バルザック、堕ちていく
随分と楽しく書きました。
ちなみに私はバルザックがお気に入りでもあります。
〜sideバルザック〜
拝啓、日本にいる筈のお父さん、お母さん。ウチは今、異世界にいて狼耳の可愛い嫁さんを貰ったんや。
「待ってくださいませバル様〜。お話しましょ〜」
「ひいッ………ひいッ………!」
身体の方はウチが遊んでいたゲームのキャラの姿をしておって、最近ようやく慣れてきたところや。といっても見た目が変わっただけで他は変わらんかったから、別にええが。
ウチの他にもこっちの世界には仲間がおるから毎日が楽しいんや。ほれ、2人も会ったことのあるあの6人や。みんな変わりなく自由に過ごしておるよ。
ウチも今は魔王軍に身を置いて酒作りをしておるんや。自由に過ごして楽しくやっておるよ。
「仕方ありませんね〜?そんなに嫌なら無理矢理にでも………そーれ♪」
「ちょ、待ってッグフゥ!?」
そんなウチは驚くことに結婚したんや。しかも、超別嬪でいい子や。驚いたやろ?名前は小鈴。雪の様に真っ白でふわふわな銀髪に翡翠色の瞳を持った狼耳の美少女でリアルガチのお姫様や。
出会うきっかけは魔王でお世話になっておるアリシアの付き添いで獣人の国に行ったんや。そんでその初日の夜に寝る前に一杯と思って庭園に行ったんや。そこで出会ったんや。
「バル様ぁ?どうして逃げているのでしょうかぁ?私はただバル様とお話がしたいだけですよ〜?」
「ま、待て小鈴!!落ち着こう!一旦、落ち着こうや!な?」
月明かりの中、月光に照らされた銀色の髪に月下美人の様な儚げな気配を持つ彼女にウチは一目惚れしてもうたのや。あののらりくらりとしていたウチが一目惚れやで?冗談みたいやろ。けど、冗談ではないんや。なんだかんだ恋に落ちたことがなかったウチやけど、人生初…というか龍生初の恋をこの時知ったんや。
ウチは小鈴と話したくて近づいたんやけど、その時の小鈴は随分と憂鬱そうな顔をしておったんや。話を聞くと彼女はしたくもない結婚をさせられそうになっておって、その相手は黒い噂が絶えん身も心も真っ黒なゲス野郎やったんや。
ウチは小鈴にそんな顔して欲しくなかったから普段なら絶対にしない個人に対しての詮索もして、優しく声をかけて、勝手に協力した。そうして、そのゲス野郎に天誅を下して晴れて小鈴を嫁に迎えることができたんや。
「待ってすまん小鈴分かった謝るごめんなさいもうせえへんからぁ!!」
「その薄っぺらい謝罪文句、もう何度も聞きましたよ?もう、本当にオイタが好きなんですからぁ~~」
「ちょっ、待っ、こす、ニャギャアアアアアアアッ!?!?」
まぁ、報告は以上や。ところでお父さん。少し聞きたいことがあるんやけどええか?
………………嫁ブチ切れさせた後の対処法ってどなんすればええんや?
敬具。
……………といった感じで向こうの両親に手紙を脳内で書くくらい、ウチの頭の中は恐怖でいっぱいやった。理由は目の前のすんごい黒い笑みを浮かべた小鈴や。ウチの《危機察知》が最大レベルで警報を鳴らしておるんやっ。
現に縄でぐるぐる巻きにされて身動き取れん状態で転がされておるし。
「言ったはずですよね、バル様?浮気は許さないと。手当たり次第にかわいい女の子に手を出したり、性的なお店に行ったりするのは駄目だと言いましたよね?お仕事でもそういったお誘いも断る様に言った筈なのに、………………なのに、言うことなんで聞けないんですかねぇ………えぇ?」
「マジですみませんっした」
「ねえ、バル様?女の子が好きなのは構いません。春画の収集も私のことを夜のオカズをするのもどうぞご自由に。ですが、他の女に目移りするのはやめてほしいと、もう何百回も言った筈ですがぁ………!?」
そこまで言い切ると小鈴から極寒の様な冷気がウチに降り注いだ。
小鈴は冷気と暴風を司る神獣フェンリルの血統の獣人で先祖返りによりフェンリルの能力を使える。けど、小鈴は身体の中に仙力と呼ばれる魔力とは別のもんになっておって、その仙力が悪さして小鈴の身体を悪くしておった。それをウチから漏れ出ている龍の気とスルースの仙薬で仙人になったわけや。
まぁ、その結果、もんの凄く強くなってやばいんやけど。身体も頑丈になって、毎夜誘惑してくるのがウチもきついんや。いや、嬉しいんだよ?楽しくできるし。うん。
「聞いてますかぁ?バル様ぁ??」
「いだだだだだだだだだだだ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ!!」
と別のことを考えていたら小鈴はウチの頭にアイアンクローをきめてギリギリとこめかみに力を加えてきた。
さて、こうなった経緯を思い出そう。
まず、事の発端は昨日、ウチが事業の件で商会と会食したわけや。ウチが作る酒は非常に人気で大儲けのぼろ儲け。まぁ、ウチはそんな金に興味なくて、ただ酒が作りたいだけなんやけど。
そんでその会食した場所がいわゆる色を売っているそういうお店で酒飲んで羽目外したウチはやってしまったわけや。………………いやシとらんよ!?ちょーーと、お触りしたくらいやで?
