7ー3話 学園祭実行委員会と厄介な転校生
【読者さまのコメント】
高松は石森さんと文化祭の実行委員会に参加する。
でも、石森さんの行動にちょっと首を傾げてしまう(汗)
なんだか石森さんもいろいろ悩みを抱えていそう(汗)
そんな中、転校生がやってくることに!
その人物は────な、なんだって?!?!?!
六時限目の授業終了後、石森さんを誘って学園祭実行委員集会に参加しようと思い、俺は彼女の席に行き、一緒に行こうと声をかけた。
「高松君に迷惑がかからないのならいいよ」
と言うので、一緒に生徒会室横の実行委員会室へ向かうことになった。
一緒に歩きながらも、『迷惑がかからないのなら』というのはどういう意味なのだろうかと考えながら、俺は歩いていた。
教室から出て、委員会室に向かう道中、ふと気がついたのだが、なぜか石森さんは俺の一歩後を歩き、横に並んでくれようとはしなかった。
こうなると、わざわざ石森さんの方向に振り返りながら話しかけるのも億劫である。
特に話すこともなく、実行委員会室についた。
一年ぶりにこの時期が来たんだなと思いながら、ドアを開けると、すでに今日の委員会の初めの部分を取り仕切る予定の上郷地先輩が部屋にいた。
昨年の実行委員集会の際には前年委員長であった小鳥遊先輩から、上郷地先輩が委員長にと事前に内諾を得ていて、集会の初めに小鳥遊先輩が上郷地先輩を委員長に紹介する形で決まったと聞いていた。
確かに、前年の流れを知っている人を選出する方が、色々と仕事の流れを知っているので、仕事がスムーズにさばけると思った。
まあ、こいつら勝手に裏で委員長決めやがってという意見も出るかもしれないが、後々になって委員長業務の面倒くささを知れば、あの時、立候補しなくて良かったと思うであろう。
ということは、俺が今年の委員長と決まったら、来年の委員長候補を探し、育てるというのも役目なのだと思った。
そう考えると、荷が重いなあと自分でも思ってしまう。
「高松、お疲れ! 今年は三学年分の委員がいるから、この部屋も狭そうだな」
確かに二学年であれば委員は二学年×二人×八クラスの三十二人で収まるが、三学年だと、三学年×二人×八クラスの四十八人となる。
去年のままでは十六人、長テーブルで四台足りないことに気づいた。
「了解です。生徒会室から長テーブル四つと椅子十六脚持ってきます」
「そうだな。高松、悪い!」
「良いですよ!」
と言い席を立つと、表情も変えず、石森さんも席を立った。
「石森さん、いいよ。生徒会の奴ら、呼んでくるから」
と俺がいうと、
「いや、手伝うよ」
といい、俺の後を付いてきた。
よく見ると、俺の身長は百八十センチ、石森さんは百五十二センチぐらいであろうか。
かなりの凸凹コンビである。
ここでも俺の一歩後ろを石森さんは付いてきた。
いつもは名前を名乗って委員会室には入るが、急用なので何も言わず、ノックだけして中に入った。
「あっ、かずさん、どうかしたの?」
と内田さんが質問してきたので、俺は、
「悪い、隣の部屋に長テーブル四台と椅子十六脚持って行きたいんだけど手伝ってくれないかな」
とお願いした。
「いいよ。了解。かなで、たつみ、りい、かずさんを手伝うぞ!」
といい、内田さん、羽田さん、曽根さん、川尻さんの四人娘が長テーブルに向かったので、
「長テーブルは重いから俺持つよ」
といい、俺が長テーブルを横にして脚を折り、右手で抱えると、
「前の誘導は私がするよ」
といい、石森さんが長テーブルの先頭を持ち、フォローしてくれた。
「石森さん、サンキュー!」
と俺が言うと、石森さんは顔を赤らめながら、
「気にしないで」
と言い、誘導を始めた。
結局、長テーブルは俺と石森さん、椅子は四人娘が持ってきてくれた。
俺は四人に礼を言い、石森さんにも礼を言った。
すると石森さんは、
「高松君、羽田さんたちとも仲いいんだね。子分みたいだったよ」
「彼女達は俺と一緒に去年の学園祭をがんばった同士みたいなものなんだ。俺も彼女達を信じているし、多分俺のことも信じてくれているんだ」
「そうなんだ…… ふう~ん…… そうそう、高松君、腕ダメなんだもんね。私手伝うから何でも言ってね」
