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4-11話 輝くために……

【読者さまのコメント】

模擬試験に期末テスト。

夏村さんは順調に成績を伸ばし、高松もまたランキングを上にした。

特に、期末テスト。

高松は返り咲いたぞ!!!

そのかっこよさからか、井上さんと多江ちゃんが少々暴走(笑)

二年生になったらどうなるのかな?

 三学期と言えば、学校のイベントとしては期末試験だけで、うちの高校は今年卒業生はいないため、卒業式も無い。

 入学試験は先生方のイベントではあるが、俺たちには受験会場として学校が使われるため、試験日はお休みとなるだけで、イベント感はない。

 その日はどこへ行っても、公立の高校生がウロウロしているので出歩きたくなかった。


 俺と夏村さんの目標は二月二十五日に開催されるうちの進学塾系列の全国模試と三月の期末試験であった。

 二月二十五日に実施された全国模試は、今回も夏村さんはオープンで参加した。

 八月の全国模試と同様に、うちの進学塾の生徒は必須で、夏村さんのように外部の受験者も受け入れている。

 そういえば最初に夏村さんと一緒に全国模試を受けたのは、その時であったことを思い出した。

 あの時が勉強仲間への自宅モードの夏村さんのお披露目だったなぁと思った。

 今では当然のごとく会場に彼女と一緒に来るのが普通になったが、最初はさすがに緊張した。

 とても目を引く、外観のとてもきれいな女子高生と一緒の参加だったからだ。

 翌日、進学塾で見知らぬ奴からも、いっしょにいた子は誰だと質問されたのにはびっくりした。

 実は学校ではヤンキー姿であるとは知らずに……


 でも、あの時の模試が終了した時の彼女の第一声は『〇点はないと思った』だったのに対し、今では試験を終わった後、出来なかった問題をどう解いたらいいのかという質問に変わっていた。

 既に彼女はどの問題の解答には自信があり、どの問題のどこが判らなかったのか判別がつくようになっていたのだ。

 その進歩が俺には嬉しかった。


 進学塾の授業の後、そして全国模試の後には勉強仲間といつものバーガークイーンで反省会をしていたが、現在では夏村さんもいつの間にかメンバーに加わっていた。

 勉強仲間も気兼ねなく夏村さんと話している。

 夏休み前では考えられないことであった。

 夏休み以前は、夏村さんとそのメンバーを窓越しに見てはテーブルに隠れるのが日常だったとは今では想像がつかないくらいに変化した。

 勉強仲間も夏村さんもお互いを認め合っているのであろう。

 良いことだと思いながら、みんなの会話を眺めていると、急に夏村さんと目が合った時、ウインクをしてきた。

 それを見た俺が赤面するのを楽しんでいるようだった。

 俺は頭を掻きながら、恥ずかしさを隠すため、半ば強引に仲間の会話に割り込んでいくのであった。


 ◇◇ 三月九日 ◇◇


 二月二十五日に実施された全国模試の結果が郵送されてきた。

 例のごとく、俺は一旦家に戻り、結果を夏村さんの家に持参し、結果を見せ合い、反省会をするという流れだ。


 まず、夏村さんの結果を見ると全科目、八月に比べ偏差値が十近く上昇していた。

 驚いたことに、八月の試験では第一・二志望の合格率は十パーセント以下であったが、今回の結果では具体的なパーセントが記載されており、志望者の順位も前回は両方とも最下位であったが、今回は下に何人もの志望者の数が記載されていた。

 第三志望などは合格率五十パーセントにまで達していた。

 このことは正直びっくりしたが、夏村さんは俺と結構な時間を共有することで俺が直接教えなかった情報も感じとって勉強していたのかもしれない。

 その辺、頭の回転が良いと呼ばれる人たちに共通した能力なのかもしれない。

 成績に俺の方がうれしくなってしまい、思わず声を裏返しながら夏村さんにこう言った。

「夏村さん、がんばったね! このまま着実に勉強していけば、第一志望、合格率五十パーセントまで早い時期にいけるかもしれないね」

 すると、夏村さんは表情を強張らしてこう言った。

「だめだ! 絶対に合格してやる! そうすれば、従妹と一緒に並べる。絶対にやってやる!」

 そういうことかと俺は思った。

 お祖父さん主催の新年会で従妹がほとんど慶応系列の学校に行っていたことから、彼女も追いつきたいのだろう。

 ということは、俺は夏村さんを慶応大学に入学させることが第一目標となってくる。

 仮の志望校決定の際は、冗談で志望校を決めていたのかと当時は思っていたが、実際は自分の思いの入った志望校選択だったのであろう。

 しょうがない。

 それを知ってしまった以上、俺は協力せざるを得ない。俺は頭を掻きながら、

「夏村さん、確実に一歩一歩ゴールに向けて頑張ろう!」

 というと、夏村さんは、

「かずやの言うとおりにするから俺を最強にしてくれ」

 と言った。そうだったね。夏村さんは最強にならなくてはいけなかったんだね。


 ところで、俺はと言うと、進学塾で総合順位二十五位まで上がっていた。八月が三十八位であったことを考えると、上々だと思った。俺の上にはまだ有名進学校の奴らがいるのだから。


