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転生した鏖殺姫は今日も仲間と共に楽しく暮らします  作者: 骸崎 ミウ
冥海の海賊女帝
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祭り〜2

短めであります

天命祭。



それは邪神イスチーナを讃え、死者の魂を弔う為の祭りである。賑やかな模様事が好きなイスチーナの為に最初の2日間は騒ぎ立てて最後の日に死者の魂を模した灯籠を天に飛ばすという祭りである。



そしてこの祭りの際には学園が一般開放され学生達の発表の場となる。今回も何事もなく始まるだろうと予想されていたが、事件が起きた。



魔法の被体として調教されていたブルファイティング・トードが突如として暴れ出したのだ。ブルファイティング・トードは非常に温厚であり、滅多に人に危害を加えないことで有名だ。



そんなブルファイティング・トードが暴れ出した事により生徒達は避難を余儀なくされた。



ブルファイティング・トードは名前にブルファイティング(闘牛)とある様に一度暴れ出すと手がつけられないのだ。



そして、1人の男子生徒が逃げ遅れてしまった。ブルファイティング・トードは彼を標的とし、今にも突進をかまそうとしている。



一触即発な空間に1人の少女が現れた。



足まで伸びた血が飛び散った様に見える赤銅色のまだら模様のある絹の様は銀髪に目端が下がった眠そうで十字の模様のある金眼、引き裂く様に爪痕が入った左頬と小さな鼻に八重歯が印象的なあどけなさの残る顔つき。体型は随分と細身で余計な肉を削ぎ落とした様な印象を受ける。



頭には捻じ曲がった剣の様な4つの角に、真っ黒な骨格のみを残した4対の翼と2メートルくらいの尾が生えており、黒地の布1枚で作られた異国の服を纏っていた。



「ほれほれ、随分と興奮しておるのぉ。なにか嫌な事でもあったかの?」



古風な喋り方をした少女はブルファイティング・トードに向かってゆっくりと歩み寄った。



周囲の者は危険だと叫んで少女を止めた。しかし、少女はその忠告に意を返さずにブルファイティング・トードに近寄った。



するとブルファイティング・トードに異変が生じた。



怒りで染まった目には理性の光が戻り、赤熱していた角も冷えて黒くなっていた。そして、少女が近寄ると同時に身を低くして後退りし、小さく甲高い声で鳴いた。



それはまるで自分よりも強大で危険な存在に怯えている様に見えた。



「ほぉ……我が何者かわかるかの?流石は争いを好まぬ温厚な魔獣じゃ。なに案ずるな。別に取って食いはせんよ」



こうして学園内で起きた騒ぎは鎮静化された。




***




突進してきたらどうしようかと思ったが、どうやらブルファイティング・トードは本能で私が格上だと認識したみたいだ。



おかげでキューキューと媚びる様な鳴き声をしている。



「なんか急に大人しくなったね」



とここでリュウエンが私の側に駆け寄ってきた。



「本能で我の種族を理解した様じゃ」



「そんな特性あったんだね。美味しいお肉のイメージしかなかったから意外だよ」



「……………………リュウエンや。それは言わん方が良かったぞ?ほれ、可哀想なくらい青くなっておる」



リュウエンの言葉がわかるのかブルファイティング・トードは元々青い体色を更に青くしてプルプル震えていた。



「…………それでルナちゃん?この子が暴れていた理由はわかったの?」



気まずくなったのかリュウエンは露骨に話を逸らした。



「あぁ、それは虫歯じゃな。おそらくは与えられた餌の中に菓子でも混ざっていたのだろう。ほれ、口を開けるのじゃ。今取ってやるぞ」



私がブルファイティング・トードにそう言うとブルファイティング・トードは素直に口を開けた。



私がすっぽり入りそうな大口にはサメの様な歯が生えており、下奥歯の一角が黒くなって溶けていた。



「あー………これは痛いのぉ。『痛覚鈍感』…まぁ麻酔代わりにはなるか」



ブルファイティング・トードの痛覚を鈍くさせた後、私は《アイテムボックス》に仕舞ってあるエンマを取り出して虫歯を引っこ抜く。引っこ抜いた箇所は血は出ておらず、代わりに小さな歯が埋まっていた。これは種族特性だろうか?



「取れたぞ。どうじゃ?調子は」



「クワァ!クワァ!」



ブルファイティング・トードは嬉しそうにそう鳴いた。…………なんかサメやらガチョウやら色々と混ざっている様な気がするのは気のせいだろうか?



「はいはい、今度は気をつけるんじゃよ」



「クワァ!」



元気よく鳴いたブルファイティング・トードに満足した私は飼育員の教師に預けてリュウエンとのデートを再開した。

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