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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
平穏で賑やかな日常
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魔王城の賑やかな騒動〜9

2人の決闘は苛烈を極めた。



ナザールが剣を振るえば剣から黒い閃光が巻き起こり、剣の軌道にそって小規模な爆発が起こる。そして、その剣の速さはもはや人の身では認知できない程の速さだった。



ナザールには剣の型などはない。自らの物にした身体が覚えている闘争の記憶から剣を振るっている。



それに食らい付いているのはガゼルだ。行く度で培ってきた自身の直感を信じ、ただ最善の攻撃を仕掛ける。



少しでも僅かでも相手に拳が届く様に。



剣と拳が混じり合い、打ち付け合うたびに衝撃波が起こる。周りの地形は既に原型を留めていない程めちゃくちゃである。



ナザールは常にスキルの『豪脚』と『剛力』と『破壊伝播』を発動している。その為、ただの踏み込む動作だけでも大地は砕け、地鳴りが発生する。そこに神速の剣撃が加わればそれは最早1つの災害である。



ガゼルもその生きた災害に対して己が身体能力とその身に纏った闘気で対抗している。拳だけではなく、足技も使いナザールを攻めて行く。



「最高だッ!!こんなに沸き立つ決闘は久しぶりだぜ!!」



「…まったくだッ!まだまだ地上の者も捨てたもんではないな!!」



お互いに笑い合い傷を拵えて、周りの地形を破壊しながらただひたすらに攻防を仕掛ける光景はまさに圧巻である。



ナザールは『豪脚』でガゼルを蹴り飛ばし大きく距離を取らせると上段の構えを取り、自身の魔力を剣に纏わせた。すると漆黒の大剣から空気中の魔素との拒絶反応により闇色のスパークが発生した。



「ーーーーハァッッ!!」



ナザールが短い叫びと共に剣を振り下ろすと闇色の濁流が大地を削りながらガゼルに向かって放出される。



ガゼルはそれが死に関わる危険な技だと己が直感で感じ取り空中を蹴って全力で回避行動に移る。回避行動が間に合い、あと数センチのところを通過した闇色の濁流はそのまま直線上にある山岳を削り、渓谷を形成していった。



「………………マジかよ。スゲェなぁ」



そのあり得ない光景にガゼルは思わず動きを止めてしまった。そして、それが命取りとなる。



「ーーーー余所見している場合か?」



「ッ!!ーーグォッ!?」



凍える様な声がすぐ側で聞こえ慌てて前に向き直すとそこにはゾッとする様な笑みを浮かべたナザールがすぐ側まで来ていた。そしてナザールはそのまま空いている拳で力任せにガゼルを殴りつけた。



ガゼルは遥か彼方に吹き飛び、いくつかの衝突を得て停止した。



「ーーーッ、クッソ痛えなぁ…おい」



ガゼルは全身に走る痛みに顔を顰めながら自身が埋もれていた岩や木々などの残骸から起き上がった。



「…今のを耐えたか。なかなか頑丈だな」



といつの間にか近くまで来ていたナザールはそう感嘆する様にガゼルに言った。



この世界で最も力があり頑丈な種族である竜人族の中でも一握りの猛者しかなる事が出来ない龍人族であり、世界最強と云われる彼の肉体はこの世界の生物の中で最も強靭である。故にナザールの渾身の一撃を全身に痛みが走る程度で済ませる事ができた。



「へっ!よく言うぜ…………。お前、直前で加減しただろが」



とガゼルはそう苛立っている様な声色でそうナザールに吐き捨てた。



ガゼルの言葉通り、ナザールはガゼルを殴りつける直前に腕を僅かに下げて威力を落としていた。



「…バレたか。だが、そうでもしなければお前の身体は散り散りになっていたぞ?」



「そいつがわかるからムカついているだよ。自分自身に。あのぐらい世界最強なら耐えて当然だろうが」



「…確かにな。しかし、ここまで私について来れたことには誇りに持ってもいいぞ……………………さて、そろそろ時間か」



「あ?時間?なんの事だ?」



「…私の仲間とアリシア達がこちらに向かって来ている。先頭には私の妹が自身の軍を率いて来ている。だからこの決闘はそろそろ終いだ」



ナザールが見ている方角には蟲の大群の様な黒い粒がナザール達の方角に向かって来ているのがわかる。おそらくそれはルナティアの《セフィロト・シュヴァリエ》だろう。



「…………あーー、なるほどなぁ。で、どうするか?」



「…そうだな。このまま終わらせるのもキリが悪いが、やり過ぎてルナティアに叱られたくない」



「俺よりも強いお前でも妹には頭が上がらないってわけか」



「…そうだ。ガゼルもそうなのか?」



「俺は一国の王としているが、なにぶん頭が悪くてなぁ……。妹と弟に手伝って貰ってるから強く出れねぇんだよ………」



「…そうか。お互い、似た者同士だな」



そう言ってナザールは剣を収めた。ガゼルもそれを見て自身を纏っていた闘気を消した。



こうして2人の決闘は幕を下ろした。





「ーーーーーーところでまた決闘とは言わねぇが、手合わせとかしに来てもいいか?」



「…別に構わない。好きにしろ」

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