 俺には二学期の期末のテストの結果発表の際、多江ちゃんに負けたことが分かった時の俺のしょうがないやという態度を見て、夏村さんから三年一組の教室で喝を入れられたことを、度あるごとに思い出していた。

 そして、俺が迷った時、気を抜いている時、夏村さんが言った『俺にとってまぶしい人にもどってくれよ!』という言葉とその時の表情が俺の頭の中をリフレーンしていた。


 ふと、第三志望の順位を見ると今回は志望者中一位になっていた。

 このことは多江ちゃんも同じ大学の学部志望であるため、私立理系三教科では俺が勝ったことを意味していた。


 夏村さんから(さと)された後から、俺は以前から考えていた、自分のやりたいことができればどんな大学でもいいという考えを止めた。

 出来るところまで昇ってやる! しかも、夏村さんをバックアップしながらだ。


 そんなことを考えながら、成績表を見つめていると、夏村さんがそっと俺の耳元で、

「かずや、いい目してるな! 好きだぞ!」

 と言ったことで、我に返った。

 そして、頭を振り現実に戻ろうとしたところで、夏村さんは軽く俺の頬にキスをした。

「ここまでにしてくれたお礼だ! とっておけ!」



 ◇◇ 三月十二日 ◇◇


 今日から期末試験が始まる。

 一週間前から生徒会室には来ないでいいから勉強しろと上郷地(かみごうち)先輩に言われた。

 また上郷地先輩は二年では学年一位なんだろうなと思った。入学以来一位を譲らないというはすごいと思った。

 そうなると、夏村さんの家に行っての勉強会と予定は決まってしまう。

 あまりにもしょっちゅう行くもんだから、母などは、

「沙羅ちゃんの家で合宿でもしなよ。どうせ、ご飯は沙羅ちゃんが作ってくれるんでしょ!」

って、息子を取られた親のやっかみのように言っていた。

 そうは言いながら、うちの家族はみんな俺のことも夏村さんのことも応援してくれていた。

 俺の目標は、五科目一位、通知表学年一位だ。

 夏村さんとの約束を守るために……



 ◇◇ 三月二十二日 ◇◇


 今日は期末試験の結果発表の日。

 例のごとく、職員室前にはベストテンが誰なのかを一目見ようと多くの人が集まっていた。

 先に二年からの発表であるため、前方は二年ばかりであったが、俺も夏村さんも一番前に陣をひき、貼りだしを待っていた。


 まずは高校二年。

 一位……恒例の上郷地先輩。

 その後もいろいろと中間層との付き合いを深めていくうちに知り合った二年の名前も順位の中に点在していた。

 ほう、あの人はこんなに成績いいんだと感心したり……


 続いて高校一年の発表だ。

 成績を見終わった二年と入れ替えに勉強仲間も前に並んできた。

 隣に来た多江ちゃんが俺にこそっと言った。

「今度も勝ったよ!」

「楽しみだね」

 と俺は返答した。しかし、結果はこの時点で俺自身わかっていた。


 渋谷先生が掲示板に順位を書いた巻紙のような紙の端をピンで止め、くるくると貼りだしていく。

 一位 高松 和也 

 二位 小倉 多江

 すみません。答案用紙を返してもらった時点で俺は勝ちを確信していたのだった。

 さて、三位以下は……

 三位 坂本 功

 四位 夏村 沙羅

 五位 雨宮 さくら

 六位 佐々木 大輔

 七位 鵜坂 博之

 八位 井上 琴絵

 九位 牧野 宏

 十位 相崎 信也……


 『四位 夏村 沙羅』?!

 なんと『大鳳の五強』と俺が勝手に呼んでいた、俺、多江ちゃん、坂本、さくらちゃん、佐々木の中に夏村さんが入って来たのだ!

 横山たちが後ろの列から前に出て来て夏村さんに声を掛けた。

「なつさん! 四位っすよ! すげぇ~! やっぱ、なつさん、すげ~っす!」

すると当たり前のような顔をして夏村さんは返答した。

「当たり前だろ、俺の彼氏はかずやだぞ! いっしょに勉強してれば、そりゃいい成績になるのは当たり前だろう! やっぱ、俺って見る目あるだろう! かずやに付いて行けば俺は無敵だ!」

