郷土料理〜2
カタキムルバスの郷土料理はやはり美味しいかったです。少々、酸味が効いていて好みが分かれる様な味ですが、私は好きです。
「しかし、肉が多いですわね。理由があるので?」
「元々この辺りは土地が豊かではありませんでした。食べるものといえば荒れた土地に強い芋類か野生動物や魔獣でしたのでその名残です。今では植物の品種改良や肥料の改善などで野菜が食卓に並ぶ様になりましたが」
「なるほど……。先程、この赤色は元々血を使っていたというのは血液から栄養を取ろうと考えたのでしょうね。吸血鬼云々関係なく」
「おそらくはそうでしょう。ただ、吸血鬼本来の特性が薄れている今となってはあまり血の需要がない事ですが」
とメアリーはワイングラスを傾けながらそう言った。確か、この世界の吸血鬼は基本的に翼が生えているだけで他は殆ど人間でしたっけ?
「長い歴史の中で吸血鬼の血が薄れていると?」
「はい。私の様に先祖返りをする者もいますが極少数です。一応、血が濃いはずの貴族階級の者も力が使えない者が大多数です」
とそう語るメアリーは特に嘆いた様子を見せていません。彼女にとって血の薄れはそれほど重要な事では無いでしょう。
────私の一族も似た様な感じでした。
私の一族……この身体ではなく本来のあの世界の身体の一族は代々とある呪術に精通しその代償として私が患っている病を発症しておりました。
化学が進歩した時代に何をオカルトチックな事をと思いますが、実際にあるもの。魔法も妖術も怪物も超能力も全て秘匿され続けていました。
長い歴史の積み重ねにより私という人間としては欠陥品が生まれてしまったわけです。
「───ほんと血が濃い程良いと言われたりもしますが、それは薄い人にとってのもの。血が濃い者にとっては呪縛やたちの悪い呪いに過ぎませんからね……」
「……………先生?どうかしましたか?どこか具合でも?」
とどうやら独り言を呟いてしまった様です。メアリーが心配そうに覗き込んできました。
「いえ、問題ありませんよ」
私はそう表面上は取り繕って笑顔で返した。
「しかしフロイライン。国全体の吸血鬼としての力が弱まってきては何かしら支障が出たりしませんの?」
と私はそうメアリーに聞きました。
「今のところは特には。力の弱り方は非常に緩やかですし。ただ、古株の貴族が色々と騒いでいます。ほら、以前お姉様と先生に伝えた長老達です」
「長老?………………………………………あぁ」
長老と言われて一瞬誰のことかとわかりませんでしたが、メアリーと始めて出会った時のあの変な輩のことだと合点がいきました。
「お前忘れていただろ」
とアリシア様から呆れた目を頂戴いたしました。
「仕方ないではありませんか。記憶のメモリーは有限ですわ」
私の記憶のメモリーの内容は2割日常と研究データ、あとは全てお姉様との輝かしい思い出であります。
お姉様との出会いから添い寝に夜伽に混浴に狩りにとあらゆる時間を余す事なくしっかりと記憶しております。
あぁ…………あの頃のお姉様との時間は最高ッでしたぁ…………
「先生らしいといえばそうですね。ところで先生は明日はどの様な予定で?」
「私は街の散策にでも。御二方は?」
「私達は挨拶周りだな。私は久しぶりに顔を合わせる知人もいるし。ティアムンクは案内とかは必要か?」
とアリシア様が答えてそう私に聞いてきた。
「いえ特には。私は知らない土地をゆっくり見ながら探索するのが趣味ですので」
「そうなのか?気をつけ……お前の場合は過剰防衛しない様にだな」
「わかっておりますよ」
こうして私とアリシア様とメアリーの食事会は終わりました。
少しばかり宣伝を
気休めに書きました。好評であるなら続くかもしれません。
『仙天狐の付き人〜傀儡使いの月梟が自らの居場を見つけるまで〜』
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