「ありがとう、気を遣ってくれて」
「あのさ、私も羽田さんたちみたいに高松君の同士になりたいから『奈那』って呼んでくれるとうれしいな」
「じゃあ、奈那さん。よろしく!」
「じゃあ、私も『かずくん』ね。よろしく!」
次第に、各クラスの実行委員会メンバーが集まってきた。
中には、さよりや、池田の仲間も数人参加してくれていた。
「かずさん、もし手が足らなくなったら言ってください! すぐ池田、連れてきますんで」
と池田の仲間は言ってくれた。なんとも心強い。
「かずさん、私猛烈にかずさんヘルプしますんで、何でも声かけてください」
「さより、ありがとうな。本格的に忙しくなるのは十月からだから、それまでは自分のこと頑張れよ!」
「(せっかくかずさんを独占するチャンスだからな……)できれば、かずさんと同じグループとかがいいんですが」
「まずは自分で今何ができるか考えろ。そして決まったら俺に相談しろ。無茶じゃないか確認してやるから」
「いつもの言葉ですね。了解です。がんばります!」
第一回目の委員集会が始まる。
今日は前回実行委員長であった上郷地先輩が最初司会となり、前回の学園祭の報告を行い、委員会の業務範囲を各メンバーに明確化した。
また、今回、生徒会が発足したことによる、一部業務の委嘱についても言及した。
確かに、最初に委員会のメンバーに業務範囲を明確化することは、メンバーが実際どのような業務を携わるかイメージが付きやすいと思った。
さて、今年の実行委員長だが、今回の出席者の中で前回の学園祭の経験者である俺を上郷地先輩が推薦という形で提案し、全会一致で了承された。
ここからは俺が司会をバトンタッチさせていただき、議事を進めた。
執行部として、書記として河野と生徒会の書記連中が担当することを発表し、併せて昨年の経験者ということで内田さん、羽田さん、曽根さん、川尻さんの四人も、総務と未経験者へのヘルプという形で協力してくれることを発表した。
要は実行委員には主に自分のクラスの総指揮を取ってもらいたい、そして時間があれば委員会の仕事も補佐して欲しいという流れにした。
昨年のように実行委員会が何でもということになると、内田の業務過剰によるパンクのようなことが起こりかねないからだ。
「こんな形で旧メンバーに主導的な役割を持たせてみたんだけど、三年二組の○○さんはどうお考えですか?」
「特にないです」
「何か一つぐらいはご意見ありませんか?」
「う~ん…… そうですね。自分としては…… 」
とひとつひとつ発表の後、俺は参加メンバーを数名指名しては意見を言わせた。
相手に何かご意見ありますかと質問すると大抵、特にありませんと人は答えるものだ。
そこで、なんでも良いから一言言わせるように誘導すると、人は考え、あるいは心に留めておいたことを話し出すものだ。
昨年の上郷地先輩は参加者の意見をすべてくみ上げてから前に進めた。
それでは参加者は満足するが、時間がかかり不経済だ。
よって、俺は参加者自身が率先して話し出す雰囲気を作り出し、意見を出させる方法をとった。
学園祭と言えば、昨年、今は退学した仙道の内田への仕事の押しつけがあった訳だが、今回はなるべく自分たちの担当業務の明確化、見える化を行い、自分たちで責任を持って対処し、その進捗を委員会が集中管理するような仕組みにした。
そこで、グループラインとスケジュール管理アプリを各自のスマホにインストールし、それで進捗を確認管理できるようにした。
これを提案したのは河野だった。
彼は、目の前で内田の業務過剰のパンクを見ており、どうすれば個々の管理を第三者が容易にできるかを色々と検討してくれていたらしい。
そのシステムの使用方法の説明会は別途、河野が実践して説明してくれることになった。
そして、そのスケジュールの管理は総務担当の四人娘にお願いした。
開催日は前述のとおり、十一月の二、三日。
クラスでの催し物は二年、三年の委員の昨年の経験から、出店と体育館での合唱にするとことなった。
劇を行ったクラスと合唱を行ったクラスの負担が段違いであったため、今年は劇はやめることにした。
