7ー5話 夏村の背負っているもの
【読者さまのコメント】
高松の勉強会、大所帯だわ(汗)
大変だろうけど、断らないのが高松のいいところ!
ある日のんびりとした朝を迎えられる……と思ったら、夏村さんからの連絡だ!
話の内容が、衝撃!!!(真っ青)
高松が急いで家に行くと、ひどい状況だった!!!(涙)
俺の家での勉強会のことだが……
まずは、夏村さんについて。
夏村さんは、結局夏期講習だけで、代々木の進学塾は辞めてしまった。
一哉が通っていることもわかったので、行きづらいこともあったし、不用意な接触を避けたいという意向もあった。
だからと言って、勉強仲間が通っている南浦和の進学塾にはどうしても行きたくないらしく、最終的には俺との勉強会でなんとかしたいということになった。
俺は夏村さんが夏期講習で使っていたテキストを分析し、通っていたクラスの問題は、どのレベルかということは把握できていたので、最終的には問題集をセレクトし、先日購入した赤本と併用し対策しようと考えた。
この問題集は三年になって、受験前の総まとめのような方法で使うのがよいか、授業と並行して行う方が良いかは迷っていた。
しかし、受験科目を考えると、全科目二年までで学校の授業は終了する。
よって、学校の授業では足りない内容を問題集でカバーしながら、二年で基礎固めをし、三年からは確実な回答ができるよう応用力の上乗せをしようと思った。
慶応の問題を見てみると、問題の難易度は英語はさすがに難しい問題もあるが、他の科目は難問を出題というよりは取れる問題を確実に点数にし、積み上げる必要があると思ったからだ。
早めに基礎固めし、俺のように確実に取れる問題は必ず取る勉強に移行できるようにできればと思っていた。
俺は夏村さんの受験校の入試出題科目については予めHPを利用して確認をしていた。
慶応の経済学部は社会は世界史B・日本史Bから一科目であり、いずれも二年で終了する内容なので先ほどの対策でいこう。
英語はコミュ英I・コミュ英II・コミュ英III・英語表現I・英語表現IIで一部高三の部分もあるので学校の授業に先行して高三レベルまで勉強し、併せて応用力の養成が必要だと思った。
そして小論文がある。
慶応の商学部は社会の選択枝に地理Bが加わるが、世界史B・日本史Bのどちらかにフォーカスして勉強をすればよい。
英語は経済学部と同様。
小論文は経済学部とは出題方式が異なるようだ。
法政大学の経済学部は国語総合、英語はコミュ英I・コミュ英II・コミュ英III・英語表現I・英語表現II、地歴は世界史B・日本史B・地理Bから選択、公民として政経、数学は数I・数A・数II・数B(数列・ベクトル)となり、このうち三教科選択のため、英語と国語総合、歴史の中から日本史か世界史からの選択の三科目が最善と考えた。
いずれの大学も問題集に収載されるような良問を出す学校なので、クセのある問題は出してこないようだ。
問題は小論文……だが、問題集を見ても何をどう勉強すればいいのかわからない状態だった。
ここは、俺が受講しているα会の小論文を受講するのもいいのではないかと思った。
だいぶ注力すべき科目は絞られたので、後は夏休みに受験した全国模試の結果を基に策を練っていこうと思った。
自分の受験校の受験科目については、夏村さんの把握ができた時点で満足してしまい、注意が飛んでしまい、まずは共通テストへ向けての勉強を確実に進めて行こうと思った。
多江ちゃんだが、相変わらず、月、水、金の南浦和の進学塾は通っており、火、木、土と新宿の医学系進学塾に通っていた。
そして、土日の夕方、俺の家に来て勉強会をするという流れだった。
多江ちゃんのご両親はこの勉強会についてどう考えているのかと尋ねると、好敵手と一緒に勉強することになるので、負けずにがんばっていらっしゃいと快諾してくれたとのことだった。
男友達の家へ行くことについても隣の町内会で両親も知り合いであったため、特に反対はされなかったようだ。
こちらとしても、多江ちゃんから無料で医学系大学の入試テキストを拝見させていただけるのだ。
拒否する理由もなく、継続して参加して貰っている。
その上、さよりも土日の午前中、バイトに行き、午後から勉強会に加わってくる。
始業式前日にバイト先を訪問した際、俺の治療費の支払いについて帰ってから考え、両親とも相談し、バイトは今月で辞め、大学あるいは専門学校に行き、社会人になってから両親に返金することに決めたらしい。
