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街の散策〜2

私は街の賑やかな喧騒はあまり好きではありません。人が多ければそれだけ私の場合、神経を多く使いますから。



元々、皮膚障害モドキで痛みなど肌で感じ取る感触などに人一倍鈍かった私にとって、日常生活を送ることさえも大変でした。



私の場合ですと手先の感覚がまったくありませんでしたので1番困るのが物を掴むことでした。今は触手で補助を行なっていますので見た目だけはまともな感じです。



ただ、見える方にはかなり異様な光景に見えますが。先日のアリシア様とメアリーとの食事の時にも驚かれましたから。



「………………さて、いつまで付いて来るので?」



私は先程から後をつけていた方々に向かってそう声をかけました。普通の人間でしたら気付けない様な離れた位置から異様なほど静かな足音でしっかりと私の後をつけておりました。



この事から相手様はその道のプロということがわかります。時間的には私が路地裏に入ってからですね。



「ほら、早く出てきてくださいな。えーと、男性が2人に女性が1人。服装は暗い物陰に潜みやすく黒一色の方々?懐にはいつでも取り出せる様に短剣を仕込んで──」



そこまで言うと裏路地の奥から音も無く黒尽くめの方々が現れました。全員、目が赤く僅かに漏れ出る魔力はこの国の者……つまりは吸血鬼のものでした。



「ご機嫌よう?貴方達は昨日の無粋な覗き魔のお仲間でして?」



「…………」



お相手様は無口な様です。しかしその視線にはやはり強い敵意が籠っていました。そして、お相手様方は何も言わずに短剣を取り出して私に鋭い殺気を向けました。




「───あらあら?なんとも野蛮な方々ですわねぇ?」




この懐かしい(・・・・)感じ(・・)に私は少しばかり胸が高鳴りました。あちらの元の世界ですと私は裏の世界では名の知れた名家の令嬢でしたから、身代金目的や後継争いで攫われたり命の危機に晒されたりとありました。



普段から小さな箱庭に閉じ込められてつまらない日々を送っていた私にとって、数少ない楽しい物事のひとつでした。



──まぁ、そんなのはお姉様との楽しい思い出の前では色褪せてしまいますが。



……とにかく今は絶好の機会です。何故なら消えても(・・・・)誰も気にしない(・・・・・・・)獲物(・・)がやって来たのですから。




「さぁ、来なさいな。──────私が喰べてあげるカラ」




私がワラッテそう言えばお相手様方は急に殺気を窄め、顔色を悪くしました。そして、そこから感じる気配は『怯え』



………ふむ。少し脅した程度で感情を出してしまうなんて三流ですね。



まぁ、元より吸血鬼の味は気になっておりましたから、さっさと喰べましょうか。



私は自身を構築する触手を一部解いて彼らを逃げられない様に包み込みます。『影移動』系スキルを所持しているかもしれませんので念入りに隙間なく。



『影移動』というのは影と影を繋ぎ合わせて道にして潜り込むスキル。つまり、影を切り離してしまえば意味がないのです。



ゆっくりと確実に包み込んで………一気に圧縮させます。



お相手様方はろくに抵抗もできずに潰されて肉片と臓物がミンチにされてどれが誰のかわからない状態になり、呑み干します。




お姉様は口からの摂取を好みますが、捕食系スキルは少しでも対象に触れていれば発動します。また捕食系スキルには種類があり、『蟲喰い』や『竜喰い』などその名前に対応した種類を捕食した時にボーナスステータスが付きます。



ちなみに捕食系スキルを極めた上で特定の高難易度クエストをクリアし、更に今まで獲得した捕食スキルを全て捧げる事でお姉様の固有スキル『暴食の骸』を獲得できます。



ゲームだと捕食しても味を感じませんでしたが、こちらの世界だとしっかりと感じます。これは触手で捕食しても感じます。



さて、肝心の吸血鬼のお味はというと………




「…………あまり美味しくありませんね」




肉食系の生き物は臭みが強く食べられたもんではありませんが、吸血鬼も似たような感じですね。



と味に浸っていた時、



「───やはり喰べたかティアムンク」



後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来ました。



振り返るとそこには綺麗な眉を僅かに顰めたアリシア様がおりました。

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