私が鍛える話 パート⑧
大っっっっっっ変おひさしぶりです…
一年近く更新してなくて…
ほんと、お前なぁ!!!…って感じです。
すみません…
少しずつ執筆を開始しているので、ゆっくり待っていてください…
ヴェルトによって国王の執務室に転移した私たちは、そのままもう一度転移しようとして捕まってしまった。
ヴェルトは国王とアルベルト様、宰相のナタエルさんに、私は王妃様とエリーゼ様とアレンとマリオット様とマリアナとアリスに捕まった。
なんなの、ねぇ。
あと私のほう人数多すぎじゃない?
「ホントなんなの!?」
「色々と詳しく聞かなければならないことがあるだけよ」
「何もないから!」
「キリヤになくてもわたくしたちにはあるのよ」
私は必死で彼女らの拘束を解こうとしたのだが、強すぎて勝てなかった。
「うう…分かった。分かったから…先にハルトについて話そうよ…」
「言質を取ったわ」
「ていうか何なの、怖い。ホントなんなの?」
「10年も待たされた私達の身になりなさいよ。盛大にのろけてくれないと困るわ」
「困らないよね!?誰も困らないよ!!!?」
「困るわ」
「困ります」
「困るわね」
私の渾身の訴えは一蹴されてしまった。
しょんぼりと肩を落として、促されるままソファに座る。
ヴェルトは国王やアルベルト様に追及されていたが、死んだ目をして黙っていた。
ヴェルトも私の横に座らされている。
体面のソファに王家の面々が座り、他の人はみんな周りに控えた。
「…はぁ…それで、ハルトについてですけど」
「あぁ、そうだな。ハルト君だが今は騎士団のところにいるよ」
「騎士団?」
「7強が来ているからな。騎士団に混じって修練している、ということになっている」
国王がそう答えた。
「後から俺も参加することになっている。さすがに皇太子の目の前でやらかすような奴だとは思わないが…」
「そこで何もやらないような奴じゃハルトのことまた狙ったりしないでしょ…」
「…まぁ、そうなんだよな…」
アレンが深くため息を吐く。
分かります。なんでみんなこう、捕まりやすく最初から表に出ていろいろ事を起こしてくれないんだろうね?
それならこっちも簡単に裁けるんだけどなぁ。
「とりあえず、私はアレンと一緒に鍛練に参加します。賢者様はここでみんなと待機してて。何かあったら助けてください」
「…キリヤさんを助けなければならないような機会は、我々にはどうしようもないのでは…」
「賢者様いるから大丈夫ですよ!」
そして、私はアレンを連れて執務室を出た。
出ていく際、女性陣がヴェルトを囲んでいるのが見えた。
…ごめん、ヴェルト…
質問責めは私の代わりに君が受けてくれ…!
アレンと騎士団の修練場に行くと、どこから出てきたんだ…というくらい人がいた。
その中心部へ向かうと、案の定7強とハルトとシェリエ、しかもミゼンがいる。
騎士のみなさんはアレンを見て慌てて頭を下げたが、アレンは軽く手を振って挨拶を止めさせていた。
「…いやぁ、さすが7強…」
「…なぁ、もしかしてこの国の騎士団全員を7強だけで倒せるのか?」
「…あははー、そんなことはきっとない…よ、うん…」
私はアレンからの質問を視線を地面に落とすことで答えた。
…多分できる。どころか、7強の半分で騎士団全員を押し留めて残りで王様暗殺とかできるレベル。
あの7人は絶対やらないけどね!
あらためて7強に視線を向ける。
7強の一人、シリウスが真ん中で誰かと戦っていた。
私はなんとなく見たことがあったが思い出せず首を傾げる。
なので、横に立つアレンに聞いた。
「あの人誰?」
「…お前な…ホセ殿も可哀想に…彼はこの国の騎士団長のホセ=メイヤール殿だ」
「騎士団長…この国の権力者の一人じゃん!あ、そう言えばドラゴン討伐の話が出た時にもチラッと見たことあるかも?」
「絶対あるからな!というか、向こうはキリヤのことめっちゃ覚えてたぞ!?」
「え、やだぁ。私ちゃんと話したことないよ?」
私のその言葉にアレンは頭が痛いとばかりにこめかみに手を当てた。
実際私が覚えてるのは、ロウさんの評価を聞いた時のことでそれくらいしか心当たりがないのだが…
そんなに覚えられるようなことってやったっけ?
