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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
枯水墨の仙龍
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仙人と魔王の邂逅

ボクはスルース。今、仕事を探してる。



魔王国エンフィエルは地球の地中海辺りと同じくらい1年を通して穏やかな気候みたいだから昼寝にはうってつけ。



るな姉とりゅう姉は昨日、アリシアさんに怒られていた。なんでも公然の場で高純度な砂糖大量生産(イチャコラにゃんごろ)したみたい。



前まではそんなことなかったけど、なんかこっちに来てから過激になったみたい。



まぁ、仕方ないか。



るな姉が消えたあの半年間、りゅう姉は見ているこっちも辛くなるくらい憔悴していた。それだけるな姉はりゅう姉にとって大切な人だったんだ。



るな姉曰く、この世界へ転生して再会したときのりゅう姉は普段なら考えられないほど甘えん坊だったみたい。体を密着させて、存在を確かめる様にしていたみたい。



最近では落ち着いたみたいだけど、それでもそばにいる事が多い。2人とも心の底から笑っているのがよくわかる。



まぁ、それはそうと。ボクは仕事を探している。



働かざる者食うべからずというからボクも仕事がしたい。なぁ姉は騎士団の訓練、るな姉は魔導具の修理と開発、りゅう姉はアリシアさんの補助と食堂での料理、バルは小鈴さんの補助と酒造。みんな何かしらやっている。



「それでここに来たというわけか?」



ボクは仕事を斡旋してもらおうとアリシアの執務室に来ている。



「そう。何か仕事頂戴」



「スルースは一体何が出来るのだ?」



「薬剤制作と絵描き。薬剤は主に漢方薬と仙薬。絵は墨で描くもの」



ボクがそう言うとアリシアさんは少し考える様な仕草をした。



「ボクのは体の不調を内側から根本的に治す治療法。冷え性とか肩こりとか治せるよ?」



「ならばそれで頼む。最近、疲労ポーションの効き目が悪くなってなぁ…………」



はははっ……と力無く笑うアリシアさん。



「…………どこか悪いなら鍼治療とかする?」



ボクはアリシアさんにそう提案した。



ボクの実家はそういうのを生業としている為にやり方はわかる。それに『この身体』が全て覚えている。



………免許?ここは異世界だよ?



「……………鍼治療?なんだそれは?」



「腰痛、膝痛、頭痛、神経痛などの痛みを伴う症状に、眼精疲労、肩こりや足の疲れに効果あるボク達の世界だと一般的な治療法だよ。………やる?」



「……………………いや、遠慮しておく」



アリシアさんは長く悩んだ末に断った。



「そうかい。なら、気が向いたらでいいよ。今回はサービスということでこれあげる。在庫の肥やしになっていた薬だけど、効果はあるよ」



ボクはその薬を置いて執務室から出て行った。




***




〜sideアリシア〜



スルースが出て行った後、私はひと息ついた。



(急に仕事をくれと言われてもなぁ………)



別に仕事口はいくらでもある。しかし、彼女らがもたらす物はあまりに危険だ。



ナザールとリュウエンはまだいい。バルザックとルナティアは今のところ自重してくれている。しかし、スルースはまだわからない。



スルースは少なくとも何千何万年と生きた文字通りの人外。そんな彼女が作り出す物はどんなものかなんて考えただけで恐ろしい。



私はスルースが置いていった瓶詰めの丸薬を眺めた。ゴマ粒の様な見た目の赤色の丸薬が大量にあり、一見すると普通の薬に見える。



しかし、私の第六感が告げている。



『これはやばいやつだ』と。



「…新人騎士の訓練、終わったぞ」



とここでナザールがスルースと入れ替わる様に入ってきた。



「あぁ、ナザールか。少し良いか?」



「…なんだ?…………その机の上にある丹砂のことか?スルースから貰ったのか?」



「あぁ、そうだが…………一体なんなんだこれは」



私は嫌な予感をしつつ、私はナザールに聞いた。



「丹砂は仙人が作る最高峰の仙薬の材料だ。その丸薬を3粒、一日二回、40日飲めば、腹の中のあらゆる病が良くなる。これを百日間飲めば、肌や骨もすこやかになり、これを千日飲めば死神も遠ざかり、天地が相調和し、日月が相望むように、自由自在に変化でき、光明を持つようになる。つまり、飲めば飲むほどあらゆる病に罹らなくなり天寿を全う出来る霊薬だ」



…………………………………………はぁ。



「そんな貴重な物を軽々しく出すなッ!」



「…そんなに貴重な物か?ありふれた材料だぞ?」



私が声をあげて抗議するもナザールはなんとも思っていない様子だった。



「ハァァァァーーーーーーー………………………」



もう、魔王辞めたい…………



「…疲れてる様だな」



「誰のせいだ!というか貴女がやれよッ!私なんかよりもずっと魔王らしいだろ!」



そう、ナザールのほうが魔王らしい。というか魔王そのものだ。



随分前に宮廷画家達が今いる『七大罪龍(セブンズドラゴン)』を描きたいと言ってきて、それにルナティア達は応じた。



皆が思い思いのポーズを取って絵に収めた後、最後にナザールの番となったとき、ナザールは何処からか玉座を出してそれに座りポーズを決めた。



黒を基調とした宝石と何かの骨で装飾された豪華な玉座に寄り掛かり、足を組んで肘掛けに肘をついてリラックスするその様子はまさに王者の風格。



それに加えて冗談の様な美貌に冷たい笑みを浮かべ、体型は女性ならば誰でも羨む様な抜群のスタイルを惜しげもなく晒す扇情的な漆黒のドレスアーマを着ているのだから魔王具合が更に加速する。



その日、宮廷画家達の筆が1番早く進んだのは言うまでもない。



「…それは断る。私に(まつりごと)は向いてない。それに面倒だ」



ナザールはそう言って執務室から出て行った。



残された私はというと。



「……………………………………………寝るか」



もう仕事する気も無くなり、自室に帰って寝ることにした。




次回からは私の中で1番濃いキャラを出す予定であります

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