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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
冥海の海賊女帝
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幕間〜船を喰らう朽ち果てた船〜

風が吹き荒む大荒れの大海を一隻のガレオン船とそれを追尾する様に数隻の船が突き進んでいた。



ガレオン船には国旗など所属する国を示すものがなく、追尾する数隻の船には魔王軍を示す逆十字に蝙蝠の翼の旗がついていた。



その追尾されているガレオン船は一見すると普通の船に見えるが、"積荷"が問題であった。



その船は人間の国でも有名な奴隷商直下の船だ。



船内にはエルフ、獣人、亜人、果てには魔物であるハーピーなどの子供達が捕らえられている。



人間たちは表では奴隷制度を廃止しているが、魔族に対してはそれは適応されていない。ひどい矛盾である。



奴隷商の船を追尾する魔王軍海上保安の船の指揮を取っている鮫の亜人の船長は一向に追いつけないことに歯噛みしていた。



彼は海流を操るスキルを持っている。普段ならそれを駆使して奴隷商の船などを捕らえているが、最近はどういうわけか海が彼の願いを受け付けてくれない。



まるで、別の何かが邪魔をしている様な………。



とここで風が吹き荒む海に聞きなれない音が聞こえてきた。



ぐぐもっているが重厚で往々しい音が辺りに木霊する。それはいくつもの音色と重なり曲となっていた。



この場にいる者達はその音が海の底から響いてきていることに気づいた。…………そして、この場にルナティア達がいたならその音の正体に気づき、こう言っただろう。



"これはパイプオルガンの音だ"と



そして、音は次第に大きくなり、海面を吹き飛ばしながら巨大な何かが浮上してきた。



それはやけに朽ち果てた巨船だった。



船全体はドス黒く変色してフジツボなどに覆われており、帆も朽ち果てて役目を果たしてなかった。船首は剥き出しとなった船体の骨組みを鰐の口の様な形状に変形させていた。マストの先端には2メートルはあるだろう黒地の旗に龍の頭蓋骨に交差するカットラスと古式短銃が描かれていた。



そして、何より目を引くのはその大きさだった。



そこそこ巨大である筈の奴隷商のガレオン船が小さく見えてしまうといえばその大きさがわかるだろうか。



まるで船そのものが生きている様な不気味さを放っている船内部からは絶えずオルガンの音色が響き渡る。



その巨大な船は奴隷商のガレオン船と向かい合わせになると鰐の口の様な船首を大きく開き、船の両側を手足の様に細かく引き裂いて動かしてそのまま風に逆らって進行した。それはまるで船を丸ごと喰らおうとする化け物の様だった。



当然、それを避けようと人間たちは慌てて舵を切るが、何故か船はその顎門に誘われる様に進行していった。



そして、目と鼻の先までの距離になった時、巨大な船は喰らい付くようにスピードを上げてガレオン船を飲み込んだ。



木材が破壊される音に爆薬が爆発する音が響く中、オルガンは演奏をやめなかった。



その巨大な船は奴隷商の船を喰らい尽くすと魔王軍の船には目も暮れず、再び潜航した。

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