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5-3話 和也のやり方と夏村のやり方(1)

【読者さまのコメント】

高松の席は大変だな……女子三つ巴。

ちょっとでもドキドキしたら、すぐさまいろいろな反応が!

後輩は高松のことを心底慕っている!

こうやって気の合う後輩がいると思えば、問題児もいる(汗)

高松は少しずつ情報収集していくことにしたが──?

 入学式も無事終わった。

 その後の教室に戻ってからの先生からの処々の説明が終わったのか、授業中にもかかわらず、下の階はガタガタとうるさかった。

 今日は午前中で授業は終わり、午後からは体育館で部活紹介がある。

 隣の井上さんは女子バレー部の紹介で演台に立つらしいが、まったく緊張した様子は全く出さず、授業を受けている。

 まぁ、あの度胸の持ち主だから、一年生にしてレギュラーを勝ち取っているんだろうなぁと思った。

 ユニフォームにあこがれて部活を選ぶ生徒もいるらしく、女子バレー部は井上さんも含め、ユニフォーム姿で登場するらしい。

 俺も男の子、体育会系女子のユニフォーム姿には好奇心ワクワクだけど、部室棟で夏村さんがいないことをいいことに飛びついてくる井上さんのユニフォーム姿は、逆に自分にとってトラウマになっているということは否定できない。

 『井上さんのユニフォーム姿を見る→(脳)→抱きつかれた時に接する二つの柔らかいものを想像→赤面』

 という男の(さが)には勝てない不随意反応が起こってしまう。

 案の定、想像しただけで生理反応は起こってしまう。

 若い男の子なので、その辺は見逃してくださいね。

 充血が体の数か所に起こってしまい、その一か所である耳も真っ赤になった気がした。

 俺はノートで顔を扇ぎながら雑念が通り過ぎるのを待っていた。


 部活紹介は生徒会主催で行われるため、出席しないわけにはいかないのだが、俺は舞台から遠く離れた出入り口の監視の担当を自分からかってでた。

 舞台上での状況をあまり細かく見なくてすむからだ。


 すると、机の上に紙が丸められて飛んできた。

 俺は周りを見回し、誰もおれのことを見ていないことを確認し、紙を広げてみる。すると、

『顔、赤くなってるよ~ 午後のクラブ紹介の時の私の姿、想像しちゃった? しちゃったよね(笑)』

 やばい! 知らぬ間に俺が赤面していたのがバレていたのかと思い、井上さんを見るとVサインをして笑っていた。

 ということは…… 


 恐々、逆隣を見ると夏村さんがこちらをにらみつけ、俺の袖を引っ張り、手にあるものを見せろと目で訴えてきた。

 一度は否定したものの、夏村さんの表情がさらに怖くなっていたので、しぶしぶ紙を手渡した。

 すると夏村さんは、紙をみるなり、スマホを取り出し、何かを打ち込み始めた。

 すると俺のスマホのラインが来たことを知らせるバイブレーターが作動した。

 ちょっとビビりながらラインを覗くと、

『お前、俺の水着には興奮しないのに、井上のユニフォーム姿には興奮するのか? よし、わかった! 今度お前が泊まりに来たら、俺のセクシーな下着姿で悩殺してやる』と書いてあった。

 それを読んだだけで俺は顔の温度が一〇度くらい上がったようだった。

 当然、先ほどよりも赤面の度合いは確実に上昇してしまったのだろう。

 俺はこっそり夏村さんを見ると今度は夏村さんが俺に向かってVサインをしているが、視線は明らかに井上さんの方をにらんでいた。

 お願いだから純な俺の生理反応を楽しむのはやめてくれ!

