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再会と旅立ち その2



 「出迎えが出来ず申し訳ありません」

 コールマンがユリウスに頭を下げた。

 「いや、こちらも急にきたし、そもそもこっちから伺う手はずだったのだが、すまない」

 ―――えーと、その手はずが狂ったのは、私がそもそもの用件を忘れてしまってたからですか? そうですか。

 ミズキは慌てて一緒に頭を下げた。

 子どもたちは突然現れた自分たちの領主を見上げて、ぽかーんとしていた。

 ここで生まれた子どもたちは、この土地で一番偉いのはコールマン様だと、生まれたときから教えられている。コールマン様が過不足なく税を取り立てられているので、この街は都外れの田舎でありながら統治が行き届いている。近隣の町に比べても治安もいいし、皆が穏やかに過ごせていた。

 だから村人皆がコールマンを尊敬し敬愛していた。

 そのコールマンだけでなく、いつも自分たちにがみがみ言う長老まで、ユリウスに腰を低くしているのを見て、なんとなくユリウスが本当に只者ではないことを察したのだろう。

 子どもたちが互いの顔を見合わせていた。

 「コールマン様、ご無沙汰しております」

 ミズキが改めて淑女の礼をとると、コールマンはニコニコと頷いた。

 「ああ。君の様子はアルファード様から伺っていたけれど、元気そうでよかったよ」

 ユリウスの父、アルファードとコールマンが学友と言うのは、この村でも有名なこと。ミズキは恥ずかしそうに肩をすくめた。

 「ありがとうございます。ランドルフ大公殿下をはじめ、皆様にはとても良くして頂いております」

 ミズキが言うとコールマンは優しげな笑みを讃えたまま頷いた。

 「それはよかった」

 そう微笑むコールマンにミズキはもう一度頭を下げた。

 「お話の邪魔になるといけませんので、私たちは移動いたしますね」

 そういって、今度子どもたちのほうを見ると、子どもたちに件の木箱を掲げて「さ、みんなは、教室に行きましょう。いいものもって来たのよ」

 にっこりとウィンクして見せた。

 わあと子どもたちが歓声を上げて再びミズキの足元に集う。

 「先生、それなあに?」

 子どもたちが口々にミズキの手に乗る大きな木箱を気にし始めた。

 ミズキはぽんぽんと木箱を叩き

 「皆へのお土産よ」

 にっこりと笑った。

 「おみやげ!?」

 「そうよ。皆が仲良く遊べますようにって、持ってきたの」

 「やったあ!! あけていい!?」

 嬉しさのあまり我先にと手を伸ばし、一斉に木箱に手をかけようとしたので、ミズキは慌て高く持ち上げた。

 「ここではだめよ。お部屋の中で遊ぶおもちゃなの。教室の中でね?」

 「じゃあ、俺が運ぶ!」

 「私にも持たせて!」

 子供たちはきらきらと目を輝かせ、木箱を持とうとした。しかしミズキはやんわりと首を横に振った。

 「これは、危ないし、軽そうに見えるけどとても重いものが入っているから私が運ぶわ。お手洗いを済ませて手を洗って、教室で待っててね」

 そういうと子どもたちはそれぞれにハーイと返事をして、足がもつれそうなほど急いで中に入っていった。

 そんな子どもたちをニマニマ見送っていると

 「どうしたの? それ」

 ノアに尋ねられてミズキは肩をすくめた。

 「今朝、ロンズの町で買ったの。おもしろそうなおもちゃがあったから」

 ミズキはそういって、木箱にかけていた圧縮の魔法を解いた。

 木箱が本来の大きさに戻る。このままでは重いので、もう一度浮遊の魔法をかけて宙に浮かべるとノアが目を丸めた。

 「……本当に目覚めちゃったのね」

 「あんなにも魔法の授業で苦労したのが嘘みたいよ」

 ミズキはやれやれと笑って、肩をすくめた。

 それからずっとやり取りを見ていたコールマンたちに慌しくしてしまって申し訳なかったことの詫びを入れ、

 「失礼します」

 ミズキとノアそろってコールマンとユリウスに頭を下げた。

 ちらりと盗み見たユリウスは、もうミズキを見ていない。どこか遠くを見ていた。



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