そしてどうせやるなら、合唱はコンクールとし、出店もアンケートでの人気投票を行い、賞争いをすれば、やる気も出てくるのではという話になり、合唱コンクールと出店人気コンクールを実施することになった。
また、昨年のゴタゴタの原因となった有志の発表、例えばバンド演奏などは事前、審査を実施し、演奏が上手くできそうなものだけを参加できるようにした。
合唱コンクールでは一クラス二曲で約二十分使うと計算すると一学年で約三時間必要となる。
よって、一日目は午前午後で一学年ずつ、二日目は午前に残りの一学年を実施し、午後は有志の演奏、そしてコンクールの結果発表という流れまで決定することができた。
あとは、文化系、体育会系の部活をどのように参加させるかについては、生徒会と、別途打ち合わせることした。
部室だけでは到底発表ができない部も出てくるであろう。
その配分も検討しなくてはいけない。
そして、今回は学園祭のホームページを作成し、アピールし、出来れば高校のホームページからリンクを張ってはどうかという意見もあり、それについては生徒会を通じて、学校側と折衝したいと約束した。
最初は各メンバーの口数は少なかったが、俺の質問する形での進め方が功を奏してか、次第に口も軽くなり、自分たちの意見を出してくれるようになった。
予定では昨年の初回の打ち合わせが三時間かかったため、そのぐらいの時間は予定していたが、今回はサクサクと話が進み、一時間半で終了した。
「高松、お疲れ様。さすが、お前が回すと早いな」
「いやぁ、上郷地先輩のやり方だといつ終わるかわからなくなっちゃうんで。でも各メンバー、言いたいことは言えたと思うので初回としてはオッケーということでいいですね」
「高松は私の進め方、嫌いだもんな」
「いえいえ、めっそうもない。私は早く帰りたいだけです(笑)。先輩、長テーブルと椅子はこのままでいいですかね?」
「生徒会室で必要になったら、こっちから持ってくるからいいよ」
俺は上郷地先輩から席に目を移すと、石森さんが座っていた。
「石森さん、ごめんごめん。集会終わったから帰ってもいいんだよ」
「いや、終わったら高松君、教室戻るかなと思ったんで、一緒に戻ろうかなと思った」
「あ、ありがとうございます。上郷地先輩、教室にバッグとってから生徒会室戻りますね」
「夏村が生徒会室にいるか、確認してから教室に向かったらいいんじゃないか」
「そうですね。わかりました。じゃあ石森さん、行こうか」
「うん、行こう。上郷地先輩、失礼します」
「ああ、石森さんだったね。これから高松を宜しく頼むね」
「まかせてください」
「高松、入ります!」
委員会室に入ると、内田さん達もバッグを持って帰ろうとしていた。
「かずさん、お疲れ様です。かずさんの会議、長引くと思ったらしくて、なつさん、帰りましたよ」
「帰っちゃったんだね。わかった。じゃあ、俺も帰るわ」
「奥さん、先帰っちゃってかわいそう!」
「そう、寂しい……」
「かずさん、ちょっと気持ち悪い……」
「ごめんなさいね、じゃあな!」
部屋から出てくると、廊下には石森さんが待っていてくれた。
「石森さん、先戻ってくれても良かったのに……」
「夏村さん帰っちゃったの? 奥さん、先帰っちゃってかわいそう!」
「聞こえてたの……? そうみたいね」
「じゃあ、いっしょに帰ろう」
「帰りますか……」
二人は教室に戻るとバッグを持ち、教室を出た。
「ところで石森さん、陸上部だけど、専門種目は?」
「地味なんだけど、400メートルと1600メートル」
「体育祭だと無い種目だよね」
「そうなんだ、100メートルだと井上さんや夏村さんに敵わないから、陸上部だけど、体育祭は不向きなんだよね」
「そりゃあ、格好付かないよね」
「どうしようかな。今年は高松君と5000メートルとかに出ようかな」
「なんで俺5000メートル決定なの?」
「だって毎日周回走っているし、陸上部からみたら、去年の運動会、あいつマジで走ってないなってバレバレだもん」
「見る人にはバレているんですね……」
「そういうこと。今年出るんだったら、マジで走った方がいいよ。もうサッカー部での活躍から運動音痴でないのバレてるから」
