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0-4話 お姉さまは有無も言わせぬ

 窓の外からは昼休みを楽しむ学生たちの声が響いていたが、ここは地獄の一丁目。

 完全に別世界に隔離されたようだった。

 この教室だけ、違う学校と思えるような雰囲気であった。


「普通に嫌なんですけど」

「あー?! 俺に歯向かうのか?」

 いきなり俺の胸倉をつかむ彼女。

 結構、手加減なしでつかんできたため、ここはこちらが下手(したて)に出ないとのちのち面倒になると考えた。


 ブレインストーミングしてみる。

 仮に教えることを受け入れたとしても、彼女はちゃんと俺の言うとおりに勉強してくれるのであろうか?

 YES⇒次は成績を上げる方法を考えよう。

 NO⇒これでは目的達成はできないため、その対策を考えよう。

 次に教えることに失敗して成績が上がらなかったら、どうなるのであろうか?

 YES⇒成績が上がれば、その方法を継続する。

 NO⇒成績が下がった場合、俺の命が危なくなる可能性がある。

 その時は悪の世界に引きずり込れるのではないか?

 などと考えるだけでもゾッとした。

 いやいや、ここは否定的に考えず、ヤンキー姉さんを丸め込んで再度、彼女に合う勉強方法を考えてみよう。


 こういう時は『行動する前に、今何をすべきか考えて行動する』……。

 中学時代の反省から心がけている言葉だ。

 今一度、自分の置かれている立場と可能な対応を整理した。


 一:現状から逃げられるためには教えることを了承するしかないこと。

 二:了承したからには彼女の満足のいくレベルまでは成績を上げなく

   てはいけないこと。

 三:その途中で何か発生したら対応策はその時点で考えればいいこと

 ……。

 出した結果は……まずは彼女の要求を受け入れることだった。

 でもやる以上は自分の保身と彼女の成績を確実に上げることを目標に掲げようと思った。


「わ・か・り・ま・し・た・が……」


 言っちゃったよ……。

「おぉ、やってくれるのか、よーし」

「ちょっと待ってくださいよ。こちらも教える立場なので、条件が必要だと思うんです」

「なんだ、言ってみろ」


「一番目。問題を解いていてわからない時はキレずに、正直に『どこがどうわからない』と言ってください」

 最初の目標、自分の保身である。

 これは、我ながら良い条件を付けたと思った。

 やはりわからないことを理由にキレるという、一大事には至らないよう防御線を張っておかないと思った。

 また、自分のわからない点を知ることが、勉強の第一歩だ。

 このことを自分で考えるという作業は彼女の成績向上に必ずつながると思った。


「二番目。教える日時は事前に決めましょう。突然呼び出されてもこちらの都合もありますので」

 確かに、突然呼び出されても行けなかったことを考えると怖い。

 学習塾の時なんかは絶対に行けないし、迎えに行ってやるといって単車でバーガークイーンとかに来られても困る。

 俺、グッジョブ!


「最後に俺とは対等に接してください」

 やはり、これは自分の保身の最終予防線だと思っていた。

 また、対等に接しないで勉強など教えることはできない。

 教える方が上でも、その逆でもうまくいかないと思った。

 その上、この条件をつけることで、他のヤンキーからの防御線を張れるのではとも思った。

 その他の条件も考えてみたが、あまり数を増やすと、怒り出しそうだし、忘れてしまっても困るので、この三つの条件をまずは提示し、別の問題が生じたときは、改めてその場で条件を付けてしまおうと考えた。


 しかし、次の瞬間、彼女がここで次のような爆弾を仕掛けてくるとは思わなかった。

「条件はオッケーだ。俺も約束は守る。ただし、一個だけ俺も条件をつけるが、いいか?」

「何ですか。怖いんですけど……」

「おまえも立場上、俺と対等に接する必要があるんだろう?」

「はい、その方が教えやすいというのはあります」

「よしわかった。だったら、俺と付き合え!」

 完全に意識が吹っ飛んだ。

「えっ?! 何ですって?」

「だから、俺と付き合え!」


 俺の十数年間の人生の中で全く縁遠い言葉を聞き、あぜんとした。

 な、なにを言い出すんだ……。

 俺の頭は完全にパニックになる。


 付き合う?

 誰と?

 ヤンキー姉さんと?

 誰が?

 俺が?

 目的って勉強を教えることじゃなかったっけ?

 勉強を教える上に付き合うってこと?


 俺の頭の中は、昔SF番組に登場したコンピューターの様にカタカタと変な音を立てながら、別次元を漂っているようだった。

 俺が彼女と付き合う……。

 このヤンキー姉さんが俺の彼女……。

 とんでもない悪寒が俺を襲った。


 当然の沈黙……。


 しかし、ここでこの条件を断ってしまうと俺の想定はすべてくつがえさせられる。

 意図しない条件追加に伴う混乱よりも、個人的には『付き合え』という言葉の威力の方が俺の心を混乱させた。


 俺はちょっと顔を上げ、彼女の顔を初めてじっと見た。

 やはり、にらんでる……。

 お姉さまは有無も言わせないのだ。


 彼女との交際の決断に伴う不安よりも、俺の彼女がヤンキーだということで俺の高校生活がどうなってしまうのかという不安が大きかった。

当作品をここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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編集記録

2022/08/15 校正・一部改稿

2023/04/19 改稿

2023/04/20 改稿

2023/04/21 校正

2023/04/26 校正

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