人物記録②:北条綱成
Ⅰ. 大陸史データベース『テラ・ペディア』
項目:ジキハチマン
分類: 神話上の人物 / 武神 / 英雄
【概要】
『黎明の時代』に活躍したとされる、伝説の武神。建国の祖「サガミノカミ」に仕え、その無双の武勇によって「獅子の一族」を数々の勝利に導いたとされる。
その名は、彼が戦場で掲げた軍旗に描かれていたとされる「地黄八幡(太陽の国の軍神)」の名に由来すると言われている。一騎当千の武勇を誇り、獅子の一族における「武」の象徴として崇められている。
【神話・伝承】
神話において彼は人の姿をしているが、その本質は荒ぶる戦いの神そのものであったと語られる。その咆哮は大地を割り、一振りはあらゆる悪を滅したという。
特に、災厄の化身『成れの果て』との最終決戦に関する伝承は有名である。一度は地に伏しながらも、女神の祝福を受けて復活し、人の身を超えた一撃で災厄を打ち破る道筋を切り開いたとされる。
一方で、戦場を離れれば誰よりも豪放磊落で、兵たちに酒を振る舞い、共に笑い合ったという人間味あふれる逸話も多く残されており、彼がただの破壊神ではなく、民を守るための真の英雄であったことが窺える。
【史実の考察】
オダワラ地底遺跡で発見された『三本の刀』のうち、獅子の顔が彫り込まれた質実剛健な打刀が、彼の佩刀『獅子奮迅』であったと断定されている。その存在は、彼が神話上の概念ではなく、実在した人物であったことの強力な物証となっている。
一部の歴史学者は、「ジキハチマン」とは特定の個人名ではなく、最強の戦士に代々与えられた称号ではないかと推測していたが、遺跡から発見された個人の武勇伝や日記の断片から、一個の突出した傑物が存在したとする説が現在では主流である。
【後世への影響】
現代の大陸統合軍における最高の栄誉称号「ジキハチマン」は、彼に由来する。また、武人たちの間では、今なお彼の武勇と主君への絶対的な忠義が、最高の徳目として語り継がれている。
Ⅱ. 風魔一族秘伝データベース『事実録』
項目コード: 002
対象: 北条家一門衆筆頭
【基本情報】
本名: 北条 綱成
生没年: 永正十二年 〜 盟約暦三十五年
享年: 81歳(満年齢)
称号: 地黄八幡、左衛門大夫
神話上の呼称: ジキハチマン
【概要】
北条家一門衆筆頭にして、関東に敵なしと謳われた戦国屈指の猛将。主君・氏康とは同い年であり、義兄弟のような関係にある。その生涯を、北条家の、そしてこの異世界「テラ・ノヴァ」の最も鋭き刃として捧げた、我らが誇る最強の武人。
【人物】
「勝った、勝った!」を口癖とする、豪放磊落な性格。戦場では常に先陣を切り、その「地黄八幡」の旗印を見た敵兵は戦わずして崩れたという。
その本質は純粋なまでに武を愛し、強者との戦いを求める生粋のいくさ人であった。異世界への転移という異常事態に際しても一切動揺することなく、「面白い! 腕が鳴るわ!」と未知の強敵との戦いに心を躍らせたと記録されている。
粗野な言動とは裏腹に極めて高い戦術眼を持ち、数々の戦で北条軍を勝利に導いた。特に帝国十字軍との決戦では、一度は命を落としかけながらも黄梅院様の奇跡によって復活。固有スキル【剣聖】を完全に覚醒させ、災厄の化身『成れの果て』を打ち破る決定的な一太刀を放った。
【主な功績】
河越夜戦: 転移前の世界において、圧倒的劣勢から十倍の敵を打ち破った伝説的な奇襲戦。彼の武名を不動のものとした。
対帝国十字軍戦: 数々の防衛戦で鬼神の如き働きを見せ、帝国軍の度肝を抜いた。彼の存在そのものが連合軍の士気を支える精神的支柱であった。
『成れの果て』の討伐: 彼の生涯における最大の功績。人の身を超えた一撃は、囚われていた英雄アストリオンの魂を解放し、世界を救った。
連合軍の育成: 隠居後もその武勇は衰えることを知らず、連合に加盟した各種族の若者たちの武術指南役を務めた。オークのグルマッシュとは、種族を超えた終生の好敵手であった。
【風魔特記事項】
豪快な性格で、我ら風魔衆のことも「影の者」などと気取らず、気さくに接した。酒の席で五代目・小太郎と飲み比べをし、互いに潰れるまで飲み明かしたという逸話も残っている。
晩年、主君・氏康と同じく完全に隠居の身となったが、その肉体は老いてなお盛んであった。毎日素振り一千本を欠かさず、その剣圧は若い頃よりもむしろ鋭さを増していたという。
彼が遺した「武とは、ただ敵を斬るための技にあらず。守るべきもののために、己を極限まで高める生き様そのものよ」という言葉は、風魔の武術指南の根幹として今なお受け継がれている。
【最期】
盟約暦三十五年、主君・氏康の死から五年後。
縁側で愛刀『獅子奮迅』を手入れしていたところ、まるで眠るように静かに息を引き取った。その顔は、生涯を戦い抜いた者だけができる、満足げな笑みを浮かべていたという。享年八十一。
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