アリシアの胃痛
〜sideアリシア〜
まずい事になった……………。
私は先程、イスチーナ様の眷属同士での念話会議での決定に頭を抱えていた。
ルナティア達を除く我々眷属達は定期的に連絡を取り合っている。
今回、そこで挙がった話題がルナティア達『七大罪龍』についてだ。
『歩く厄災』『絶望の象徴』などと人間達に呼ばれている彼女らはかなり危険視されている。一時期は討伐するかという話が挙がったが、彼女達が自由気ままにやらかした様々な案件に巻き込まれたくないのと彼女達のその世界すらを滅ぼし得る力を見て何も言わなくなった。
まぁ、普段の様子を見ている私からすると我々とあまり変わらない感じはするが。
………………それでも無自覚でやらかす事は度を超えて私の胃を破滅に追い込んでいく。
……………最近、スルースが調合してくれた胃によく効く丸薬を手放せなくなってしまってなぁ。後は夜、あまり眠れなくなって白髪が少し出てきたくらいかな。はははっ。
…………………………はぁ。
まぁ、それはさておいて、問題はそのあとだ。
参加者の1人が『七大罪龍』に一度会ってみたいと言い出して、それに他の者が便乗してきた。ちょうど定期的に行われている顔合わせの会合が来ていた為、今回は私の国、魔王国エンフィエルでやる事になった。
それに関しては問題ない。いずれ眷属同士という事で顔を合わせる予定だったからだ。
問題は彼女達と会わせた場合、どんな面倒事が起こるかだ。
一癖二癖ある『七大罪龍』と同じくらい我々イスチーナ様の眷属も非常に個性豊かである為、どんな事があるかわからないのだ。
「はぁーーーーーーー………………………」
憂鬱だ。
そうして私はキリキリ痛む胃を抑えながら、丸薬を飲んだ。
***
〜sideルナティア〜
アリシアの呼び出しを受けて私たちは執務室に足を運んだ。
「…で?我々を呼んだ理由はなんのだアリシア?」
とナザールがアリシアに聞いた。
「近々、イスチーナ様の眷属同士での顔合わせがあるんだ。期間は1週間、その間君たちには普段通り過ごしてほしい」
「ん?なんや出向いたり、離宮に引きこもってなくてもええんか?」
「…………………下手に制限すると何が起こるかわからないからだ」
バルザックの問いにアリシアはげんなりとした顔をしてそう言った。心なしか顔色も悪くなっているみたいだ。
アリシアが言うにはアリシアと私たちを除くイスチーナ様の眷属は非常に個性的であり、下手に抑えつけると何が起こるかわからないそうだ。
加えて、私たちと会わせたらそれはそれで面倒なことになる可能性が非常に高い為、ここは放置する事にしたそうだ。
「ーーーーそういうわけだから、全員くれぐれも普段通りしてくれ、頼む……………」
『『『…………………………』』』
もう何歳か老けて見えるアリシアに私たちはどう声をかけていいかわからなかった。