 こんな両隣で俺の高二生活は大丈夫なんだろうかと心配になる。

 まぁ、毎日楽しいけどね。

 と思った瞬間、多江ちゃんが手を挙げ、こういった。

「先生、高松さん、顔色が悪そうなので、保健室に連れて行こうかと思うのですが」

 ちょっと、待って! 生理反応が落ち着いてからにしてください。

「高松~ 大丈夫か?」と先生がいうと、俺はこう返事するしかなかった。

「すみません。今、ちょっとおなかの調子が悪くておならをしてしまったのですが、それを近所に聞こえてしまったらしく恥ずかしかったので…… その後は聞かないでください……」

 クラスは大爆笑。

 斜め前には俺に向かってあっかんべーをする多江ちゃんがいた。

 後ろの痴話話は全部お見通しですよと言いたそうだった。


 授業も終わり、部活紹介の時間


 部活紹介には、新入生は参加が必須ではなく、部活に興味がない生徒は参加しなくてもよかった。

 いちよう座席は、入学式終了後、参加するであろう一年生の部分を残して先生方が片してくれていた。

 もちろん、説明会が生徒会主催ということなので部活紹介終了後は実務部隊である俺や新入りの四人がメインで片すことになる。


 席が三分の二程度が埋まったであろうところで開始時間となり、説明会は始まった。

 各部持ち時間一〇分の中で、説明をしながらパフォーマンス、例えば書道部は大きな半紙に見事な字を書いたり、合唱部はコーラスをしてみたりと見る立場としては飽きない内容であった。

 舞台に登場するのはクラブの技能が優れたものや、外観(ようは顔立ち)がいいやつが務めた。

 それも新入生の囲い込みの一つの方法であり、各部いろいろと作戦を練ってきている様子だった。


 部活紹介も終わり、新入生たちは三々五々帰っていく。

 俺はその中のひとりの生徒に目が行った。

 『吉川さより』であった。

 さすがに入学初日ということで仲間はまだできていない様子で、一人で帰っていった。

 同じ中学出身の生徒もいるはずなのだが、入学式・部活紹介を通して接触した気配はなかった。

 その姿をじっと目で追っていると、「高松さん!」と声をかけてきた男子生徒がいた。

 池田啓介だった。すでに六、七人の生徒と一緒でもう仲間はできた様子だった。

「どうだった? 部活紹介。どこか入りたい部活あったか?」

 俺がこう聞くと、池田は

「いやぁ、こんなに部活が活発なんでビックリしましたよ。うちの中学と大違いですよね」

 と言った。

 確かに俺の出身校、沼幡中学は何もかも中途半端で、近隣の他の中学に比べ光るものが無かった。

 部活然り、進学然り…… 

「ところで高松さんは、今どこの部活に入っているんですか? また、サッカーやってるんですか?」

 やばい、俺の過去をよく知っている奴が入って来たのは嫌だなぁと思ったが、池田と一緒に来た学生を見ると、見たことが無い生徒ばかりだった。

「池田、沼幡の奴とは絡まないのか?」と問いかけると、

「いや、今の状況知っていても高松先輩のこと、まだ信じていない奴らばかりなので、新しい友達作った方が楽しいかなぁと思いまして」

 そりゃそうだ、中学時代の俺が起こしたトラブルは下級生でも有名なはずだ。

 それなのにもかかわらず昔と同じように付き合おうとしてくれている池田に俺は心の中で感謝した。

「あぁ、ごめん。俺、今帰宅部なんだ。中学時代の反省も含めて、勉強して大学に行こうと思っているんだ」

「なんだ、部活入っていればそこに俺もお世話になろうと思ってたのに!」

「悪いなぁ。でも各部に俺の知り合いは多いから、入ってもひどい仕打ち受けなくてすむと思うぞ(笑)」

「なんだかんだ言って、また高松さん、人の心の中に入っていくの得意だし、いろいろコネクションを作って動いていそうだし、また、生徒会の時みたいに一人でがんばっているんじゃないんですか?(笑)」