「承知!」

 まだこいつらヤンキー時代の返答が抜けてないと見える。


 すると背後から俺に抱きついてきた奴がいた。

 なんか背中に柔らかいものが……

 すると、夏村さんはそいつを睨みつけた。

「か~ずくん! 私も八位になったよ~! 少し、かずくんチャージさせてもらうよ!」

 といい、俺の背中をクンクンと嗅ぎ始めた。

 そう、背中の奴は井上さんだった。

「お前、馴れ馴れしく俺の彼氏のフェロモンを吸収するな!」

「夏村さんは家に帰れば、かずくん、独り占めなんだから、学校ではいいじゃない? さみしい学校だけの内縁の妻……」

 などとじゃれ合っていると、付近の生徒たちは茶番劇を無視して、自分の教室に戻っていく。

 勉強仲間も戻って行こうとしたので俺も井上さんを背負ったまま立ち上がろうとした。

 すると誰か俺のむこうずねを思いっきり蹴っていく奴がいて、俺は井上さんをおぶったまま崩れそうになった。


 蹴って行ったのは、多江ちゃんだった。

 多江ちゃんはこちらを見てアカンベェをして、すぐ勉強仲間の中に入っていた。

 そのようなことをする子だとは思ってもいなかったため、俺はびっくりした。

 俺は背中にいた寄生虫を剥がし取り、夏村さんと教室に向かった。

 内縁の妻は本妻には勝てないのだ。


「小倉さん、見たか?」

と、俺に声を掛けてきた夏村さん。

「うん、あんなことする子だとは思ってもいなかったよ」

「俺もだ。やはり、バレンタインで彼女の中で何かが変わったのかもしれないな」

「全国模試、期末試験と勝ったから、何かアクションしてくるかもね。変な行動取らなきゃいいんだが……」



 ◇◇ 三月二十三日 ◇◇


 終業式。

 今年は生活指導の渋谷先生に変わって、生徒会長の上郷地先輩が休み期間の注意点を話していた。

 この一年、随分と学校は変わった。

 ヤンキーはいなくなり、学校の評判も良くなり、今年の受験でのうちの高校の競争率は俺が入った時は1.03倍だったのに、何の噂を聞いたのか2.78倍にまで上がったらしい。

 対外的には、部活動が盛んで、進学にも熱心で補習(はじめは元ヤンキー向けだったが、希望生徒全員が受けられるようになった)も噂になったようだ。

 新学期が始まれば新入生が入り、雰囲気はリセットされてしまうのだろうか。

 そうなったら、また俺の仕事も増えますねと思った。


 通知表をもらう。

 三学期は各教科五点法になっており、一年間の成績で評価される。

 俺の成績は学年一位を最終的に維持できた。

 というか、書道以外はすべて評価五を取ったのだから完勝である。

 満足のいく一年だったなぁと思った。

 通知表を鞄に入れ、勉強仲間に挨拶し、生徒会室に行くといつものメンバーがいつものところに座っていた。


 ーーーーーーーー

 

「お疲れ様でした。また来年度も宜しくお願いします」

 と挨拶をし、俺は夏村さんと下駄箱に向かった。

 俺の横を歩きながら夏村さんはこう言った。

「かずや、ありがとうな!」

「何? どうしたの?」

「俺みたいな、しょうもない奴を見捨てないで頑張ってくれて」

「いや、いいよ。もし、夏村さんが俺に声かけてくれなかったら、俺は今も彼女無しで違った学園生活だったと思うし」

「小倉か井上と付き合ってたかもな!」

「(ないない!)」

 夏村さんは二、三歩前に行き、振り返ると満面の笑みでこう言った。

「でも、これがお前との一年間の成果だ!」

 と言って夏村さんは鞄から何かを取り出した。それは……


 通知表……

 そして、夏村さんは通知表を開き、ある個所を指さした。

 そこには『学級一位、学年三位』と書いてあった。

 そう、夏村さんは主要五教科以外はいつも全て満点なのである。

 テスト成績発表からの大逆転だった。


「やっぱ、かずやは今みたいに私にとって輝き続けて欲しいよ。なんてったって俺の彼氏だもんな! 最強の女には最高の彼氏が必要だ!」

 夏村さんにとって、俺、今輝いて見えるんだね……

 必要とされているんだね……

 これからも夏村さんにとって輝いて見えるよう、がんばっていこうと心に誓った。


「さぁ、今日はどっちの家行く?」

 と俺は尋ねると、間髪入れずに夏村さんは、こう言った。

「当たり前だ、かずやの家に行ってご両親に褒めてもらわないとな!」

「喜ぶと思うよ! じゃあ、俺んち決定!」

 といい、自転車にまたがると仲良く二列に並んで駐輪場から校門に向かった。


 早咲きの桜も咲き始め、夕方の空気の色もピンクに変わりつつある通学路。

 その空気に春を迎える温かさも加わり、人を笑顔にさせてくれる。


 ーーーーーーーー


 教室棟の一階の廊下の窓越しに俺たち二人を眺める二つの影……


「この学校も随分と変わったもんだな。二人には感謝してもしきれないものがある、そうおもわないか? 中島教頭先生」

「そうですね。あの二人が大鳳の歴史を今後も作り変えてくれていると思いますよ。ところで佐藤校長、あの二人を二年で同じクラスにするのはどうでしょう? 新一年も厄介なメンバーがいるという話を聞いていますし、彼らにまた働いてもらうというのはいかがでしょう?」

「何かあったら問題児は退学にすればいいが、それでは学校の評価に傷がつく。夏休みの事件や学園祭の騒動も収拾を付けるのに苦慮した。でも二人はなんとかここまでの学校にしてくれました。これからも二人にはがんばってもらうとするか…… その辺は渋谷先生からのお墨付きも有るからなあ……」

「では彼らにまたがんばってもらうことにしよう……」

と言うと二人は職員室の方向に戻っていった。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2022/10/08 校正、一部改稿

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