傲慢の鉄杭聖女
お久しぶりです。体調も良くなり再開します
〜sideスルース〜
てぃあ姉の証言にあった場所に行くと木々が薙ぎ倒されて大きな道ができていた。それは何か巨大なものが引き摺りながら移動したことになる。
「…………あの感じ、やっぱダイミョウやな。ということはカグラもこの世界に来てるわけやな」
『そうだね。かぐ姉のことだから旅行感覚で旅してるんじゃないかな』
ボクとバルはかぐ姉を連れてくる為に一緒に行動している。
なぁ姉達は子供達の世話で手が離せない状態だから必然的にボク達が向かう事になった。
『というかバル。ボクの上で何かしたら小鈴さんに言うからね』
今はボクが《龍化》して、バルを背中に乗せて空を飛んでいる。その方が早いし。ちなみにボクの《龍化》は墨の色をした全長600メートルの東洋龍で周りには水墨画の雲を纏っている。
「わかっとるわ。まったく、昔は可愛いかったのになぁ〜〜………。よく外で遊んだやないかぁ」
ボクの頭の上に胡座をかいているバルはそんな事を言った。ちなみにボクとバルは家が近所でよく遊んでもらった。
『いつの話だよ。というか嫌がるボクを無理矢理連れ出して引っ掻き回したのはバルじゃないか。お陰で酷い目にあったよ』
「何事も経験が大事や。楽しく遊ぶのはいいことやで!にゃはは!お前さんはいっつも家に引きこもっているからチビのままなんや。少しは運動をしなされ」
バルの物言いにちょっとムカついたボクは頭を揺らして足場を不安定にする。するとバルは慌てた様子でボクの頭にしがみついた。
「危ないやないかッ!落ちたらどなんすんねん!」
『別に落ちれば良かったのに…………と見えてきたよ』
しばらく進んでいると巨大な山が動いているのが見えてきた。
岩石の様な外殻を纏う直径30メートルはあるだろう4本の脚をゆっくりと交互に動かしてズルズルと地響きを響かせながら進む富士山の様な山を背負ったヤドカリで前の方に付いている2本の鋏は凄まじい大きさの盾に見える。そして、そのヤドカリの宿のてっぺんには可愛らしい猫の旗が靡いていた。
「…………確かにダイミョウやな。んで、あの頂上におるのはカグラやな……………あ、気づいた」
バルは自前の望遠鏡でオオヤマトリデガニ…………ダイミョウの宿のてっぺんを見てそう言った。ダイミョウはしばらく進むと大きな地響きを響かせてその場に停止した。
そして、
『キィィィンッ!!!!』
宿のてっぺんから何かが射出されて空中で破裂して甲高い音を響かせた。それはかぐ姉がよく使う合図の音だった。
『あそこだね。じゃあ行くよ』
「おうわかったッニャギャア!?」
ボクはそのまま合図のあった場所に向かった。
***
合図のあった場所に行くとそこには1人の女性がいた。
背はなぁ姉と同じくらいでダークブラウンの前髪が目元まで伸びたセミロングで体型もなぁ姉と同じくらいの抜群なスタイル。服装はメイド服調のゴツい鎧で両腕には全長2メートル半程の縦長の大筒に大楯を取っ付けたパイルバンカーを装備している。
そして、頭には岩の様な見た目の2本角が背には明らかに飛ぶ為とは思えない歪な形の翼が腰には丸太の様な尾が生えていた。
『久しぶり〜かぐ姉〜』
「久しぶりですねスルース。とバルザック」
ボクが呼ぶとかぐ姉は笑って返してくれた。
彼女こそが『七大罪龍』の最後の1人、"傲慢龍"カグラ・グランフォールである。
「な、なぁ?早くウチを降ろしてくれん?首が絞まって苦しんやけど……………」
とさっき落ちて頭を掴んだ状態でぷらぷらと揺れているバルがそう言ったからボクは放り投げた。
「ニャギャアアアッアブッ!?」
バルは放物線を描いて落ちていき、かぐ姉がキャッチした。
「相変わらずスルースのバルザックに対する扱いは雑ですね」
かぐ姉はバルを降ろしながらそう呆れ笑顔で言った。ボクは《龍化》を解いてかぐ姉の側に降りた。
「別にそれの扱いはどうでもいいよ」
「酷いッ!?少しは情をくれや!!」
バルはそう叫んで抗議した。
「はははっ、仲がいいですね。雰囲気からすると私が最後でしょうか?」
かぐ姉はボク達の会話を笑いながら見た後、そうボク達に聞いた。
「そうやで。みんな揃っておるぞ。毎日平和で気楽なもんやで。今回はお前さんを迎えに来たんや。一緒に来るか?」
「そうですね…………。元々、皆さんを探す目的で移動してましたし、行きましょう」
「決まりだね。それじゃあ、行こうか。……………………この子どうする?」
ボクはかぐ姉に下のダイミョウをどうするか聞いた。
「問題はありません。ーーダイミョウ!飛行モード!」
かぐ姉がそう叫ぶと地鳴りを響かせてダイミョウの側面から4枚の透き通る羽根が出てきた。そして、ブゥーンという音を立てて宙に浮き出した。
「「………………はい?」」
山が虫の様に飛ぶという非常識なものに言葉を失った。というかダイミョウって飛べたんだ…………
「さて、行きましょう。行き場所はどこですか?」
「「…………………………」」
予想を斜め行く光景にボク達は理解が追いつかなかった。




