魔王城の賑やかな騒動〜3
こちらの方はお久しぶりです。
久しぶりな故に変な箇所があるとは思いますが、ご了承ください。
工房の一件でほぼ時間がなくなった為、一同は昼食を取ることにした。
魔王城の食事は一部例外を除いて身分関係なくともに食事をする。一応、区分は分かれているが、あってない様な物だ。
そんな魔王城の食堂の一角にて異様な雰囲気が漂っている。その雰囲気を発しているのはバルザック、スルース、小鈴、索冥である。
といってもバルザックとスルースはいつも通りであるが。
「なぁ、スルースや。ウチに腰と疲労に効く薬処方してくれへん?身体が怠くて仕方ないんわ」
「お前はそこの草でも食んでおけ。それで治る」
「酷いなぁ!というかお前小鈴に変な薬渡したやろ!おかげで色々やばかったぞ!?」
「ボクは彼女の要望通りの薬を調合しただけ。どう使おうがその人の勝手でしょ?ボクは関係ない」
とスルースはバルザックの言葉を右から左へと流して、現在食堂で人気の肉まんを食べている。
一方で小鈴は内心ビクビクしていた。
原因は向かい側に座る索冥である。
獣人にとって仙人とは精霊と同じく敬う存在であり、格として上位である神獣クラスである。一応、小鈴自身も神獣の端くれではあるがまだまだ下っ端に過ぎない。普段ならば昏倒してしまいそうだが、今回はバルザックが自身の尾を彼女の腰に巻き付かせて宥めてくれている。
対する索冥は気が気でない。
神獣の中にも格というのが存在し、索冥は上位に食い込んでいる。同等の存在はいるが格上は存在しないというのが最近まで。
索冥の目の前にいるスルースは仙天九龍という『nightmare memory』の設定では神獣系最強格の上位種である。
つまり麒麟の索冥からすれば天上人である。しかもなんだかピリピリしているおかげで目の前の昼食も喉に通らないのだ。
「どうしたの天鳳?どこか気分が悪いの?」
不穏な様子の索冥にスルースは気になったのかそう聞いた。
「ッ!!い、いえいえ!体調はすこぶる良いいいです!」
と索冥はスルースに悟られまいと昼食の餡饅を勢いよく頬張る。……………味は感じなかった。
そして、勢いよく頬張ると何が起こるかというと…………
「………………ッ!?ーーー!?!?」
喉を詰まらせるのだ。そうして苦しさのあまりそのまま後ろに倒れる索冥。
「ちょ!?アホか!そんないっぺんに食うもんでないぞ!」
とバルザックは慌てて水を差し出して、索冥は勢いよく流し込み一息つく。
「た、助かりました………。ありがとうございます」
「ええよええよ。…………というかスルース。お前少しは仙力抑えんか。相手さんが可哀想やわ」
と今尚黙々と肉まんを食べ続けているスルースにバルザックはそう言った。
「相手に舐められない為の必要処置。そんなこともわからんのかバル」
「わからなくもないが…………まぁ、そんなチビ助なら仕方ないやな」
「バルてめぇ死にたいようだな」
バルザックが余計なことを言った為にスルースから発生する仙力が金色のオーラの龍となって具現化した。
「なんややる気か?チビなの気にしてるんなら背伸ばす薬でも作れや」
「…………無理な成長促進は良くない」
「なんやそれ……………あ、そっか。お前不老不死の仙人やからこれ以上の成長が見込めんのやなぁああッ!?!?」
そうバルザックがスルースの地雷を踏み込むとスルースは無言で身の丈以上の斬馬刀をどこからか取り出して容赦なく斬りつける。バルザックはそれを白刃取りの要領で当たる寸前で止めた。
「おい贅肉クジラ。その溜まりに溜まった贅肉を削ぎ落としてやるからさっさと手を離せ」
「にゃ、にゃははは…………それは遠慮願いたいん……よッ!!」
そうしてバルザックはスルースを斬馬刀ごと投げ飛ばし窓を破って逃走する。スルースはそのまま宙を蹴って追いかけていった。
「「……………………」」
そうして残される小鈴と索冥。そして、その沈黙から切り出したのは索冥だった。
「1つお伺いしても?」
「え、あ、はい。なんでしょうか?」
「あの御二人は片や神獣の皇族である原初の龍の直系のお方で片や生命の源たる海の頂点の龍であるお方です。何故貴女はあの方々に対して平然としていられるのですか?」
小鈴は一瞬誰のことかわからなかったが、すぐに神獣の皇族はスルース、海の頂点の龍はバルザックと至った。
「バル様……バルザック様は私の夫であの様に気さくな方ですし、スルース様は……………普段の様子を見ていますと自然と接することができました」
スルースは週1の薬局を開いている以外は普段は自身の洞天に引き篭もっている。薬局だとカウンター奥の畳部屋で座布団に座ってボーっとしているか丸くなって寝ている。洞天でも似た様な感じであり、気まぐれに絵を描いたり薬を作ったりしている。
故に小鈴から見たスルースのイメージは縁側で寝ている猫で固定されてしまっている。
……………実際に七大罪龍のメンバーにも縁側の猫というイメージを取られている。
「なるほど…………では、貴女から見て七大罪龍とはどの様に見えますか?アリシアにも同じことを聞きましたが、アリシアは騒がしい奴らと答えました」
「私から見た七大罪龍の皆様は………毎日を楽しく自由に生きている様に見えました」
「『毎日を楽しく自由に生きている』ですか………。確かにその様ですね」
小鈴の回答を聞いてなにか納得した様子の索冥。その視線の先には外の中庭で乱闘を繰り広げていたバルザックとスルースがカグラに仲良く地面にめり込まされて犬○家を披露しているところだった。
「自由も良いですが、時折騒動を引き起こす様ですね」
「え、えぇ…………。基本的には為になることや楽しいことですけれど………あはは」
「………………苦労なされている様で」
力なく苦笑いを浮かべる小鈴に索冥は少し同情の念を送った。




