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第79話 エルフ城へ向かう

「名乗るのが遅れたな……私の名はエレノアと言う」


 道中の事だった。エルフの少女が名乗った。


「……そうか。俺達は――」


 ソル達は名乗った。名乗られたら名乗り返すのが礼儀というものであろう。


「そうか……ソルとクレアか。二人はまともな人間のようだが、彼女は違うようだな」


 彼女——とは当然バハムートの事であった。


「そう感じるのか?」


「そうだな……何となく人間とは気配が違う。見た目は人間と変わらないが、悍ましい気を感じる」


 流石は優れた叡智を持つエルフであった。独特の感覚でバハムートの正体に気づいているようであった。


「くっくっく。そうであろう? ……なにせ我は竜王バハムートだからの。恐ろしいオーラが滲み出てきているであろうっ!」


 バハムートは胸を張った。


「たまにただの大飯ぐらいの女の子にしか思えない事があるけどね……」


 クレアはため息を吐いた。

 

「なんだと! ここまで巨大な竜の姿で運んできてやってではないかっ!」


 バハムートは主張する。


「それもそうね……あの時は驚いたわ。ただの大飯ぐらいの女の子じゃないって改めて認識した時に」


「そうであろう! ただ食べるだけの穀潰しでは我は決してないのだ!」


「それより……そろそろエルフの国に着くぞ」


「エルフの国に?」


 同じような森が続いているようにしか見えない。国らしきものは見当たらなかった。


「どこにエルフの国があるの? 何も見えないじゃない。今までと同じように、森が広がっているだけ」


「視覚妨害用の結界が張られているんだ。安易によそ者を国に入れない為に。これよりその結界を解く」


 エレノアはそう言い、呪文を唱えた。魔法スキルであろう。


解除魔法(アンロック)

 

 エレノアの魔法により、エルフの国が姿を現す。目の前には木々に囲まれたエルフ達の住居があった。そして奥には城があった。あれがエルフの城であろう。恐らくそこに王族達が住んでいるのだ。


「ここが我々エルフの国だ」


「綺麗……ここがエルフの国なのね」


 クレアはそう感想を言った。エルフは個体数の少ない種族だ。その為、人間のように雑多な印象は持たない。木々に囲まれたエルフの国はどことなくすっきりとしていて、住みやすそうな印象を受けた。


「奥までいったところに、城がある。あそこに王族達が住んでいる。そこまでお前達を案内しよう……そこまでは私が取り次ぐ。だが、それ以降の判断は王族、特に国王様の判断を仰いでくれ」


「わかりました。ここまで連れてきてくれてありがとうございます」


「礼なら私の方こそ言いたいくらいだ。命を助けてくれた礼を……そして、我々エルフの力になってくれる事に」


 エレノアはソル達に礼の言葉を述べた。


 こうしてソル達はエルフ城へ招かれるのであった。


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