私が鍛える話 パート⑬
大変遅くなりました…
本当にすみません…
これは、遅いとかいう問題ではないのでは…??
やられたヤンネ君たちは、地面にぶっ倒れつつ、教官からお優しいお言葉を頂いていた。
要約すると、「お前らさっきの演習なに見てたんだクソガキども」みたいな感じ。
何故だか私のほうが悲しい気持ちになってきたよ…
ヤンネ君たちは教官の話を聞いて分かったような分からなかったような曖昧な反応だった。
大丈夫なんだろうか。そんなんだと本当に役に立たないぞ?
「さて、少し休憩をしてから、最後は全員でキリヤさんを捕まえましょうか」
教官はそう言って、私にもお水とかタオルとかを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ。やはりお強いですね。僕もお手合わせ願いたいくらいです」
「あはは…教官は騎士の仕事はどうされているんですか?」
「僕は主に教官としての仕事をしていますよ。有事の際は騎士として騎士見習いを指揮する隊長になります」
なるほど。そりゃあせっかくの戦力を遊ばせておくわけにはいかないもんね…
私は教官に同情の眼差しを向けた。
…こいつらまとめなきゃいけないんでしょ?大変ですね…
私の視線に気づいたのか、教官は苦笑した。
「僕からしてみたら、彼らはまだ可愛い方ですよ。シェリエくんが騎士見習いにならなくて良かったと心底思っています」
「…あははー…」
うーん!全くもって、私もそう思います!
なんて言えなかったので、乾いた笑いを浮かべておいた。
15分程度の休憩を終え、最後に全員で…となるはずだったのだが、ヤンネ君が不服の声を上げた。
私と一対一で戦いたいんだと。
周りに人が居たから本当の実力を発揮できなかった、一対一でやれば私なんぞ直ぐに捕まえてみせる、と。
そんな感じのことを丁寧に言っていた。
お前…さっき私にあっさりやられてたくせに…
教官は面倒臭くなったらしく、私に明日も鍛練の協力を申し込んできた。
どうせ明日も来るんでいいんですけどね。
ということで、一対一の戦いは明日に持ち越されることとなった。
最後に全員で私を捕まえる…ということで、なんと教官も混じって私と騎士見習いたちが鬼ごっこをすることになった。
「では…先程はキリヤさんが気を利かせてくださったので、包囲した状態から始めました。ですが、本来は侵入者を発見、追跡、包囲、捕縛といったように流れがあります。僕が指揮を取るので、発見したところから始めましょうか」
そんな感じで、鬼ごっこになってしまったわけである。
騎士の人たちに迷惑にならない程度に修練場を走り回った。
私はナイフを飛ばしたり、わざわざ包囲されてみたり、包囲網を破ってまた逃げたり、あえて襲いかかってみたり、遊ん…修練に協力した。
結果として、時間切れになってしまったので私の勝ちである。
んー、惜しかったんだけどなぁ。みんな体力ないから感覚を掴んだ時にはヨレヨレだったんだよね。
一人、息を切らしていない教官が私にお礼を言って、騎士見習いの鍛練は終わったのであった。
ハルトの護衛を騎士のみんなや7強たちに任せ、私はみんなに尋問されてぐったりしていたヴェルトを回収して孤児院へ戻ってきていた。
そして、帰って来た私は何故か正座させられていた。
「シスター!聞いてますか!?」
「…うん…聞いてます…」
絶賛、叱られ中なのである。
孤児院の中でも年長者であり、子供たちの面倒を見てくれている少年、キール君が大変お怒りなのである。
昨日連れてきた二人の少年の怪我が酷いもので、どうして怪我させてきたんですか、と怒られている訳である。
あ、ヴェルトはキール君の怒りを買う前にさっさと退散していきました。
薄情者め!!(人のこと言えない)
「ちょっとやり過ぎちゃったんです…手加減しようとは思ったけど久し振りだったから…」
「言い訳はいいんです!シスターなら魔法でも魔術でも使ってなんとか出来たはずなんじゃないですか?」
「うぐぅ…」
出来なくはなかったのだ。
ただ、そうすると魔法に頼りきりになってしまうし、身体を鍛えたかったから魔法や魔術は使わない方針だったのだ。
確かに怪我を負わせてしまったことに罪悪感はあるので、キール君のお説教をしょんぼりしながら聞くことにした。
普通にやらかしたってのもあるんだけどね!
