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第83話 燃えるエルフの森

「ソル殿……」


 エルフの国を出て、森に行ったところでソル達はエレノアに出会った。


 目の前にあったのはエルフの森の変わり果てた惨状である。燃え盛るエルフの森はかつての穏やかな森とは大違いであった。完全な別世界が目の前に広がっている。


 今のエルフの森はこの世の地獄である。


「魔族が攻め込んで来たんですか?」


「ええ……その通りです。連中は卑劣にもエルフの森に火を放ちました。連中に倫理など解いても無駄でしかありませんが……」


「現状はどうなっておる?」


 バハムートは訊いた。


「エルフの森に火を放った魔族がそれに乗じて攻め込んできました。今、エルフ兵と魔族兵が交戦中です」


「ふむ……見過ごすわけにもいかなかろう。我等はそなた達、エルフに肩入れする為にこの地を訪れたのだからな」


「ありがとうございます。バハムート殿。エルフを代表して私からお礼を申し上げます」


「向かうか。主人(マスター)よ。そして小娘」


「バハムートさん……いい加減、私の名前クレアって言うんだから覚えてよ」


 クレアはため息を吐いた。


「私達、もう仲間じゃないの……それなのに『小娘』ってあんまり」


「ふむ……発情期の雌猫の方が良かったかの?」


「それはもっと最悪だけど!」


「わかった。クレアと呼んでやる。それでよかろう?」


 王族を呼び捨てというのもそれはそれで礼を欠いてはいるが、それでもそれがバハムートにとっては取りうる最大の譲歩というものであった。


「わかったわ……その方が断然マシよ」


「では行くぞ。主人(マスター)それとクレアよ。魔族どもに目に者を見せてやろうではないか」


「それと、闘いを始めるより前に一つ注意事項が……」


「ん? なんだ? 申してみよ。エルフよ」


「魔族の連中の中に、黒い剣士がいるそうだ。そいつがやたら強いという報告を前線のエルフ兵から聞いている」


「やたら強い黒い剣士?」


 バハムートは首を傾げる。


 ――だが、ソルは何となく直観的にある人物を連想した。こういう時に限ってソルの直観は鋭敏に働くのだ。


「恐らく、エドだ。俺の義弟のエドワード……」


「エドが? ……どうして魔族に肩入れなんか」


「あいつはユグドラシル家の人々を虐殺していったとこの前、フレースヴェルグの国王様――要するにクレアのお父さんなんだけど、から聞いただろう?」


「そういえばそうだったの……貴様の弟君は嫌味な奴ではあったが、そんな大量虐殺を行うような快楽殺人者であったようには思えん。気が狂ったか、あるいは別人へと成り代わってしまったかのようだの」


「そうなんだ。恐らくエドは魔族に魅入られたんだ。あの魔人レイに目をつけられたんだよ。エドの心は多分、俺に負けた事で荒んでたから、魔人レイが利用するにはうってつけだったんだ。そうしてエドは魔族に魂を売り渡したんだ」


「ふむ……そうなるのか。辻妻は合うの」


「エドにそんな事があったなんて……いくらエドの奴でも、そんな事するなんておかしいと思ってたのよね。嫌味な奴だけど、そこまで残虐ではなかった。人間らしいところは持っていたもの」


 クレアも驚いていた。


「どうするのだ? 主人(マスター)よ」


「恐らくエドの目的は俺だ。だから、俺がエドを引き付ける。だから、バハムートとクレアはその間に魔族を退けてくれ」


「わかった……では参るとするか」


「うん!」


 三人はエルフの森の最前線へと向かう。恐らくはそこで魔族兵とエルフ兵が交戦している事だろう。


 そして恐らくは黒い剣士——エドもそこにいる。


 交戦は避けられない。今度の闘いは剣神武闘会の時のような、ルールの中にある試合ではない。血にまみれた殺し合いだ。


 間違いなく血が流れる。


 そして、最悪どちらかが死ぬ事になるだろう。


 ソルは一層気を引き締めて、戦線へと赴くのであった。


https://book1.adouzi.eu.org/n9624hc/

【竜騎士】が大ハズレ職業だと蔑まれ、実家を追われました。だけど古代書物の知識から俺だけは最強職だと知っていた。今更、俺の力が必要だと言われても、遅い。竜王として崇められ竜の国を築いてしまっているので


新作ハイファンよろしくお願い申し上げます。

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