幕間〜悪夢からの解放
この章のメインとなる話の始まりです
〜side***〜
暗い。
昏い。
寒い。
寂しい。
ーーまた、あの夢だ。
暗くて寒くてひとりぼっちな場所で私はただ座っている。
ーーーー真祖様、真祖様。
また、あの声だ。
誰かが私を呼んでいる。
ーーー真祖様。今こそ我々の悲願を達成するのです。我々こそが天下を支配するのがふさわしいのです。
耳を塞いでも頭に直接響いてきて、嫌だと言ってもやめてくれない。
声が響く度に頭が割れそうになる。何でもかんでも壊したいっていう感情が湧き上がってくる。
ーーーさぁ、我々を仇なす敵を全て屠るのです!真祖様のお力が有れば可能であります!さぁ、真祖様!
私はそんなことはしたくない。誰も傷つけたくない。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!
頭がぐちゃぐちゃになって、何がなんだかわからなくなって、自分すらもわからなくなって…………
ーーーーさぁ!真祖さッ『ドパンッ!!』
「ーーーーーーーえ?」
嫌な声が聞きなれない破裂音と一緒に消えた。
「まったく、大の大人が子供に寄ってたかって命令するんではありませんわよ」
何もない筈の誰もいない筈のこの場所に聞いた事がない声が聞こえてきた。
声がした方を見るとそこには、真っ白な片翼に真っ白な軍服を着て目隠しをした真っ白な女の人がいた。
「……………天使様?」
「あらあら、私が天使に見えまして?私はどちらかというと悪魔よりですわ。…………ふむ、精神干渉でありますか。ーーー『魔術侵食』、『増幅反射』、『精神崩壊』」
ーーーーギャアアアアアアア!?!?
天使様が魔法を立て続けに発動させると嫌な声は絶叫を上げてパタリと止んだ。それと同時に頭痛も無くなった。
「なに、したの?」
「貴女に悪さしていた者達にお灸を据えたのです。まぁ、無事で済む訳がありませんが」
天使様はそう言ってクスクスと笑った。
「あ、あの!ありがとう!わ、私はっむぐ」
私は天使様に自分の名前を言おうとした時、天使様は私の口を塞いだ。
「駄目ですわよ?不用意に名前を告げては。名前はその者を縛る枷、名前を知られるとそれを利用されて大変な目にあったりしますわよ?だから、私は貴女の名前は聞いたりしませんわ可愛らしいフロイライン」
「私はフロイラインじゃないよ?」
「いいえ合っていますわ。フロイラインは私の故郷の言葉で"お嬢さん"という意味ですわ。ね、フロイライン?」
天使様はそう言うといつの間にか手にしていた銃を虚空へと向けて弾丸を放った。すると周りの真っ黒がひび割れて無くなって、綺麗なお花畑になった。
「わぁ!凄い!」
「夢は疲れた心を休める為の癒しの場。まだ目覚めるのに時間はありますから、ここでゆっくりと…………どうしましたか?」
私は花畑から花を取って花冠を作った。夢だからすぐに作れる。
「これあげる!」
「あら、あらあら、ありがとうございますわ」
そうして私は天使様と一緒に久しぶりの楽しい夢を見た。
***
「なぁ、ティア。その花冠どうしたんじゃ?」
「夢で出会った可愛らしいフロイラインからの贈り物ですわ」
「ふーん…………フロイラインのぉ」