それは良いことだが、将来何をやりたいのか彼女の中ではまだ決まっていなかった。
まずは、夏村さんの時のように、さよりのレベルを確認し、高校以前の弱点を克服させながら、授業についていける学力をつけていこうと思った。
さよりはまだ高校一年だ。
色々と高校生活で触れていったものから、将来何になりたいか決めてもらえればいいと俺は思った。
たぶん、さよりが家に来るので、さよりのアンチである晏菜も敵の監視をするかのごとく、さよりが来たときは参加するのであろう。
普段はリビングダイニングで勉強しているのに、わざわざ、俺の部屋に移動してくるのだ。
結局は夏休みの勉強会は延長戦が、土日限定で継続するということになった。
その上、井上さんからも相談を受けた。
まずは数学が問題と言っていたので、早めにかたづけて、すこしでも早く、いつもの井上さんに戻って欲しかった。
いつのまにか、井上さんのちょっかいが習慣になってきたのか、幾分寂しさを感じていたのかもしれない。
ここに、那奈が入っては来ないかと心配になったが、今は卒業と次の事務所との契約関係で忙しいらしく、今年いっぱいは勉強には手が回らないらしいので、当分は大丈夫だろう。
しかし、あいつも元ヤンキーって言ってたから、勉強はどうなんだろうかと心配になってくる。
こうまとめると、土日の午前中は俺も夏村さんもフリーになる。
この時ぐらいは二人の時間を謳歌するのも悪くないと俺は思った。
◇◇ 九月八日土曜日 ◇◇
朝、六時半ごろ、突然の電話にたたき起こされる。
俺はスマホに表示された時刻を見ながら、
『今日は、基礎英語無い日だからゆっくりしようと思ったのに誰だよ……』
と思いながら、スマホの画面を開くと電話の主は夏村さんだった。
「早朝、ゴメン、腹痛がひどいんだ。あと……」
「どうしたの? 夏村さん。つらそうだけど大丈夫?」
「うん、ここまで、ひどいのは初めてなんだ…… あと、悪い、一緒にクリニックに付いてきてもらいたい」
「いいよ、夏村さんの家まで行って、一緒にクリニックに行けばいいかな? 何か持って行くものある?」
「そうだな…… しみ抜きかな。ちょっと多めに」
「しみ抜きね。ところで、お医者さんは?」
「いつも通っているクリニックがあるんで、そこまで付いてきてくれ。痛つつっ。一女のそばの大里先生だ」
「わかった。すぐ行く」
俺は着替え、リビングダイニングに行くと、テーブルに置いてあった、何も塗っていない食パンを口にし、台所に居た母に、
「母さん、夏村さんが腹痛がひどいみたいなんでこれから夏村さん連れて、一女のそばの大里先生にところに行ってくる」
「わかった。財布はもった? 何かあったときには電話しなさいよ!」
「うん、わかった。あと、しみ抜きって夏村さん言っていたけど塩素系の漂白剤でいいのかな?」
「いいけど、何に使うの?」
俺は洗濯場に向かいながら回答した。
「よくわからないけど借りていくね。でかいボトルだな? まあいいや。じゃあ、行ってくる」
俺はバッグに漂白剤のボトルを入れ、靴を履き、玄関から夏村さんの家に走って向かった。
テーブルのところで新聞を読んでいた父は読んでいた活字を目で追うのを止め、母に向かってこう言った。
「一女のそばの大里先生って、産婦人科じゃなかったか?」
「まさか、和也、沙羅ちゃんと…… でも、しみ抜きねぇ」
全力で走って二十分程度で夏村さんの家に着いた。
しかし、いつもなら出迎えてくれる夏村さんが出てこない。
不必要にデカい扉や玄関はロックを外してくれていたらしく、俺は『失礼します』と軽く言い、おいてあったいつものスリッパを履いて、夏村さんの部屋に向かった。
廊下には血液らしきものが点々と落ちていた。
嫌な予感しかしない……
俺は夏村さんの部屋のドアをノックすると、
「ゴメン、今は入らないで」
と夏村さんは弱々しく言った。俺は、
「どうして?」
と優しく声を掛けた。
「みられたくない」
いつもの迫力のある夏村さんはドアの向こうにはいなかった。
「だったら見ないといけないんじゃないの? 彼氏として…… 呼び出し受けたんだし…… いい? 入るよ」
と夏村さんの許可無く、俺はゆっくりとドアを開けた。
そこにはベッドのシーツ、パジャマが血だらけの夏村さんがベッドで痛さからかうずくまっていた。
俺はびっくりし、肩からバッグを外した。
「どうしたの? 夏村さん! なにがあったの?!」
俺は、バッグを置き、夏村さんのそばに行き、血だらけの夏村さんの肩を優しくつかんだ。
