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到着してから

〜sideアリシア〜


久しぶりに帰って来た城は私が出て行った時とほとんど変わっていなかった。



まぁ、変えようにも非常に古く歴史のある建物だから下手に変えると見栄えが悪くなるしな。



「ーーーちゃんーーお姉ちゃん?」



と私が考え事をしながら歩いていたらメアリーが私に覗き込む様に話しかけて来ていた。



「っ、あぁ、すまない。どうしたメアリー?」



「なんだかボーっとしてたから。やっぱり長旅で疲れてる?」



そうメアリーは心配そうに聞いて来た。



「…………確かにそうかもな。さっき、ティアの影がいくつかに見えたから疲れてるんだろう」



というか影のみならず気配まで朧げになっていたしな。メアリーの言う通り疲れてるのだろう。



「……いや違うお姉ちゃん。それは見間違いじゃないよ。先生の影に5人くらい誰かいた」



とメアリーが私の言葉を否定する。



「それにその5人………多分、吸血鬼。それもかなり高位の」



「………………そんなにか?」



「うん………間違いない」



メアリーがそう言うならそうなんだろう。



吸血鬼の国カタキムルバスに住む吸血鬼は皆元を辿れば1人の吸血鬼に辿り着く。その吸血鬼は"始祖"と呼ばれ、かつて魔境だったこの場所を開拓し、国を起こしたのが始まりだと言う。



長い歴史の中でその吸血鬼の血筋も薄れており、今では蝙蝠の翼が生えた血を好む殆ど人間になっている。もっとも、最近の若者は血をあまり飲まない為、いよいよただの翼が生えた人間になって来てるが。



メアリーはそんなほとんど人間の吸血鬼の中で先祖返りを果たした者で魔法に長け、血を操り、身体を霧に変え、竜人に勝る身体能力を身につけている。



そんなメアリーが言うのなら私が見たものは気のせいではないというわけだ。



「お姉ちゃん。先生の影にいた者達に覚えある?」



「………あるにはある。彼女は異界の吸血鬼を大勢配下にしているからそのうちの誰かを潜り込ませたのだろう」



とふとティアが行きの馬車の中で話してくれた"源祖"なる存在が思い浮かんだがすぐに頭の隅に追いやる。



いくらなんでも自分と同格の最高位の吸血鬼を影に仕込ませるなんてそんな事はしないはずだ。



「……異界の吸血鬼。一体どんな吸血鬼なんだろう?先生に聞けば教えてくれるかな?」



「ティアなら教えてくれるはずだと思うが………。あちら側の吸血鬼は随分違うと言っていたぞ。どちらかというと魔物寄りらしい」



「へぇ……そうなんだ」



と至極興味なさげになっているメアリー。



…………と視界の端で何かが横切った影が見えた。



「…………?」



少し気になり振り返るもそこには何もいない。



「………………気のせいか」



そうして私はメアリーに案内され、客室で旅の休息を取ることにした。


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