「そうですよね…… じゃあ今年は真面目に走りますか」
「じゃあ、私も5000メートルでるよ」
「石森さん、ちょっと気を悪くするかもしれないけどいいかな?」
「いいよ。なに?」
「なんで、俺の決めたものについて行こうとするの? もっと自分から動いた方がいいんじゃない?」
「高松君のやっていることは間違いないからだよ。間違っても修正力あるし」
「でも、そんなんじゃ、すべて他人任せになっちゃうんじゃないの?」
「もういいんだよ。自分で決めたことが正しかった試しがなかったし……」
なるほど、自己不信による他人依存か…… そうなると結論を他人に委ねた方が楽だもんな。
しょうがねぇなあ、またこいつも学園祭の実行委員の活動を通じて更生させるかとお節介の虫が動き出す俺だった。
◇◇ 九月五日 ◇◇
そういえば、井上さんの前の席の今泉さんが今学期始まってから、ずっと休んでいることに気づいた。
情報通の井上さんなら知っているかと思っていたが、なぜか、まだ複雑な表情を崩していなかったため、質問すらできないでいた。
授業開始前のショートホームルームが始まる。
教室に入ってきた渋谷先生は、
「みんなにお知らせがある。急な話だが、今泉まゆさんだが、家族に不幸があって、お母さんの実家である栃木に引っ越しが決まったため、九月三日付けで転校となった」
今泉さんは井上さんの前の席であったが、お父さんが入院されていて、授業が終わると、病院通いの毎日だった。
近くにいたにも関わらず、あまり話ができなかったなという程度の付き合いでしかなかった。
「その代わりと言ってはなんだが、うちの高校への転校の希望があり、入学してきた子を受け入れることとなった。クラスで空きがあるのがこのクラスだけだったので、今日から同じクラスメイトになるので仲良くしてやってくれ。じゃあ紹介する。おい、入ってきていいぞ」
『その代わり』というのはどんな言い草だと俺は思った。
ちょっとカチンときたちょうどその時だった。
教室の前のドアがガラガラと開き、茶髪のショートヘアで、細身ではあるが筋肉質で褐色の肌の女子生徒が入ってきた。
俺は、どこかで見たことのある顔だなあと思っていたのだが、彼女は教壇の横に立つと、あっと口を大きく開き、俺を見ながら手を振っていた。
そして彼女の口はこう言っているように見えた。
『レッズさん、お世話になるね』
夏村さんは俺の肩をたたき、こう言った。
「かずや、な、なんであいつがうちの高校に来るんだ?」
「で、ですよね…… STM51の緒方那奈……」
彼女は黒板に自分の名前を書きこう言った。
「私、緒方那奈といいます。仕事の都合で熊谷から浦和に引っ越してきました。私のこと、すでにご存じの方が若干二名いますが、今日からみなさん宜しくお願いします!」
といい、礼をする。
やはりこういう場慣れをしているのか、明朗闊達に話をする。渋谷先生は、
「井上の前、坂本の横の今泉が座っていた席が空いているのでそこに座ってくれ」
「わかりました」
と言い、元気よく、こちらに向かってくる。
そして、席に着くと、いきなり、俺の方を見てこう言った。
「レッズさん、じゃない、かずやさん。熊谷から引っ越してきちゃった。これからも推してくれるのかな?」
「本当に那奈かよ…… あれ? 石森さんもななだよな…… 石森さんは奈那か…… 面倒くせえ……」
途端に元気の出てきた井上さん。
俺に向かってこう言った。
「かずくん。緒方さんとはどういう関係? 元彼女さんとか?」
すると俺が返事する間もなく、夏村さんは、
「俺の恋敵だな。マジでタイマン張ってくるとは思わなかったぜ」
と教室では久しぶりに怖い口調になっていた。
いきなり那奈と夏村さんの元ヤンキー闘争が巻き起こるのか……?
頭が痛い。
当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。
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編集記録
2023/01/03 誤記修正
2023/02/02 一部改稿