「ごめん、かずや。なんでもないんだ。心配するな。ただここまでの出血は初めてだったんで……」
震えながら話す夏村さんの声を断ち切るように俺はこう言った。
「大丈夫なわけない出血量だよね。生理がひどい人でもこんなにならないでしょう、わからないけど…… 救急車、今から呼ぶから」
「いや、大丈夫だ。大里先生に処方された薬飲んだら痛みは大分落ち着いた。たぶん、血のたまったところが破れて出血したんだと思う」
「大里先生に処方された薬って、以前から通っていたの?」
「かずや、ごめん、何も言えなくて…… 月一回、先生には見て貰っていたんだけど、前回の超音波検査で血の塊が大きくなっているって言われたんだ。それが破裂して出血したんだと思う」
俺は、ベッドへの出血状況、パジャマへの血液の付き方から、ある質問をした。
「夏村さん、もしかして子宮血腫とか?」
「かずやは何でもお見通しだなぁ。そう、だから実はやばい日の周辺はかずやと会わなかったんだ」
子宮血腫……
子宮内膜炎や子宮筋腫と同様に子宮の疾患であるが、女性ホルモンの性周期に合わせて子宮内膜下に出血を起こし、血液が溜まってこぶ様の塊(血腫)を作ったり、出血した場所によっては、周囲にあるおなかの中の臓器と癒着し、腹痛を起こしたりといった症状が見られる。
俺はベッドからやっとのことで上半身をあげた夏村さんにこう言った。
「夏村さん、立てる? クリニック行く前にシャワーしてきたら? こっちの掃除はしておくから」
「かずやにそんなことさせられない」
「だけど、俺を電話で呼んだんだろ。だったらするさ」
「…… ありがとう ……」
「手を貸そうか?」
「大丈夫、一人で行ける…… でも、かずや、俺、こんな病気を持っている…… 子供もできないかもしれない……」
「らしくもない! こんな病気もってるけど、俺に付いてこいでしょう! 夏村さんだったら」
「かずや…… ありがとう。かずや、血とか大丈夫なのか?」
「うん、(いろいろありましてとは言えないから……)医者への志がある人は血ぐらいで驚かないよ」
「かずやは、強いんだな。さすがに俺も今日の量はびびった」
「さあ、血がシミにならないうちに掃除するんで、行って行って!」
と俺は夏村さんをせかした。
そのままシャワーに向かおうとした夏村さんに俺は、
「夏村さん、下着、持って行かないと!」
というと、夏村さんは黙って下着をそろえバスルームに向かった。
一人、夏村さんの部屋に残った俺は、血のついたベッドを見ながら、
「このシミは残っちゃうなあ」
と言うと、バッグから漂白剤と綿棒、タオルを出し、そしてキッチンからバケツに水を準備した。
シーツの血液を水で落とし、残ったシミには漂白剤を付けて、漂白剤を溶かした水の入ったバケツに浸した。
マットレスはさすがに厳しいので、持ってきたタオルに水で薄めた漂白剤をしみこませて、湿布のように、シミの部分に置いた。
ベッドの細かい溝には水洗い後、綿棒に漂白剤を付け、シミを処置した。
この対処だと、ベッドにはシミが残るか、本体の木の部分が変色してしまうかと思ったが、現状そんなことには気を止めなかった。
まずは、血の後を拭い去りたい、その一途であった。
シーツ類の入ったバケツをバスルームに持って行き、しみ抜きのために置いたタオルを取り除き、ベッドのシミもある程度取れたことを確認した俺は、部屋の中の漂白剤のツーンとした匂いを消すため、窓を開けた。
まだ、九月ということで空気の湿度は高かったが、庭の木々の香りで少しは紛れるだろうと思った。
俺は再度水をくみ、ぞうきんを絞り、血の付いた廊下をぞうきんがけした。
床材にも血液はしみこむからだ。
多分、俺が来たときのために痛みをこらえながらドアの鍵を開けてくれたのだろう。
がんばった夏村さんの姿を想像しながら、俺はゴシゴシと廊下のシミをこすった。
掃除も終わり、ぞうきんをキッチン横に干し、部屋で夏村さんを待っていた。
机の上には昨日勉強したのであろう問題集とノートが置いてあった。
そして机の上に飾られた 『Fate/Stay night』に出てくるセイバーのフィギュアに向かって、『お前がマスターを守らないでどうすんだ』と話しかけ、セイバーの頭を軽くたたいた。
すると、ドアが開き、足音から夏村さんが部屋に戻ってきたのだろうと俺は思った。
「シーツ類はシミになりそうなものはある程度取って、ここにまとめたので、洗濯しておいてくださいね。ベッドは今日はこのまま乾燥させた方がいいと…… 思います…… が」
