私が鍛える話 パート⑨
ひさしぶりにスラスラと書けたのでテンション上がって投稿します!
あ、でもちょっと短めです…
修練場の端には、ベンチのような背もたれのない只の木の台があり、そこにアレンとハルトを座らせる。
私も座るように促されたが、周りから視線を感じたので首を横に振った。
アレンは軽く肩をすくめて、改めて私たち全体を見渡した。
「さて、みな知ってると思うが、ハルトが狙われている。相手はハルトを洗脳して操るつもりのようだ。キリヤの弟であり、未来の魔術師団長を担うことになるだろうハルトを守るためにも、力を貸してもらうことになる」
ついつい私と7強はアレンの頭を撫でそうになり、「あ、やべっ」と言った感じに手を戻した。
アレンはそれを見て、めちゃくちゃ怪訝な顔で見ていたが、私たちがやることはいつも変(だと思われている!)なので、無視することにしたようだ。
「…それで、だな。今日、そして今後問題が解決するまでハルトは騎士団内で警護を受けることとなる。シェリエはもう一人選抜して二人でハルトの側で付きっきりで警護してくれ。ホセ殿はその支援をお願いする。ハルトは次期侯爵でもあり、あー…あと、うん…その…賢者様の義弟になる、だから…ちゃんと守るように…な?」
…え、待って…アレンに裏切られた、だって…?
ハルトはそれを聞いて立ち上がり、私の肩に掴みかかってきた。
…現在の私の目は死んだ魚の濁ったやつより酷い。
「ね、姉さん…?」
「……ワタシ、ケッコン、スルトカ、イッテナイ、ヨ」
「だがお互いに思いを伝え合ったんだな!?」
「……」
「なんてことだ…」
ハルトは私の肩を掴みながら俯き、プルプルと震え始める。
どうやら知らなかったようだ。
7強が教えていると思っていたので、なんだかちょっと申し訳なくなった。
「…あの、ハルト…?」
「騎士団長殿!シェリエを使って孤児院出身の騎士の者を集めるんだ!急げ!」
ハルトが顔を上げてそう大声で叫ぶ。
その時、浮かべられていた表情は満面の笑みであった…
一瞬輝きを戻したかに見えた私の目はもう一度光を喪ってしまったのだった…
まぁ、多分、7強から通達されていたのだろう、孤児院出身の騎士たちは既に私の周りを包囲している。
騎士団長さんは気づいていなかったらしく、ぎょっとした顔で周りを見渡している。
感じた視線もこれだったけどさぁ…!だからってさぁ…!!
私はジリジリと間合いを詰めてくる子供たちに大人しく捕まるべく、両手をゆっくりと上げた。
「…もうお嫁に行けない…」
「…まぁ、その…キリヤはもうヴ…賢者の嫁だろう…?」
修練場の端で膝を抱えていじける私はミゼンに慰められていた。
というより、慰めてくれるのがミゼンくらいしかいないのだ。
そのミゼンも天然だから、ちゃんとした慰めが出来ないので、実質私は誰にも慰められていないのだが。
周りには孤児院出身の騎士たち15名が7強とシェリエと楽しそうに話している。
その中にハルトとアレンも混じり、最初は恐る恐るだったものの、今や楽しそうに盛り上がっている。
あの後、逃げるのを諦めた私は掴みかかるように押し寄せた騎士たちに胴上げされ、降ろされたかと思えば何故か一人一人に握手を求められた。
騎士になっていた15名のうち3名は女の子で、その子たちから何故かプレゼントを貰った。
中身は怖くて、開けてないし、聞けない。
「…怖い…うちの孤児院怖い…」
「…こんなことになってるのは自業自得なところもあると思うぞ?」
「…ついにミゼンが慰めてすらくれなくなったんだけど!?」
ショックが大きすぎる。
「ううっ、酷い…別にそんなに何も変わらないよ?なんでそんなに大事にするかね?」
「…賢者とキリヤはなんというか…見てるこっちがイライラしてくるぐらい、もどかしかったからな。みんな安心したんだろう」
「…喜んでくれるのはこっちとしても嬉しいよ?でもやり方があるじゃん…」
「…(キリヤの影響だと思うんだが…)」
ミゼンが黙ってしまったので、私は盛り上がるみんなを見た。
7強も、シェリエも、騎士のみんなも、ハルトもアレンも楽しそうだ。
…祝福してもらえるって、とても素敵なことだ。
こんなに多くの人が喜んでくれるのは、私とヴェルトがみんなに受け入れてもらってるから…好きだと、大切だと思ってもらっているからだろう。
…なんて、幸せなことか。
「…キリヤ?」
だから、この幸せを妨げるモノを私は許しはしない。
「…ミゼン」
「何だ?」
「早くバカを捕まえてみんなで盛大にお祝いしよっか。会場は孤児院にしてさ、料理沢山用意して。三日間くらいお祝いしよう。それくらいやれば遠くから来てくれる人も一日くらいは参加できるよね」
「…いいのか?大変なことになりそうだが」
「なんか、こんなに喜んでもらって、楽しそうにしてるんだよ。これって凄いことだなぁって思って…賢者様はちょっと嫌がりそうだけど、きっと参加してくれるよね」
私の視線に気づいたみんなが、こちらへやってくる。
だから、私はミゼンに言ったことをみんなに伝えるために、立ち上がった。
みんなにお祝いのことを伝えると、驚かれたが、賛成してくれるようだった。
主に、女の子3人は私の衣装についてあーだこーだと盛り上がっていた。
「お祝いはハルトの件が解決したら準備を始めるので、みんな全力でハルトを守るんだよ」
「分かった!シェリエせんせ…隊長の支援は私たちがやる!ね、みんな!」
女の子の1人が周りにそう呼び掛けると、「おー!」と全員から意気込まれる。
シェリエはそれを見て苦笑いしながら、騎士団長さんをちらりと伺う。
騎士団長さんは呆れていたが、わざわざ選別するのも面倒だったのか、頷いていた。
「じゃあ、3人一組でみんなには手伝って貰おうかな。俺はロウと組んで基本的にハルト様をお守りする。俺とロウが動けない時とかに一組ずつ対応して貰う。あ、水鏡の魔術使えるのって何人いたっけ?」
「俺ら7強はみんな使えないな」
「えーっと…俺ら騎士は3人だけ使えます」
「じゃあ3人は分散させて…他はキリヤから伝言を飛ばせる紙を貰おう。7強一人と騎士二人で3人一組を作って。余った騎士は俺とロウと組んで貰おうか。…よろしいですか、殿下」
シェリエの確認に、アレンは頷く。
騎士団長さんにも確認をとり、8組が交代でハルトの警護を行うこととなった。
なお、ハルトが襲撃されるまで、ハルトは騎士団で寝起きすることとなる。
それに合わせて7強も騎士団に泊まり込みになる。
私も毎日顔を出すつもりである、
ふはははは!!
万全の対応だぜ!!
さぁ、ハルトを狙うクズめ、来るならとっとと来くるといい!!




