私が鍛える話 パート⑩
長い上に、本筋にあんまり関係ないお話です。
騎士団について細かぁく書いてます。
アルテルリア王国騎士団。
6つの部隊からなる、王都を守る精鋭部隊である。
現在では第一から第五部隊まで各40人、第六部隊は30人と、全部隊230人しかいない、選別された精鋭なのだ。
第一部隊は、騎士団長を隊長、副団長を副隊長とする、貴族中心の部隊だ。
ただ、この部隊の貴族は実力が高く国王に忠誠を誓う、古参の者たちが多い。
第二部隊は、平民出身のシェリエを隊長に、貴族出身の副隊長を擁する、貴族と平民の混合部隊である。
彼らはシェリエが選抜した騎士たちであり、実質、騎士団の最大戦力と言える。
第三部隊は、隊長、副隊長、そして部隊全員が貴族であり、貴族としての意識が高い部隊とも言える。
ついでに、副隊長はロウ=フレイム…ドラゴン討伐で付き添いに名乗りを上げた人物であり、ハルトの同級生、レナの兄である。
第四部隊も、貴族だけで構成された部隊である。
しかし、第三部隊と比べると爵位が低い家から来ている者が多いからか、貴族意識はそう高くはない。
第五部隊は平民だけで構成された部隊である。
平民から選抜された騎士はほとんどがこの部隊へと配属される。
第六部隊は、女性騎士の部隊である。
貴族も平民も女性ならばここへ配属される。
他国からの女性の要人や、女性の王族の護衛を行うことが多い部隊であり、マナーなどの動きの綺麗さも求められる。
そして、各部隊の隊長は幹部であり、平の騎士よりも強い権限を持つ。
第六部隊は別だが、一から五の部隊はその順番で権限の強さが決められている。
なので、シェリエは騎士団内で三番目に権限を持つ立場である。
何が凄いって、シェリエはそれを実力で成し得たことだ。
それなりにコネがあったとは言え、平民で、しかも孤児である彼がこの地位まで上り詰めたのは偉業としか言いようがない。
しかもキリヤのせいで騎士団長にさせられそうになっているため、彼の偉業はまだまだ続いていくと思われる。
さて、シェリエの紹介はこれくらいにしておいて…
今、密かに騎士団やその関係者が話題にしていることがある。
騎士団への入隊は、戦闘力を見る模擬戦、知識を測る筆記、教養を試すマナーの試験…と、3つの試験が執り行われる。
この3つ全てに高い結果を出した者が、騎士見習いとして騎士団の下に位置する形で採用される。
この3つの結果がめちゃくちゃ良ければ、そのまま騎士になることもなくはない。(シェリエの場合はこれだった)
ただし、見習い騎士になったからといって、必ずしも騎士になれるとは限らない。
見習い騎士になると、厳しい訓練が待っている。
戦闘力を鍛えるために基礎体力の向上を目指し筋トレの毎日。
また、対人戦と魔獣戦では戦い方が変わるので、その指導もされる。それだけでなく、戦術も勉強させられる。
戦術は座学と実践と両方行われ、知識を高めるための座学も同時に行われている。
もちろん、マナーなどの教養も叩き込まれる。
この時点で半数以上の見習い騎士が脱落していく。
その、貴族も平民も等しく振り落とされる期間を、涼しい顔をして乗り越えていく者たちがいた。
そう!孤児院の子供らである!
騎士団は、基本的に貴族社会。王都の守備だけでなく、王宮の警護を行うためである。
なので、入隊するのは圧倒的に貴族が多い。
マナーなどの教養を、平民が身につけているわけがないからだ。
身につけている者は、大体が幼い頃からマナーを勉強させられる金持ちや商家の人間で、その彼らですら貴族の動作とは比べ物にならないのである。
平民の者といえば実家が本当の金持ちか貴族との付き合いがあるような家の出身しかいない。
そんな特殊な集団に、平民…しかも、孤児である彼らが入隊したことは多くの人間を動揺させた。
シェリエだけとか、2、3人ほどであればそこまで驚きではなかっただろう。
しかし、今や15人である。
これで、見習い期間にとてもしごかれている…とかだったら、多くの者が「所詮孤児だったか」と終わっていたのだが、彼らは涼しい顔をして、それらを乗り越えていったのである。
まぁ、彼らからしたらトーマやキリヤの特訓より余程楽なので涼しい顔をしていたというわけなのだが。
下手な貴族よりも美しい所作、高い戦闘力、しかも世渡り上手とくれば、彼らが話題になるのも無理はなかった。
騎士になってしまえば在籍中ももちろんのこと老後も年金が出るので生活に困ることはない。
彼らは、王宮の下働きの者にとって、めちゃくちゃ良い条件を持った集団になってしまったのであった…
しかし、彼らを快く思わない人間も勿論いる。
貴族の、変にプライドの高い連中である。
やめておけばいいのに、くだらない喧嘩を吹っ掛けるのだ。
そういうのは大抵返り討ちにされる。
…なぜ、そんな話をしたのか。
理由は、今の私の現状にある。
貴族連中に喧嘩を吹っ掛けられ返り討ちにする事件が多発したことで、騎士団の幹部が頭を抱え始めたのだ。
「というわけで、保護者面談をはじめま~す…」
「…キリヤ殿?突然どうされたのですか?」
「あ~、団長。キリヤはたまに意味が分からないときがあるので気にしなくていいですよ」
騎士団長さんとシェリエ、私は場所を移して話し合いをすることにした。
ハルトについてはロウさんやその他多くの皆さんと修練場で楽しく遊んでいる。
7強がいるからスパルタだぞ!