俺は話しながら夏村さんを見ると、パンティを履いて、ブラはせず、肩から掛けたタオルで胸を隠した状態でやってきた。
「悪りぃ、ブラ持ってくるの忘れた。向こう向け!」
と言うので、夏村さんと反対側を向くとそこには全身の姿見鏡が置いてあった。
そこは男の子。俺はこっそりと鏡を見ると、夏村さんがタンスからブラを探し、再度俺の後ろに立つと、肩から掛けたタオルをベッドに投げた。
完全に鏡にはパンティ姿の夏村さんの半裸姿が映った。
そしてブラを着けながら夏村さんは笑った。
「かずや、彼女の初乳、明るい場所で見れたな。わかってるんだぞ」
「はい、見ました」
「感想は?」
「思った以上にきれいでした」
「じゃあ、九時になったらクリニック行くぞ」
「はい」
大里レディースクリニック
さすがに俺は外で待つと言ったのだが、夏村さんは一緒に話しを聞いて欲しいというので、一緒にクリニックの中に入った。
中で俺の姿を見る人たちの視線は冷たかった。
多分高校生で相手を妊娠させて堕ろしに来たんだくらいの目であった。
「大丈夫か、かずや。辛くないか?」
「いや、遅かれ早かれ、一緒に来るんじゃないの?」
「どういう意味だ?」
「夏村さんの体の問題は、いずれは俺が面倒見なくちゃいけないと思うので、今日がその日だと思えばいいだけだよ」
「そうか…… そうだな」
約二十分間の視線による拷問の後、夏村さんが呼ばれる。
俺と夏村さんは一緒に診察室の中に入った。
中に入ると大里先生は女医さんだった。
今、呼び出した声の主もこの先生だったようだ。
先生は俺を見ると
「今日はご兄妹でですか?」
と言った。
「いえ、私は彼女とは今、お付き合いしているのですが、今朝、彼女が強い腹痛と大量の不定出血を起こしたので心配になり同行させていただきました」
「ところで君は彼女の病気のことを聞いたのかい?」
「はい。先ほど彼女から聞きました。し……」
「あっ! ゴメン、マイク切り忘れた」
といい、先生は呼び出しに使ったマイクを切った。
先生はウィンクしながら、
「これだったら、待合室の患者さんから邪推されなくてすむでしょ?」
と笑いながら言った。
「ご配慮ありがとうございます」
先生は俺たちが堕胎で来ているのではないことをマイクの切り忘れをしたかのように見せかけ、待合室の他の患者に伝えてくれたのだ。
しかし、夏村さんの病気という個人情報はどうなるんだと思ったが、ここでは先生の厚意に甘えよう。
「で、彼氏君は夏村さんの状態を見てどう思った」
「女性は大変なんだなと思いました。生理という生理症状と付き合って子供を作る準備をする。男はエロ本見て解消すればいいだけなんで」
「君、おもしろいね! ということは彼女の背負っているものに立ち向かう勇気はできているのかな?」
「それも聞きたくて一緒に来ました」
「ちなみに、君と夏村さんは付き合っているわけだが、性交はしたか?」
「いえ、俺の一存で高校卒業までは待ってもらっています」
「夏村さん、それで合っているかい?」
「はい、そうです」
「子宮血腫、特に夏村さんの場合、生理の時の激しい生理痛と闘わなくてはいけない。それはホルモン剤でなんとかなっていると思う。ただ、このホルモン剤だが、副作用として特に成長期の子供の場合は乳房、おっぱいだな、これが成長しにくい環境なんだ。だから彼女は胸があまりないだろう。次に彼女は多発性子宮血腫という病気で、血腫を子宮内につくりやすい体質なんだ。だから血腫が大きくなったら血腫を除去するか、大量出血の準備をして待ち構えるかになる。そして、これから二人にとって大切なことになるが、第一に性交時に痛みを伴う可能性がある。そして二つ目として妊娠したとして血腫の発現時期と重なってしまうとお子さんができなくなってしまう可能性もある。胎児は子宮内で十ヶ月育つ。その間に別の箇所で血腫が起きない保証はないんだ」
俺は夏村さんをみると下を向き涙を流し、手を震わせていた。
俺は先生の方を向き笑顔でこう言った。
「この病気を克服する治療法はあるんですか?」
「今はない、唯一の方法は子宮摘出すれば、血腫は発生しないので病気は完治する」
そんな話を俺は聞きたかった訳ではない。
この言葉を確かめたかった。
「でも、これが原因で夏村さんが死ぬことはありませんよね」
「ない」
「だったら、いいです。自分がこの病気を克服できるような治療法見つけますから」