ううーん、と私が悩んでいると、アレンがいない側の肩を叩かれた。
「姉さん!」
「キリヤ」
肩を叩いたのはハルトだった。
ハルトの後ろにはミゼンと7強の残り6人もついてきている。
ハルトたちはアレンを見つけて恭しく挨拶をしようとして止められて、なにやら世間話を始めた。
私はそんな彼らを観察する。
ミゼンは一応男爵家の婿養子だからか、仕立ての良い白いシャツと黒いズボンを履いていた。
7強はギルドメンバーらしく使い古された、しかし丈夫そうなシャツとズボン、そして肘宛と胸鎧を身に付けている。
ハルトはレベルが違う。上質な…多分、絹だな…シャツとこれまた上質な羊毛のズボン、その上に金糸が編まれたローブを羽織っている。
…さすが次期侯爵様だぜ…
私はハルトをじろじろと観察してうんうんと頷く。
「…どうしたんだキリヤ」
「…こんなにも身分で着る服が変わるのかぁ、と思って…」
しかも悲しいことに、この中で一番みすぼらしいのは私の格好だろう。
何枚も重ね着をしているとはいえ、麻の布…多分市場で一番安く売ってたのを値切りに値切って買い叩いたやつだ。
7強はSランクだし、他は貴族だし…ヴェルトだって、賢者様だからそれなりの格好をさせている。
…あれ?私一応女だったよね…?
とは言え、私の服は全て魔法が掛かってるから普通に買ったら金貨払うレベルなんだけどな!
「姉さんも侯爵家に来てくれれば服なんて沢山作ってもらえると思うが…まぁ、姉さんは孤児院を経営してるんだしそれくらいの格好でいいんじゃないか?高いの来てたら逆に怪しいしな」
「いや、むしろキリヤは自分で服作れるだろ。誰も着れない最上級のやつ」
「だよな。キリヤが言っても嫌味にしか聞こえねぇよ…」
7強は、自分達が着てる服を見てなんだかシュンとしていた。
「7強のみんなが一番マトモなんだって!ハルトはお坊っちゃま感あるなってこと」
私が慌てて6人を慰め、そう言うと、みんなの視線がハルトに集まる。
そして、みんな「…確かになぁ…」と呟く。
だって、一応修練しに来てるんだよ?
なのにあの格好…本人は汚れるとか気にしてなさそうだし…
と、そんなことをやっている間に、シリウスと騎士団長の戦いが終わったようだった。
シェリエが審判をしていたようで、シリウスと騎士団長の視線がシェリエに行く。
私たちも話すのをやめて、シェリエに視線を向けた。
「勝者、騎士団長ホセ殿。異論があれば伺います」
声が上がらなかったので、誰も異論はないようだった。
騎士団長はシリウスに握手を求め、シリウスは困惑の表情で恐る恐る握手をしていた。
そして、騎士団長はぐるりと首を回して私たちを見る。
ひぇ、なんか怖い。
私はとりあえず愛想笑いを浮かべておく。
握手を終えたシリウスはさっさとこちらに来ていて、私の頭を無言で撫でて7強の輪の中へ戻っていく。
騎士団長はシェリエに一言二言声をかけ、そしてこちらに物凄いスピードでやってきた。
隣のアレンがドン引くレベル。
そして、アレンの前に来てひざまずき、深く頭を下げる。
それを見てアレンは顔を上げるように言った。
「殿下。挨拶が遅れ申し訳ありません」
「い、いや。気にするな。7強と試合をしてたんだろう。しかも勝ったようだな」
「いえ。あれはシリウス殿が手加減をしてくださったからです。本来なら私など簡単に倒されていたかと」
「そうか?ならホセ殿も私と一緒でまだ成長できるということだな」
私はアレンのその発言を聞いて、思わず頭を撫でそうになった。
私だけじゃなく、7強も思わずといったように手を浮かべて「ああ…」みたいな顔をしている。
アレン、王太子になってめっちゃ中身成長してるんだもの…
騎士団長さんも、アレンの発言に、少し驚くとちょっと嬉しそうに笑った。
私たちの様子に気づくことなく、アレンは騎士団長に立つように言い、私を見た。
「1度会ったことがあるだろう。ホセ殿、こちらが賢者様の付き人のキリヤだ。キリヤ、こちらは騎士団長のホセ=メイヤール殿だ」
会ったことがあるとはいえ、お互いにちゃんと自己紹介したことがなかったので、私も騎士団長も頭を下げ合う。
「賢者様の付き人のキリヤです。改めてよろしくお願いします」
「アルテルリア王国騎士団団長、ホセ=メイヤールです」
「…とりあえず、ホセ殿とシリウスは休憩を取るといい。ついでに、ハルトについて少し話すか」
アレンがそう言ったので、私たちは修練場の端へ移動することとなった。
…なんか、めっちゃ騎士団長から視線を感じる…