「今は違うんだ。全て自分一人で回さず他人と共同してがんばっているだ。俺も成長したんだぞ!」

「ということは、また、高松さん、生徒会やってるんですか?」

簡単にばれてしまう。

「いや、生徒会というかそのヘルプってやつかな? 雑用担当だ」

「もしかして、この座席しまうのも高松さんの係ですか(笑)?」

「正解!」

「よし、手伝いますんで、学校紹介してくださいよ。お前らどうする?」

「俺たちも手伝います。学校のこと教えてください!」

「助かる! じゃあ始めるか! 夏村さん! 新入生も座席しまうの手伝ってくれるみたいなので指示ください!」

「じゃあ、かずやたちは右の方を頼む。私たちは左から攻める」

「了解です!」

 そのやり取りを見ながら、池田と同級生たちは夏村さんに目が釘付けとなった。

「高松さん、あのきれいなカッコいい人、誰ですか? 高松さんの知り合いですか? 『かずや』って名前フル読みでしたよね、「くん」付無しで」

「あの人か? 俺と同じクラスで生徒会の実務のリーダー、夏村沙羅さんだ。文武両道の才女だよ」

「でも、高松さんと親しい感じですよね」

「まあ、彼女とはいろいろあったんで、気安く呼べる仲になれたのかなと思うよ」

 と俺の言うのもうわの空で池田と仲間たちは夏村さんを見ていた。

「席の片づけが終わったら紹介してやるよ」

 というとみんなラッキーと叫んでいた。

 俺の彼女なんだけどね。

 ただ、ここで俺は夏村さんとの仲を言うのは避けた。

 あえて俺と生徒会との関係性について知られたくなかったからだ。

 俺は池田が数人の友人と近づいてくれた時点で、まずは池田を含めての七人と俺との間にしっかりした関係を築き、彼らから一年六組の情報を入手できるようにしたかったのだ。

 そのためにも生徒会と言う看板は邪魔だ。

 まずはこれを取っ払って、こいつらに食い込んでみようと思った。

 イジメは勝手に起こるものではなく、クラスや友人関係の中での順位制がある程度構築される中で時間をかけて発生するものだと思っていたからだ。


「ところで一年六組って担任誰だっけ?」

「倉持先生ですね。国語と書道担当らしいです」

 二年の国語と書道担当は春山先生であったが、全く知らない先生が登場してきた。

 この先生にもアタリをつけておくべきかと思い、後々、俺は彼らと渋谷先生から倉持先生について情報を集めていった。


 まずは時間をかけて、相手の懐に入っていく。

 俺はその方法しか知らない。

 だから俺はまず、関係構築をしていくことを目標とした。


 ※※※※※※※※


 一方、夏村さんは、吉川の出身校、大宮桜花中学のOGである笹川春陽(はるひ)から今年入学した全生徒の情報を入手していた。

 入学してきた七名のうち吉川と縁があったメンバーは三名だった。

 残りの三名は吉川と距離を置いていたメンバーだった。

 桜花というところは大宮駅の西口駅前周辺が学区で国道一七号を挟んで大宮駅側に吉川とそのメンバー三名は住んでおり、残りのメンバーは一七号を挟んで駅とは反対側の地域に住んでいた。

 反対側は昔からの住宅街で長年その場所に住んでいる人が多い地域だ。

 一方、駅側はそごう、丸井、アルシェといった商業ビルに挟まれた再開発で入って来た人や自分の土地を売って、そこにできたマンションに住んでいるような金銭的にも豊かな人が多い地域だ。

 そのような地域的な背景もグループ構造に影響を及ぼしているのだろう。

 情報を得た後の夏村さんの行動は早かった。

 笹川さんに、こういった。

「吉川から仲間三人をハガせ。そして吉川を孤立させろ」

 そうすれば、まとまって一人を攻撃するイジメは起きない・できないと考えたのだ。

 しかし、夏村さんはイジメをする人間とその心理を甘く考えすぎていたのだった。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2022/10/11 校正、一部改稿

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