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人物記録③:風魔小太郎

Ⅰ. 大陸史データベース『テラ・ペディア』

項目:コタロウ

分類: 神話上の人物 / 影の神 / 諜報の祖


【概要】

 『黎明の時代』に活躍したとされる伝説の「影」。建国の祖「サガミノカミ」と武神「ジキハチマン」という二つの「光」を、その影から支え続けたとされる謎多き存在。その出自、能力、そして性別さえも一切が謎に包まれている。


【神話・伝承】

 神話において彼の姿が明確に描かれることは稀である。ある時は鴉となりて空を舞い、ある時は風となりて敵陣に忍び込み、サガミノカミに全ての情報をもたらしたとされる。

 彼の率いる「影の一族」は、獅子の一族の決して語られることのない暗部を担っていたと言われている。帝国との大戦においては、彼らの暗躍なくして連合軍の勝利はありえなかったと、断片的な記録は示唆している。

 サガミノカミが隠居し、歴史の表舞台から去った後も、彼だけはその影に留まり、主君の血脈を永遠に見守り続ける契約を交わしたと伝えられている。


【史実の考察】

 三人の英雄の中で最もその実在が疑われていた存在であるが、オダワラ地底遺跡で発見された『三本の刀』のうち、反りのない異形で漆黒の鞘に収められた「忍び刀」の存在が、彼の伝説に新たな信憑性を与えた。

 近年、オダワラ遺跡周辺で自らを「風魔」と名乗る一族が歴史の表舞台に現れた。彼らは数千年の間、コタロウの密命を守りサガミノカミの血脈を影から支え続けてきたと主張しているが、学会の主流はこれを遺跡発見に乗じた新興組織と見なしている。


【後世への影響】

 大陸の情報機関や諜報員の代名詞としてその名が使われることがある。また、子供たちの間では「悪いことをするとコタロウがさらいに来る」という、しつけのための物語として広く知られている。




Ⅱ. 風魔一族秘伝データベース『事実録』

項目コード: 003

対象: 五代目 風魔小太郎


【基本情報】

本名: 不詳(風魔一党の頭領が代々襲名)

生没年: 不詳 〜 不詳(転移時推定30代後半)

称号: 風魔の頭領、乱波らっぱの長

神話上の呼称: コタロウ


【概要】

 相州を拠点とした伝説の忍び衆「風魔一党」五代目頭領。北条家をその草創期より影として支え続けた最高の諜報・工作集団の長。異世界「テラ・ノヴァ」への転移という未曾有の事態においてその真価を最大限に発揮し、北条家の、そしてこの大陸の「目」と「耳」となった。


【人物】

 その素顔を知る者は、主君・氏康とごく一部の側近のみ。常に黒装束に身を包み、その声は喜怒哀楽を一切感じさせない鋼のような響きを持っていた。

 一切の私情を挟まず、ただ事実のみを主君に報告する完璧な諜報機械。だが、その根底には北条家に対する狂信的とさえいえる絶対的な忠誠心が流れていた。

 彼は自らの命を、北条家という「家」を存続させるためのただの「道具」と割り切っていた節がある。その徹底した自己犠牲の精神は、我ら風魔一党の代々の掟として今なお受け継がれている。


【主な功績】

転移直後の情報収集: 転移直後の大混乱の中、即座に配下を大陸全土に放ち、僅か数ヶ月で言語、地理、勢力図、魔法体系を把握。氏康の初期戦略の絶対的な基盤を築いた。

対帝国諜報戦: 帝国十字軍との戦いにおいては、敵陣への潜入、情報操作、要人暗殺など裏の戦いの全てを担った。特にエルフ長老会と帝国の密約を暴き、連合の分裂を未然に防いだ功績は大きい。

血脈の守護: 主君・氏康の死後、「北条の血脈を絶やすことなかれ」という言葉を生涯の、そして一族永遠の使命とした。


【風魔特記事項】

我ら風魔一党が数千年の長きにわたりその存在を維持できたのは、彼がこの世界の「マナ」を利用した独自の「忍法」を体系化したためである。これにより、常人よりも遥かに長い寿命と強靭な身体能力を得ることが可能となった。

彼は生涯妻を娶らず、子もなさなかった。風魔の頭領は血統ではなく、その時代で最も優れた者がその名と使命を受け継ぐという制度を確立した。

我らがデータベースに遺された彼の最後の言葉は、あまりにも彼らしいものであった。

「我が名は、風魔小太郎。ただの、影。歴史に残るは、光だけでよい」


【最期】

 公式な没年の記録は存在しない。

 主君・氏康の死を見届けた後、彼は歴史の表舞台から完全に姿を消した。以後、風魔一党は北条の血を引く者たちをただ影から見守り、守護し続ける伝説の存在となった。一説には、マナによる延命術により、数百年を生きたとも伝えられる。



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