それが小鈴にバレて絶賛追いかけられて、捕まったわけや。
いや〜、ポフポフのふわふわやったなぁ〜。あちらさんもウチの好みが知っておったみたいで可愛子ちゃんが沢山おったッいだだだだだだだだだだだだだだッ!?
「バ〜ル〜さ〜ま〜??今絶対別のこと考えてましたねぇ?頬が緩んでましたよぉ?今私とお話をしている筈ではぁ?」
「いえ……滅相もありません……………」
「まったく………何故こうも手癖が悪いのでしょう?いつもは頼り甲斐があって、かっこよくて、いじめ甲斐があるのに………」
「いや手癖が悪いんのは生まれつきで………待って?今最後なんて言ったん?」
今、小鈴から聞き慣れない単語が出てきたような…………。
「ねぇ、バル様?」
「ウチは海の王であり、海賊女帝や!海賊は自由がモットー、欲望に忠実に生きておるんや!向こうで培った信念はそう簡単に」
「私だけでは…………駄目でしょうか?」
小鈴はウチの話が終わる前にウチの上に馬乗りの状態となり、とても悲しそうな顔をしてそう言った。
「ーーーーーーーー」
小鈴の悲しそうな顔を見て、ウチは言葉出なくなった。何故だろう………こんな気持ち、はじめてだ。後悔と罪悪感がぐちゃぐちゃになって………。
あぁ、なるほど。ルナの言う通りやったな。嫁さん悲しませるとその分、自分も辛くなるって言っとったわけが、今ようわかった。
「…………すまん小鈴。ウチが間違っておったわ。もう、せいへん。だから、笑ってくれや小鈴。ウチは小鈴が笑っている顔が好きなんや」
「バル様っ………!」
ウチがそう言うと小鈴はパアッと顔を輝かせた。耳と尻尾をパタパタさせてほんと可愛かった。
「それではバル様、これから5日間寝室軟禁で許してあげますね♪」
「いや〜ありが…………今なんて?」
今、小鈴の口からとんでもない言葉が出てきたような…………
「他の女に目移りしない様に、私しか見えない様にする為に調教するのですよ〜?大丈夫ですよ。すぐに気持ちよくなりますから〜」
「ーーーーヒィっ」
何故だろう………小鈴が怖く感じてきた。とって食われる羊の気分になってきたわ。あ、いや、小鈴は神狼の仙人だったわ。
「あ、あの、小鈴さん?その?……」
「バル様。私はバル様に言っていなかったことがありますの」
「な、なんや?」
ウチは嫌な予感をしながらも小鈴に聞いた。
「私、そろそろ………………発情期なのですよぉ。ねぇ、バル様ぁ?そろそろ、子供について話し合う時がきましたよ?」
小鈴はそう言うと酷く妖艶な笑みを浮かべた。その顔を見た瞬間、ウチの《危機察知》が最大レベルを超えた警報を打ち鳴らした。
獣人や獣が混ざっているといわれている亜人には、一定周期で強い性衝動で自分が保てなくなる期間があるそうだ。それは人それぞれやけど………狼系の獣人は絶倫らしくて、つまりそういうこと。
「あ、あの、小鈴さんや。ちょっと落ち着こうや。そんなこと言われてもウチは出さんぞ?」
「大丈夫ですよ。その気にさせる為の調教でもありますから〜♪」
「全然大丈夫じゃないぃ!?ちょっ、ま、たす、助けてーー!嫁に犯されるーー!」
「人聞きの悪いことを言わないでくださいよバル様。単に愛し合う者同士のスキンシップで種族繁栄の大事な儀式でありませんか………ねぇ?」
畜生っ!なんて正論や!
