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次巻予告

(闇の中の会議)


蝋燭の火が部屋の広い空間を照らす。

長い豪奢なテーブルに七つの椅子が有り、その席に着くわ、『四人と四匹』の英雄と付き人。


いや付き人と悪魔というのが正しかろう。


「モレクの件だが、自分は独断だと思う。王は強欲の勇者鎧の回収を要請した。

にも関わらず破壊したその思案、自分だけで勇者鎧を二つ持とうと……そういうことだろう?」


大柄な黒人の男が野太い声で言う。

その後ろには灰色の髪を床まで伸ばし放題で、その髪で顔まで隠した長身の女性の『映像』が闇に浮かんでいた。

彼女がボソボソと音声を発する。


「ボクも……ラズの意見に……同調する……よ。 モレクは口ではぼく達に合わせて……いるけど、マシニクル人や亜人領といった……『敵』との戦いとは別の目的が有るようだった」



「そうだよぉ、あの女は昔から消極的っていうか、ベルフェッゴルたそ並みに怠惰だったよなぁ。


オレ的にこの世界に勝手に住んでる糞共への憤怒が足りないってかぁ。人間を乗っ取ったって言ってたのに、そいつとの約束律儀に守って、世直しなんてしてる女マジ何なんだよぉ。


もうアイツ、要らなくね?ねぇ、ディーヌァたぁん?」



桃色のサイドポニーの髪型をしている女の映像が、椅子に座る契約者に寄り掛かった。

彼女『達』は服装と髪型と顔までが全く瓜二つで、胸元の開いた派手なドレスで豊満な胸部とその身を包み、その髪には別々の髪留めをしていた。


『男』の声の方は犀の飾りを、俯いている女性は魚のアクセサリーを青い髪に付けている。



「違……う……あの人じゃない……あの女は……ナバロ様じゃない……!」

ディーヌァと呼ばれた女性は、青ざめた顔で爪を噛みながら、対面に座る青年を睨む。




「ベヒーモス様も健気ですねえ……。あのモレク様は優し過ぎました。

無理に残忍さを演じようとしてて、痛々しかったですからねぇ。


私としては今後の『エルヴとの大戦争』の前に、怪しい要素はお掃除しておくのがよくって?」



発言者はその茶髪の背の低めな男。だが彼の口からは品の良い女性の声が出ている。


ディーヌァの目には恋人のナバロの隣にしなだれ掛かる、薄っすら透けた淫魔の姿が見えた。

黒髪ロングの清楚な服装の女の姿で、ディーヌァの視線に嘲るような表情を返している。



「下等な貴様らが何をさえずろうと、この世界の生殺与奪は我が王が握る。

世間話は今すぐ慎め」



そして上座、四人目の側に控える映像は、紅色の派手なジャケットとジーンズの、金髪でオールバックの男。


彼は尊大な態度と声で、会合の参加者らを黙らせ、主に促した。



「私はまだ王様ってのに慣れてないんだけどねー。お飾りとしては、なるべくみんなの意を組みたいしー。


取り敢えず今は、正面の敵を何とかしとくー?」



王と呼ばれた少年は、赤い長髪の中性的な顔立ち。貴族めいた煌びやかな服を着て、女言葉で話していた。



「妖精のみんなが憎んでるマシニクル人は、今度の量産実験とかで長期的に苦しませるとして……。


やる気になってる他の亜人から……国境の亜人領を先手必勝で攻めるべきじゃないルシフェル?」


「は、御身の通り。19年前の暴走のギデオーズ=ゴールらが起こした、機械生命体兵器の暴走。

14年前の憤怒の勇者が各地に飛ばした物。

それらとは別の、エルヴが錬金術で量産した自立兵器による各地での攻撃。


五年毎に投入してくる『龍』と呼ばれていた、巨大災害『機械』兵器など、年々その性能は上がってきております。


あの蛆虫供は我々に気付いております。傍観をきめこんでいる他の亜人達への見せしめの為にも、その選択は正しいでしょう」



高慢な声に怠惰な声が続く。



「ボクの……方の実験は成功し、予定通りの……軍団を作れるよ。これで……七人に拘る必要は……なくなったね」




「オレらが使い捨てにする人間共は、いくらでもいるってかぁ?マシニクル人共を減らし、他の亜人を殺す……有効な戦術だねぇ〜。


勇者と人命の大安売りってな〜」



ベルフェッゴルはか細いながらも、皆に伝わるよう発声し、ベヒーモスはおどけて応える。


そして彼らの王は臣下の意見に何度か頷き、最終的な決定を伝えた。





「まぁ海の向こうの陽国、マーメイド達の目的が気になるけど、まぁ先ずは北のトゥヅカ地方のドワンプ族に仕掛けてー。


取り敢えずそこを滅ぼしてみて、私らの『勇者兵ブレイブ・アーミーズ』がどのくらい通用するのか、試してみよっかー」




王の軽い物言いに、各々は頷く。


ふとディーヌァの恋人ナバロが、いやナバロの契約した妖精が手を挙げて、意見した。





「王様、真意の知れぬ大食妖精モレクがこの王都に向かっておりますが、このデルジァにお任せ願いないでしょうか?


モレクをもし駆除することになった際は、私の手の者を差し向けますわ」



嘘である。

デルジァは王が何と答えようと、モレクを殺すつもりでいた。


既に刺客を放った後である。


緑の勇者を狙うわ、勇者にあらず。人の身で救世主の首を刈り取る者。


その者は『泉の騎士(クヴェレ=リッター)』の異名を持つ。

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