぇぇぇぇ!!!』



ドスの効いたリュウエンの声に珍しく震え声で謝るイスチーナ様にリュウエンはどこからか華美な装飾が施された鍵を取り出して空中で鍵を開ける様な動作をした。



するとその鍵を中心に扉が現れて、リュウエンは力いっぱい開けようとして、何やらイスチーナ様が慌てた様子になったと同時に扉からドタドタと音が聞こえてきた。



「開けろエロガキィィィィ!!!今すぐ焼きダルマにしてくれるわァァァァ!!!」



『嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!』



ガタガタと扉を介しての攻防。2人の力は同じくらいなのか拮抗している。



……………私?私は巻き込まれない様に出来るだけ距離を取って身を潜めている。



とその時、暴れ鳥を抑えつけることができる飼い主が現れた。



「ーーーおーいアリシア。頼まれてた魔導具の修理が終わった…………なにしてるんじゃ?」



「ルナティアか。すまないがリュウエンを止めてくれないか?」



「なんだかよくわからんが…………、わかったのじゃ」



怪訝な表情を浮かべながらもルナティアはリュウエンを止める事を応じてくれた。



「ほれリュウエンどうしたのじゃ?神訪問の宝鍵なんか使って」



「あのチビ制裁する!!だから、離し、てッ!!」



ルナティアはリュウエンを背後から羽交い締めで扉から離して一緒に椅子に座った。体格差はさほど無いが鍛治仕事をしているルナティアの方が力が強いみたいだ。



「お前がそんなに顔真っ赤にして怒ってるという事はおおかた、我らの情事をイスチーナ様が見ておったとかそんなところじゃろ?」



「そうだよというか気づいてたの!?」



「まぁ…………………眷属になったということは見られる事もあると思っただけじゃ。こればかりは仕方ない」



『そうだよそうだよー!!』



「イスチーナ様は少し黙っておいてくれ」



『あ、はい』



襲われる心配が無くなった為かイスチーナ様はルナティアに便乗してそのルナティアにぴしゃりと言われてしまった。



「仕方ないにしても…………恥ずかしいじゃん」



「まぁな?しかし、やる時には不可視の結界を張ったりしておるじゃろ。無理に見ようとすれば盲目と盲聴にかかり、四肢が爆散する結界を張っておるじゃろ?あれは神にも有効な結界じゃからな」



「……そうだよね。そうだよねルナちゃん。でもそれとこれとは話は別だから離して」



ルナティアの説得を聞いてもリュウエンはイスチーナ様を火ダルマにしようと暴れている。




「……………仕方ないな。あまりしたくはないんじゃが」




とルナティアはぼそっと何か言うとルナティアは自身の翼を大きく広げて血の様な色合いの飛膜を使ってリュウエンを包み込んだ。



「ちょっとルナちゃんなにしてるの!!離して!!」



「まぁまぁ、少し落ち着こうや愛しき姫よ」



「なに言ってッんぅっ!!?んっ…ふぅっ…!んむぅ!」



湿っぽい音と共にリュウエンがもがく声が聞こえて来た。………………………まぁ、何が起きてるか察しは付くが。



「んっ…んふっ………るなちゃっ…………まっ…………」



「待たん待たん♪」



「ん、んふっ……ふっ、ふぅっ…………ん、ぁ……」



「ーーーー♪」



そうしてしばらくするとルナティアは翼を開き、顔を真っ赤にしてデレデレになったリュウエンがルナティアに抱きついていた。



こうして平和で騒がしい毎日が過ぎてゆく…………







「これで良いかの?」



「……………まぁ、大人しくなったからいいとするが、まさか今日はずっとそのままか?」



「そうじゃよ。だから極力使いたくはなかったのじゃよ…………」



「えへへっ………るなちゃ〜ん」


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