いや、そりゃあ、小鈴との子供は欲しいよ?でも無理矢理は嫌やし。何より、今ここで屈しると一滴残らず搾り取られる予感がする。
というか確実に搾り取られるっ!!
どうにかして逃げようと見渡した時、買い物袋を抱えたカグラが見えた。
「あ、カグラぁ!!助けてくれやー!!」
「………バルザックと小鈴さん?一体何を…………あぁ、なるほど。そうですか、では」
とカグラはウチらを眺めてなにか納得した様子でツカツカと歩き出した。
「待て待て待て待て待て!?助けてぇ!?ウチこのままだと、全部搾り取られてまうんや!!」
「それは羽目外した貴女の自業自得では?それに、貴女も子供欲しがっていたではありませんか。愛の育みはいいことです」
この状況見てそんなアホなことを吐かしよるこの岩女ッ!!
「やはりそうですわよねカグラ様!しかし、バル様はあまり乗り気ではない様でして………」
「そうですか。では………こうしますか」
カグラはそう言ってウチの腹に手を当てて、何か魔法を発動させた。するとウチの身体はポカポカとしてきた。
「な、なにしたんや?カグラ」
「貴女のアレを活性化させました。ついでに強制的に発情期にさせましたので、これならば事を成せますよ」
「まぁ!ありがとうございますカグラ様!」
「テメェ!?ウチを殺す気かぁ!!!」
1番の常識人だと思っておった奴が裏切るとはッ!あ、ま、まずいっ、本格的にぃ、き、来たぁ………
息も上がって、全身が燃えるように熱くて、心臓の鼓動は早鐘のように頭の奥にガンガン響いてきて、今にも卒倒しそうな程の熱がウチを蝕んでいる。
「それではそろそろお暇させていただきます。この礼はいつか後ほどに」
「いやいや、気にしないでください。私は恋する乙女の味方ですよ」
意識が朦朧とするなかでウチは小鈴に担がれて離宮へと戻った。というか小鈴。一体どこにそんな力あるんや?
そうして離宮へと戻り、部屋に入った後に縄が解かれた。その時既にウチの身体は臨戦態勢となっておって頭が回らなかった。
そして、小鈴はどこからか首輪を出してウチにつけた。すると身体の力がガクンッと落ちた感覚があった。
「それはルナティア様に作っていただいた対象の身体能力を使用者と同じくらいまで落とす魔導具です。つまり、バル様は今は私と同じくらいの身体能力しかありません。……………………さぁ、はじめましょうか?」
小鈴はそう言って着ている服を脱ぎ始めた。そして、どこからか木箱を出して中からいわゆる"大人の玩具"を取り出した。木箱にルナ謹製の刻印がされてるからあのピンクの玩具はルナが作ったんやろ…………。
というか、そういうのは自分の嫁相手に作れやッ!?なんちゅうもん作ってんやあののじゃロリ娘ぇ!!
「ウ、ウチは、屈しにゃい!たとえ、愛しゅるお前の、ちょうきょう、でもぉ!」
ウチは自分の矜持を守る為に情けなく吠えた。叫ぶ声も茹ってぐしゅぐじゅな頭と絶え間なく襲ってくる甘く蕩けるような疼きのせいで呂律が回らず、変な喋り方となっている。
快楽に身を委ねたい。けど、そうすると、ウチは取り返しのつかないところまで堕ちてまう………。そ、それだけはダメだ。ぜったいにダメだ……………
………………体が熱くて、疼いて、疼いて仕方がないんやけどっ、ま、まじゅい、あ、あたまがおかしくなりゅ……………
「…………ふふっ♪まずはその頑固なところからですね。大丈夫ですよ〜、身を委ねればそれでいいんですから♪怖くありませんから〜♪……………はぁ、ほんと可愛らしいですねぇバル様♡」
「あっ、ちょ、どこさわって、まって、こすず、まって、ニャアアアアアアアア!?!?ーーーーーーーーっ♡」
そっからは記憶が途切れ途切れとなった。
何故、こうなったかはわからない……………。
けど、後悔はしていない。
…………………規制、かかりませんよね?




