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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
平和?な日常
36/120

式典

それからバルザックは見つからず、式典の日になってしまった。



というかあいつ何処ほっつき歩いてんだ?まぁ、おおかた地酒を探して買ってるかケモミミ娘をナンパしてるんだろうが。



式典は日本でいう神楽舞の様なもので彼らが信仰している海神龍様に毎年選ばれた巫女が海に向かって舞を捧げ龍の嫁となる…………という建前の婚約式である。



昔は海神龍様がいたらしいが、今では見かけなくなり、有力者同士の婚約式になった様だ。そして、今回の式典の主役は銀鉄さんの娘さんと獣王国の3大武家の御子息だ。



銀鉄さんの娘さんの名前は小鈴といい、雪の様に真っ白でふわふわな銀髪に翡翠色の瞳を持った狼耳の美少女だった。病弱らしくその身体は透き通る様に白く力を加えれば折れてしまいそうだった。それでも彼女が纏う雰囲気によりより美しく感じた。



一方で御子息の方は見た目は至って普通の線の細い男だ。たぬきの獣人で一見すると優しそうな青年だが、彼の周りには精霊が一切寄り付かない。リュウエンも嫌悪感を露わにして顔を顰めたほどだ。



精霊は人の内側を無意識に見通す能力を持っている。それを使って自身の契約者を見つけるのだ。綺麗な内面を持つ者を精霊は選び、相性が良く気に入れば契約をするというわけだ。



つまり、何が言いたいのかというとこの御子息は見てくれだけの内面クズである。



「ほれリュウエンや。そんなに顰めっ面すると可愛い顔に癖がついてしまうぞ?」



「ルナちゃん、これは条件反射的なものだから無理。ルナちゃんもアレ喰べるの嫌でしょ」



「確かに進んで喰べようとは思わん匂いじゃったからな」



式典の最初の方に互いの血を杯に入れていたが、その時漂ってきた匂いは少し食欲が落ちるものだった。喰えなくはないが喰ったら3分の2の確率で吐くレベルだ。



「というか、今思い出したんじゃが、あのたぬきの家紋、コトリバコが入っていたからくり箱に刻印されておったわ」



「…………うわぁ、真っ黒じゃん。なんでそんなのと婚約するんだろう」



「政略結婚じゃな。なんとも難儀な事じゃ…………」



「…そこの2人。コソコソするな」



物凄く小さな声で話していたらナザールに小声で注意された。



「「すみません」」



だって、こんな堅苦しい式典つまらんし。



そんなこんなで式典は最終段階。



巫女が海神龍様を呼び出す為に特別な笛を吹いて、舞を踊る。いわばこの式典で1番の見所だ。



今年の巫女の小鈴さんは一瞬思い詰めた様な表情を浮かべると直ぐに澄まし顔に戻り、笛を吹いた。



ピィィィィィィィーーーーーーーー………………



大海原に響く甲高い笛の音が木霊していく。参加者の顔には何度も見慣れた光景になにも感じていない様子だった。そして、小鈴さんは笛を仕舞うと舞を始めた。



その時、



『ーーーーーーーーーー……………………』



海から返答があった。鯨の様な静かで良く響く声に会場はざわついた。



「「「…………………………」」」



その声を聞いて私は酷い頭痛がした。隣を見るとキラキラとした笑顔でどす黒いオーラを発しているリュウエンと残業疲れで項垂れている様に見えるナザールがいた。



鯨の様な鳴き声が響くと同時に海から無数の水飛沫が巻き起こり、真っ直ぐこちらにやって来て何かが飛び出してきた。



それは鰐の様な外見をした青い海竜の群れだった。しなやかで強靭な鱗に身を包み、水掻きがある長い前足には5本の鋭い爪、頭頂部から尻尾の先まで生えた大きな背ビレを揺らしている。その姿はまさしく海を渡る覇者であった。



そんな海竜が2桁台やってきたのだ。会場はパニックになった。



そして、



『グゥルァアアア!!!!』



海竜達は一斉に咆哮を上げた。



『ーーーーーーーー……………………』



海竜の咆哮に応える様に先程の鯨の様な鳴き声が響き渡ると海の水が大きく盛り上がった。月明かりに照らされて空へと昇る大きな水風船の様な海水の中を優雅に泳ぐ巨大な影が1つ。



水棲の東洋の龍様な外見で体長は300メートルは超え、夜空に浮かぶ月を連想させるような純白の体躯を持っていた。4つの前足や尻尾はヒレ状になっており、喉元から胸部に掛けて重装な鎧の様な外殻に覆われており、背には絶えず発光を繰り返している何千本ともなる触手を生やしていた。そして、亀を彷彿とさせる翡翠色の瞳を携えた頭部には大樹の様な枝分かれをした角が生えていた。



その海龍が現れると海竜達は一斉に頭を下げて、平伏の姿勢を取った。



誰もがその圧倒的な姿に放心状態の中……若干3名、つまりは私たちは己が武器を構えて……海龍はゆっくりとへたり込んでいる小鈴さんへと顔を近づけて、



『やっほー♪小鈴ちゃん!約束通りウチが来たで!』



特徴的な喋り方の今まで行方不明だった奴の声で喋った。



「ーーーーーーーーえ?ま、まさか、バルザック様?」



『そうや!3日前の夜に一緒に語り合ったバルザックやで〜♪覚えててくれて嬉しいわぁ』



その海龍はバルザックであった。





次から別視点となります



最近ネタ切れ気味で少し投稿が遅れるやもしれません

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