表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/125

人物記録④:北条幻庵

Ⅰ. 大陸史データベース『テラ・ペディア』

項目:大賢者ゲンアン

分類: 歴史上の人物(推定) / 黎明の時代 / 賢者


【概要】

 『黎明の時代』に活躍したとされる、正体不明の賢者。

 建国の英雄譚は長らく「サガミノカミ(統治)」「ジキハチマン(武)」「コタロウ(影)」の三柱の物語として語られてきたが、近年の『オダワラ地底遺跡』の発掘調査により、彼らを支えた「第四の英雄」、あるいは「知の巨人」が存在した可能性が浮上している。


【発見の経緯と史実の考察】

 彼の存在が初めて推測されたのは、オダワラ遺跡の最深部、「三本の刀」が安置された石室の傍らから、一本の「樫の杖」と大量の木簡もっかんが発見されたことによる。

 杖の先端には高度な加工が施された魔石が埋め込まれており、木簡には「禄寿応穏」の理念を支える具体的な統治システム、魔導工学の設計図、そして星の運行記録が詳細に記されていた。その署名には、独自の美しい花押と共に「幻庵」の名が記されていた。

 この発見は歴史学会に衝撃を与えた。「サガミノカミ」の奇跡的な政策の多くが、実はこの人物の立案によるものではないかという説が有力視されている。エルフやドワーフの古文書に残る「人間族の老賢者」という記述も、彼を指すものと考えられている。


【後世への影響】

 現代の魔法技術と科学技術の融合(魔導物理学)の始祖とされている。また、彼の残した「知とは、民の安寧のために使うもの」という哲学は、現代のアカデミーにおける研究者倫理の根幹となっている。




Ⅱ. 風魔一族秘伝データベース『事実録』

項目コード: 004

対象: 北条家 長老


【基本情報】

本名: 北条ほうじょう 幻庵げんあん

生没年: 延徳元年 〜 盟約暦四十年

享年: 113歳(満年齢)

称号: 幻庵宗哲、大賢者

神話上の呼称: ゲンアン 


【概要】

 後北条家初代・北条早雲の末子であり、三代当主・氏康の叔父にあたる一門の宿老。転移時すでに72歳という高齢であったが、異世界のマナと固有スキル【神祇感応】が適合し、その知性と生命力は全盛期以上に研ぎ澄まされた。北条家の、そして大陸の未来をその深淵なる知恵で照らし続けた、我らが翁。


【人物】

 常に冷静沈着で、万物の「ことわり」を見抜く深い洞察力を持つ。若い頃は武人としても優れた将であったが、晩年は文化人、技術者としての側面を強く発揮した。

 甥である氏康からの信頼は絶大であり、評定においては常に氏康の隣に控え、国家の羅針盤としての役割を果たした。統治理念『禄寿応穏』の思想的体系化は、彼の功績によるところが大きい。


【主な功績】

内政・医療の確立: 民の声を拾う「目安箱」の設置や、異種族の知識を統合した「小田原医療院」の設立を主導。疫病や飢饉から国を救った。

魔工融合: エルフの精霊魔法とドワーフの鍛冶技術、日本のからくり技術を融合させ、「魔石機関」や「対魔法障壁」を開発。北条の技術的優位を決定づけた。

『沈黙の図書館』踏破: 老躯をおして極北の遺跡へ挑み、世界の真実(大災害のシステム)を解明。この情報なくして連合の結成はあり得なかった。

鎮魂の儀: 災厄の化身『成れの果て』との決戦において、独自の術式で英雄の魂を浄化。物理的な勝利ではなく、魂の救済によって世界を救った。


【風魔特記事項】

我ら風魔衆の報告を最も深く、正確に理解する人物であった。小太郎は氏康様と同等の頻度で幻庵様にも情勢報告を行っていた。

氏康様の死後も、その後継者である氏政様、氏直様を後見人として支え続けた。その知性は最期まで曇ることがなかった。

盟約暦四十年、113歳の大往生を遂げる。縁側で曾孫の世代にあたる子供たちに、故郷の桜の話をしていた最中、眠るように息を引き取ったとされる。その顔は穏やかな笑みを浮かべていた。


【遺訓】

 彼が遺した言葉は、情報の扱いに生きる我ら風魔の指針となっている。

 「真の知とは、ただ知識を蓄えることではない。その知識を、いかにして民の安寧のために使うか。その道筋を、生涯問い続けることじゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