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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
平穏で賑やかな日常
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暴食の龍は憤怒の龍の幸せを願う

「ーーーんで?何か言う事があるじゃろ姉上」



「……………………申し訳ない」



この大惨事を引き起こしたナザールを地面に座らせて私は説教している。



現在、ナザールとそのお相手のガゼルが作り出した地形破壊の惨状を私の《セフィロト・シュヴァリエ》とリュウエンとカグラが出来るところまで修復している。



「決闘はまぁ良いとして、ちっとは加減をするんじゃ。ただでさえ強すぎる姉上がその力を全力で振るったらこの世界はガタガタになるんじゃぞ?」



「…いや、まぁ、その………、今回は自重したぞ?」



「その割には随分と白熱した様じゃが?自重したならあの馬鹿でかい渓谷はなんじゃ?」



「…………………」



私がナザールが作った渓谷を指差してそう言うとナザールはサッと目を逸らした。ナザールが斬撃で作った渓谷は深さが2000メートルもあり底には既に濁流の川が流れており、もはや修復は不可能である。



「ま、まぁまぁ、いいじゃねぇか。人的被害は出てないだからよ?」



と隣から主犯格の1人であるガゼル・ドラゴロードがナザールを弁護するかの様にそう言った。



「被害が出た出なかったの問題じゃないんじゃよガゼル殿。……………というか、なんでこんな事になったんじゃ?」



ナザールは戦闘特化のスキルやステータスをしているが、別に戦いが好きというわけでは無い。むしろ無駄な戦いは避ける主義である。その為、そんなナザールがここまでやるのは相当な理由がある筈である。



とその時、後ろから背中を小突かれる感覚を感じて振り返ると昼前に剣を打ってあげたグラマリーヌだった。



「……そこの脳筋ドラゴンの戦闘狂が先生に求婚したのが始まり。先生は自分より弱い者とは番になるつもりはないと言ってそこからそこの戦闘狂が決闘を申し込んだ」



「………………………は?」



グラマリーヌの言った事を理解するのに時間を要した。



まず『脳筋ドラゴンの戦闘狂』がそこのガゼルだろう。そして『先生』はナザールだろう。



………………………いや待って?



求婚?ナザールが、求婚を、受け…………た??



私はやけに静かに思える空間の中、私はナザールを凝視した。するとナザールは首の可動領域限界まで首を捻り私と視線を合わせない様にしていた。



「姉上ぇ?」



「……………………」



返事がない。心なしか顔が赤くなって来ている。



「あ〜ね〜う〜え〜??」



「……………… (なんだ?)



私がニヤニヤと笑いながら近づき後ろに回り込み彼女の背中にのし掛かる様に抱きついてナザールを呼ぶとナザールは蚊が鳴く様な声でそう言った。



「ようやく姉上にも春が来たのぉ〜?よかったではないかぁ〜」



「……………………………別に。受けたわけでは無い」



「そうは言ってもほんとは嬉しいんじゃろ?わざわざ決闘の申し出を受けるぐらいには」



「…………………………」



私がそう言うとナザールは顔を熟れた林檎の様に赤くして俯いてしまった。ナザールは自身が嫌なら完全に無視する。無視をせずに応じたという事はナザールは求婚に対してそれ程嫌な気持ちにはなってないというわけだ。



「……………私は婚約するつもりはない。一生な」



とナザールは私にしか聞こえないくらい小さい声でそう言った。



「……………ま、そうは言っても考えは変わるかもしれん。……………姉上もちゃんと後悔しない様に自分の幸せを考えてくれや?」



私はナザールの耳元でそう言うとナザールはなんとも言えない少し複雑そうな顔をして私を見つめた。



(………………………まぁ、仕方ないか。なにせ、向こう(・・・)では色々あったからね)



私と姉の柊木 鈴奈(ナザール)との関係は少し複雑だ。



というのも私と姉は異母姉妹だ。



私が生まれる前、姉が14歳の時に父が私の母と浮気した事で姉の家庭は崩壊した。姉が言うには姉の母は15歳の頃に薬物の過剰摂取で自殺して、それから親戚に厄介者としてたらい回しされたそうだ。



父に裏切られて母に先立たれ、親戚からは腫れ物扱いされ、学生時代でもいじめなど散々な目にあった結果、姉は極度の人間不信になってしまった。



正直言って、なんでそんな人間不信な姉が自分を不幸にした元凶の娘である私を引き取ってくれて大切にしてくれたのかはわからない。普通なら恨みのひとつやふたつ晴らしてもおかしくないのに。



本人に聞いても毎度はぐらかされる。



私にとって姉は命の恩人でリュウエン()と同じくらい大切な人でただ1人の家族だ。



そんな大切な人だから、私はナザール(姉上)には幸せになってほしい。



「我は姉上には幸せになって欲しいんじゃ。血の繋がった家族としてな。それに家族の幸せを願うことは当然じゃろ?」



「…ルナティア……………、そうか、確かにそうだな」



私がナザールに向かってそう言えばナザールは目を丸くして、そして納得した様に小さく笑った。



「…だが、こんな粗暴な奴とはごめんだ」



とナザールはキッパリと言った。



「んだとゴラァ!?俺のどこが粗暴だ!!」



「そういうとこだよ脳筋」



ナザールの言い分にガゼルは叫び声を上げてグラマリーヌはもっともな事を言った。






……………こうして、波瀾万丈な眷属同士での会合は終わった。

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