「治療法って、医者にでもならないとできないんだぞ?」
「大学行って医者になって、夏村さんを助けますから!」
「かずや!」
と言い、夏村さんは俺の手を握った。
「元々、第一志望医学部だったんで、また目標ができました。その時は先生、俺の治療法で同じような患者さんを救ってください」
「大きく出たな。待ってるよ。でも、その時には私はおばあちゃんになってるだろうな。薬が世に出るまで十年近く掛かるって話だ。君が医者になって、研究して、薬を出しても、もう彼女は妊娠できない時期になっているかもしれない。決意をするのはいい。だけど、それを成し遂げるには時間もかかる。それを考慮して発言しないといけないよ。相手に期待させて結局は出来なかったでは言われた相手が辛いからな」
と、俺を諭した。
「よし、じゃあ、患部の確認をするから夏村さん、下脱いで検診台に座って。そうだ、君、名前は?」
「高松和也です」
「和也君、名前覚えておくよ。そういえば、初交渉したことないなら、彼女さんのあそこ見たことないんだろうから、見ていくか?」
と聞く大里先生。
「先生!!」
と真っ赤になりながら怒る夏村さん。
「ぼくの役目は終わりましたので待合室で待っています」
と言い、俺はそそくさと診察室を出ようとした。すると大里先生は呼び止めてこう言った。
「和也君、一言、君にとってラッキーなこと教えてあげる」
「なんですか?」
「彼女さん、処女だぞ! がんばれよ!」
「そんなこと結構です!!」
どんだけ夏村さんの個人情報をダダ漏れにしているんだと思いながら俺は診察室を出た。
しかし、この医師と俺の会話に夏村さんが入ってくることはなかった。
多分、セックス、出産で迷惑を掛けるとでも思ったのであろう。
そんなことは、どうでもいい。
夏村さんの笑顔さえ見ることができれば、他はどうでもいいのだ。
しかし、あの先生、余計な情報を入れてくるなあ……
夏村さん、処女か……
でもエッチが他の人よりも痛いと考えればそう簡単には許さないよなとも思い、思春期なら一番興味あるものに向かい合えないのは悲しいことだと思った。
俺なんか、夏村さんの水着姿や井上さんのボディアタックでの肉感を想像することで発散することができる。
実は以前話に出た俺の部屋のエロ本は多江ちゃんに似ていたので購入したものだった。
男なんて楽ちんなもんだなと考える。
十数分後、夏村さんは診察室から出てきた。
俺の横の席に座り、小さな声でこう言った。
「出血は治まっているって。貧血気味になっているそうなんで、今日の午後の勉強会はキャンセルしてもいいか?」
「いいけど、夏村さん抜きで進めちゃってもいいの?」
「かずやの決意を聞けたから、心配しないよ。でも今日有ったことは内緒な!」
「するわけ無いでしょ!」
「あと、処女はかずやにとっておいた。その時は痛くてもがんばるから……」
「俺はできれば、上手にリードしてくれる手慣れた方がいいのですが……」
「お前! 俺の純愛を無下にしたら殺すからな!」
「はいはい! ところで、これからJRガードそばの華月苑ってお店行ってみない?」
「うん、いいけど、何のお店?」
「焼き肉屋さん。出血したんだから血液補充でしょ!」
「いいねぇ、行こう!」
夏村さんとの食事を終え、自宅に帰ると、リビングダイニングには両親、晏菜が集まっていた。
「いや、よかったよ。夏村さん無事で」
と俺が笑いながら俺がいつもの席につくと父は、
「ついに沙羅ちゃんに手を出して、妊娠させたのか? 堕ろしてきたのか?」
「俺は絶対、堕胎の同意書にサインなんかしてませんから!」
「おにぃ、最低。高校卒業までは手出さないって言ってたのに!」
「ちょっと、みなさん。誤解されているのでは……」
夏村さんがシャワーに行った間に家族に電話報告すべきだっと大いに反省した俺だった。
当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。
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注意:本作に書かれている病気の方が本作に書かれているすべて症状や合併症が発現するとは限りません。また、本疾患をお持ちの方を差別する意図もございません。このような病気に悩まれている方もいるのだということを多くの方に知っていただければ幸いです。
編集記録
2023/02/04 一部改稿
2023/02/06 一部修正