「ひどくない?私普通だよ?意味わからなくないよ!」
「本音は?」
「端から見たらヤバイやつだなぁ…」
「自覚あるんだ」
「…話を進めさせてもらってもいいか?」
ホセさんは大きくため息を吐いて、私たちの漫才を止めた。
私たち3人がいるのは修練場の横にある小部屋だ。
面会などに使われているらしい。
「キリヤ殿が親代わりとして彼らを育てたと聞きました。あの戦闘力と知識量、そして教養の高さはとても素晴らしい。騎士団内でも高く評価しています。…ですが、彼らの血の気の多さは一体どうなっているのですか」
初っ端からお説教モードである。
「…あの子たちはどのような喧嘩を吹っ掛けられたんですか?」
「主に平民…孤児であることを揶揄されたようです」
「両者から詳しく内容を聞きましたか?」
「…貴族の方からはあまり聞けていません。彼らの話しでは、孤児であること、孤児院のことを悪く言われたようでした。…お分かりかと思いますが、当然王宮内もそして騎士団も貴族社会です。貴族の方にどれだけ非があっても彼らを庇うことはできません」
「あ、庇う必要はないと思います。騎士団をクビになってもあの子たちは引く手あまたですから。すぐに次の仕事見つけるでしょうし。うーん…まぁ、ほとんど貴族の方が悪いとしか言いようがないんですけど…」
「うんうん。俺の時に懲りとけばよかったのにな」
シェリエが騎士になったときも、それはそれは面倒ないじめがあったらしい。
とはいえ、シェリエにとってはそよ風が吹いた…?くらいのものだったようだが。
「ほっといていいと思うんですが…あの子たちなら何とでもするでしょう」
「…平民出身は彼らだけではありません。他の者に影響が出ているんです」
「平民だから差別を受けていると?別に私は貴族社会を否定するわけじゃありませんけど…陛下が決めた能力主義の集団を否定する貴族が間違ってるとしか言いようがないのでは?」
「…ならば、せめて彼らに穏便に済ませるよう言っては貰えませんか。我々幹部が何と言っても大人しく聞いたフリをするだけなので」
なんて奴らだ。
多分それトーマの教育だよ!
あいつならやりかねない!
「一応言っておきます。あ、でも、孤児院のことについて悪く言われたなら私にはどうしようもありませんよ?」
「何故ですか!?」
「だって、あの孤児院は賢者様が経営してるんですよ。それに、彼らは賢者様に育てられたんです。なのに、孤児院について悪く言われたということは、賢者様を悪く言われたということと同義です。どんな内容で、彼らが怒っていなかったとしても、報復しなければ賢者様の名誉に傷が付きます…と、教えられていると思うので…」
「…そうか…賢者様の…くっ…周りに彼らが賢者様の孤児院出身と知られると、賢者様が孤児院を経営していることが周知されてしまう…しかし、周知せずにいればこのままだろう…優秀だが面倒臭い…!!」
ホセさんは頭を抱えて唸り始めた。
さすがに可哀想になってきたので、私はあの子たちに、「報復は誰にもバレないようにやるんだよ…」と指導しようと決めた。
あ、シェリエは悩むホセさんを見てとても同情した目を向けていました。
ホセさん可哀想…
騎士団に入隊できる平民はマジで優秀です。
貴族の比じゃありません。
というか、貴族は比較的簡単に見習い騎士になれますが、平民にはまず厳しいです。
スタートラインが違いすぎるので…
普通に生きててお辞儀の角度をミリ単位で計られることとか先ず無いですよね…
あと、他国の言葉を1か国以上話せなきゃいけません。
日常会話レベルじゃなく、現地人の学者レベルで…
意味わかんないですよ…
貴族は、最初からそういう教育を受けますが、平民はそんな教育受けません。
なので、孤児院の子たちはマジで優秀です。
トーマが血反吐出させるまでやるので…