キール君は一通り怒り終わって落ち着いたのか、大きくため息をついた。
「シスターが規格外なことは分かっています。でも心配しない訳じゃないんですよ。シスター自身のことも周りのことももっと気をつけてください」
「うん…」
私がぶっ倒れて一週間寝込んだりしたことや、記憶喪失になったことは子供たちにとても心配をかけていたようだ。
キール君の後ろで、子供たちが心配そうにこっちを見ていた。
申し訳なく思い、キール君や子供たちにちゃんと謝った。
「ごめんなさい」
「…謝るならロイとカイにお願いします」
「ロイ?カイ?」
「シスターが酷い怪我を負わせた二人です。今は部屋で寝てると思います」
「そっか。二人のことよろしくね、キール」
「孤児院の一員になるなら僕の弟ですから。じゃあ、行きましょうか」
「え?どこに?」
「食堂です。シスターも院長も久し振りに揃ったんですよ。今日はみんなで食べましょう!」
キール君は般若の表情から一転、子供らしい嬉しそうな楽しそうな笑みを浮かべて私を立たせた。
やっぱりかわいいなぁ。キール君のこの表情は何を放り出してでも見る価値があるよ…
孤児院の子供たちのこういう表情は年が上になると見れなくなってしまうので、貴重なのだ。
キール君や他の子供たちと一緒に食堂へ向かう。
「(うーん…おかしい、寒気が…)」
そして、なぜか、食堂に近づく度に悪寒が強くなる。
だが、楽しそうな子供たちに行きたくないとは言えない。
悪寒といっても殺気とかそういう感じではないので、余計に行きたくないとは言えないのだ。
食堂は何故か静まり返っていた。
まだ中には入っていないが、変な予感がすごい。
なんか怖い…
子供たちに促され、渋々扉を開けた。
『シスター!おめでとう!!』
と、そんな大勢からの大きな声がしたと同時に食堂の中に居た子供たちに飛び掛かられた。
倒れそうになったが、後ろにいたキール君や子供たちが支えてくれたのでなんとか持ち直した。
飛び掛かってきた子供たちは口々に「おめでとう」「やっとくっついたんだね」「院長ヘタレだから」「シスターも大概だとおもうけど」やらとお祝いなのか悪口なのかよく分からないことを言ってくれた。
子供たちの他にもエレナさんとトーマや7強と7強の奥様方、その子供たちも居て、奥様方は籠を抱えてその中から花びらをまいている。
女性陣はともかく、7強までいてニヤニヤしてるのはなんなの…
ハルトの護衛は?
騎士が全員付いてる?アレンもいるからちょっとなら大丈夫?
…そう…
あと、花びら何処から持ってきたの…
え?アンナから送られてきた?あぁそう…
「キリヤさん、おめでとうございます」
「エレナさん…アリガトウゴザイマス…」
「先生たちがわざわざ知らせてくれたんですよ!だから今日はお祝いしようって、子供たちも準備をがんばったんです」
エレナさんや子供たちに誘導され、沢山の料理が並ぶテーブルに座らされた。
そのテーブルには出来立ての料理の数々が並べられ、子供たちが「これは私が作ったの」とか「これお手伝いしたよ!」と教えてくれた。
それが…
それが、嬉しすぎて、声が出せなかった。
子供たちが私を喜ばせたくて、ここまでしてくれたことが分かるから、言葉が出せなかったのだ。
「…うん…ありがとう…みんな、私のために沢山料理作ってくれて…すごく、嬉しい…」
私がやっと捻りだしたお礼に、子供たちは「やったー!」と歓声を上げる。
大切な人達に祝って貰えることが、こんなに嬉しいだなんて、予想以上だなぁ…
それから、少し遅れてヴェルトが食堂に入ってきて、子供たちに同じように飛び掛かられ、私のところまで連行されてきて、私は久しぶりに孤児院のメンバー全員と楽しい食事をすることができたのだった。
キリヤが幸せそうですっごく私も幸せです!(笑)
これから、たまーにラブ度が上がる話が出てくるかも?しれないので、いつもよりラブ度が高くなったら一応前書きに注意を入れようとは思います!
でもこの話一応ファンタジーだし、甘々なのは私が難しい(書けない…)ので、砂糖を吐くほどにはならないかと…
まぁヴェルトだし!ヘタレだから!




